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鑑定眼の社畜、今日もブラック魔王軍でなんとかがんばります!  作者: 鳶丸


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第010話 社畜、眠っている間にヴェラと魔王様が……


 なんだかハルトの様子がおかしい。

 ヴェラはそう感じていた。

 

 やけに張り切っている。

 ハルトの性格的にちょっと無理をしていると感じるくらいに。

 

 ヴェラは少し心配だったのだ。

 その心配がみごとに的中してしまった。

 

 ギーガ親方の相談事を解決する方法を見つけたのはいい。

 だが、ハルトが情緒不安定になったのだ。

 

 急にペコペコと頭を下げだしたかと思えば、怒り出す。

 ヴェラにはちょっと尋常ではない様子に見えた。

 

 だから――ハルトを気絶させたのだ。

 

 ハルトを自室という名の牢屋に放りこむ。

 そして、ヴェラは魔王の元へとむかった。

 

 今日の魔王は謁見の間ではなく、執務室にいるらしい。

 執務室の扉を叩き、ヴェラは魔王と面会した。

 

「ハルトの姿が見えぬが、どうした?」


 机に座って、書類仕事をしていたようだ。

 伊達に魔王をしていないということだろう。

 

「まさか、もう鍛冶場の問題を解決したのか?」


 言いながら、魔王はヴェラに座るように勧める。

 

「まぁ半分程度は解決しましたわね」


「ほおん……さすがに古き神が遣わしただけのことはあるな」


「そのくらいは当然でしょう。ですが……」


 魔王は顎をしゃくってヴェラに話すよう促す。


「少しハルトの様子がおかしいのですわ。急にペコペコしたかと思えば、怒りだしますし。鑑定先生などと言うのです」


「少し無理をさせたか。いくら魔樹のタマゴから生まれたとは言ってもハルトはニンゲンだろうからな」


「……かもしれませんわね。わたくしも反省しておりますの。古き神から告げられたことを達成するために、ハルトを酷使していたのかもしれませんわ」


「で、ハルトはどうしておるのだ?」


「わたくしが眠らせました。今は自室に」


「ふむ。まずはそこからだな。魔王の権限をもってハルトに部屋を与えよう。いつまでも牢屋では気分も晴れまい。それに厨房の件では功績をあげてくれたのだからな」


「……魔王様の心遣いに感謝いたしますわ」


 ぺこりとヴェラが頭を下げる。

 うむ、とメスガキ魔王は満足そうに微笑む。

 

「二・三日ほど休ませてやっても良いのだがな。さすがに鍛冶場の問題は放置できんのだ。それが終われば、少し休んでもらおう」


「承知いたしました」


「で、先ほど鍛冶場の問題を半ば解決したと言っていたが、進捗を報告してくれんか」


 ということでヴェラは報告した。

 魔鉱石を鑑定して得た結果を。

 

 魔鉱石の仕入れに関しては、商人と話さないと詳細はわからない。

 ただ新しい魔鉱石も通常の二倍以上の火力があれば劣化なしに使える。

 

 だが、火力の出し方がわからないのだ。

 

「なら、龍王のブレスを使ってやろうか?」


 いやいやと首を横に振るヴェラだ。

 魔王のブレス攻撃なんぞを使えば大変なことになる。

 下手をすれば、魔王城が崩壊するかもしれない。


「なーんちゃって!」


「…………」


「なーんちゃって!」


「せっかく流しましたのに。そういう気遣いは不要ですわよ」


「……むぅ。つまらんのう。ハルトならいい感じでツッコんでくれるのに」


「で、なにか妙案はありますの?」


 いんや、と首を横に振る魔王だ。

 そう言えば……と話を変える。

 

風精人(エルフ)火精人(サラマンデル)が揉めたという報告があがってきておった」


 じとっとした目を向けるヴェラだ。

 だって、ハルトを休ませるという方向性で一致していたのだから。

 なぜ仕事を増やそうとするのだと思ったのである。

 

 ついでに言えば、だ。

 風精人(エルフ)火精人(サラマンデル)は仲が悪いことでも有名である。

 

 いっつもケンカしているのだ。

 だから、揉めたと言われても、だから? としかならない。

 

「かっかっか。まぁそんな顔をするでない」


 魔王はニカッと笑顔を見せた。

 

「確かに早く解決策を見つけてほしいとは思う。だが、いくら考えても答えがでないものは仕方ない。こういうときは目先を変えるのもひとつの方法だと思うのだ」


「まぁそれもいいかもしれませんわね。明日にでも足を運んでみますわ」


「うむ。任せた」


「ただ……それが解決したら少しハルトを休ませてあげてくださいまし」


「ああ。魔王として約束しよう。ハルトに休暇を与えるとな」


 そろそろお暇しようと、ヴェラが腰をあげようとしたときだ。

 コンコンとノックの音が響いた。

 

 入れと魔王が声をかける。

 顔を覗かせたのは厨房にいた、わんこ兄さんだ。

 

「魔王様、スターバの料理を作ってきやしたわん」


「おうおう! 待っておったのだ! ほれ、はよう、ここに」


 机の上にあった書類を乱暴にどける魔王だ。

 ドサドサっと書類が床に落ちる。


「ええと……ハルトが書いた紙にあった料理で、こっちがスターバのグラタンだったわん。それと……こっちがスターバのプリンですわん」


「うっひょおおお!」


「じゃあ、オレは失礼するわん。皿は後で下げにきますわん」


「ご苦労じゃったな」


 わんこ兄さんが執務室を出て行く。

 

「……魔王様。これはどういうことでしょう?」


 ヴェラだ。

 さっきより粘度を増した視線を送っている。

 

「わたくしのスターバ祭りを中止にいたしましたのに! こっそり料理だけは作らせているなんて!」


「ぬわははは! 魔王の特権というやつだ」


「下剋上しますわよ!」


「受けてたとうと言いたいところだがな。ほれ、この料理。これをしっかり味わうのが先だ」


「わたくしにもくださいな」


「まぁスターバの美味さを発見したのだ。その功績を考えれば、魔王とて無碍にはできんな」


 魔王が目を閉じてから、カッと開いた。

 

「だが、断る! この魔王。スターバの新作料理をわけてやることなどせんぞ! 絶対にだ!」


「ふざけないでくださいまし!」


 それはもう激しい戦いがあったそうである。


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