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だらだら生きるテイマーのお話  作者: めぇー
第6章
178/181

第178話 生まれた

侍女様の手を握りしめている

いや、正確に侍女様に握りしめられていて

動けないような状態だった

なんなら指の関節がおかしくないかな?ってぐらい

明後日の方向に向いてる指があった


陣痛怖い・・・


ーーーーーーーー


兄は呑気にまだ寝ている

それが少し腹立たしいので無理やり起こして手伝ってもらうことにした


護衛騎士はこのまま侍女様の為に側にいてもらうことにして

流石に頭出てきてると言うことはもう産まれると思うから

桶に沢山お湯を入れて待機する


そこからどうした良いのか解らない・・・

解らないよ!


どうしていいか解らず空を見上げてみると

まだ真っ暗だ


そうかーまだ夜なのかー

という今必要ない感想しか出てこない


現実逃避をしても何も始まらない・・・

自分の顔を両手でベシッっと叩き

気合を入れる


で?たらいにお湯入れた所で?

お湯を出すのは早かったかな?

赤ちゃん産まれたらすぐ沐浴ってことだよね?


いや?その前に侍女様がいきんでる時に


はい!いきんでー!


とか掛け声かけるべきじゃないか?

侍女様はさかんに


「ヒッヒッフー」


と言っている。ただ私は侍女様の足元に居座って見ているだけだ・・・でもその間にも子供の頭がちょこっと動くときがある。そのタイミングを見計らって侍女様にいきんで!もっといきんで!!!と声をかけるぐらいしかできなかった。


何時間ぐらいそんなことをしていたんだろう、気づけば空が明るくなっている。そろそろ生まれないと侍女様への負担はもちろんだけど、赤ちゃんへの負担も大変なことになってるんじゃないかと不安に思い始めた頃。


「「ローラ!!!!!!!!!」」


突然懐かしい声に同時に呼ばれる。お父さんとお母さんだ・・・本来なら感動の再会、きっと涙するだろうとほんの少し想像していたけど。


あまりのなつかしさと安堵からか、私は突然号泣しながら


「赤ちゃんうまれる」


と一言発するのがやっとだった。状況を察した母の顔つきが険しくなり


「どのぐらいこの状態なの?」


と聞かれて


「わからない、気づいた時には外が暗くて気づけば明るくなってた」


と、とても情けないことしか言えなかった。

それを聞いた母は先ほどより更に険しい表情になり、すぐさま侍女様の元に向かって行った。頼もしいその後姿を見ながら私は何をしたらいいのかおろおろしていると。


「冷めたこの水にタオルを!手を掴まれてる人に冷たいタオルを渡してあげて!そこの手を掴まれてる人は汗などを拭いてあげて!熱い所はタオルで冷やしてあげて!」


そして侍女様に


「大丈夫よ、もうすぐ生まれるからね、がんばろうね!」


と声をかけている。母すごい!!!


「暖かいお湯も用意して!」


と更に指示されて慌ててお湯を入れた収納巾着を出すと、それを見た母が何とも言えない顔をして


「ちゃんと桶にお願いね」


と残念な子を見るような顔をして言われて少し我に返る。横からすっと桶が差し出される。差し出してくれた人物を確認するとそこには父が居た。父はとりとめなく目から涙をしながら私の顔を見ている。


そうだよね、再開もそこそこで死んだはずの娘が今目の前で動いてるんだもんね、泣いてもおかしくない状況だよね。そんな父の背中を兄がうんうんとうなずきながらさすっている。兄も同じ経験をしたからわかるのだろう。


「はい!いきんでーーー!!いきんでいきんでー!上手だよー!」


という声が聞こえてきてハッっと我に返る。今は過去のことを回想している時間ではなかった!侍女様に集中しないと!


私はなすすべなく母と侍女様のやり取りを見守りつつ、暖かい布で冷えてそうな場所をさすってみたり、熱い場所には冷えたタオルでそっとぬぐって見たり、汗を拭きとることしかできなかった。


その間父と兄はいつでも手助けできる距離に居てくれて、護衛騎士はずーっと侍女様の手を握っていた。いや侍女様に握りしめられていた・・・時々メキッって音がしたのは聞かなかったことにする。


どの位の時間が経ったのか、永遠とも感じる時間でまだかまだかと待ってる居ると


おぎゃおぎゃおぎゃあーーーーーーーーー


と突如元気な赤ちゃんの泣き声が周りに響き渡った。良かった無事産まれたと安堵していると母が突然侍女様の顔を殴り始める。


ちょっとお母さん?何やってるの?


「目を開けなさい!赤ちゃん産まれたわよ!」


と叫んでいる。何事かと不安になって見ていると、まさかの侍女様意識を手放しているようだ。えっ?最悪の事態が頭をよぎる。母が何度か顔を叩くと、うっすらと目を開ける侍女様でも意識はもうろうとしているようだ。もしかして非常に危険な状態なのでは?


出産は命がけと言うけど、女神さまの加護のある地でもこのような目にあうとは・・・侍女様を失うかもしれないと言う恐怖を感じていると、母が赤ちゃんを抱っこして立ち尽くしていた兄から赤ちゃんをひったくり


あ、兄さん赤ちゃんいつの間に抱っこしていたんだろう?


そして赤ちゃんを侍女様に持たせると、みるみるうちに侍女様の目が見開き、侍女様の目から大粒の涙が出てきている。笑顔と涙でぐしゃぐしゃの侍女様を見てこの世にこんな美しい人は居るのだろうかと一瞬見惚れてしまった。


その横で護衛騎士の手が変な方向を向いてる気がしたけど見なかったことにし、護衛騎士も一緒になって泣いている。この人達泣くんだなという感想が口から出そうになったけど何とか押し込める。


兄は赤ちゃんを抱っこしたままのポーズで服がいろいろと悲惨なことになってるけど、放置だ。


兄の横で父は私の事を見ながら泣いている。


母はやり切った顔をしていて、侍女様の次に美しいなと思って思わず見惚れてしまった。母って強いんだなって。


侍女様は可愛いといいながら赤ちゃんにずーっとキスをしている。でもそろそろ赤ちゃんを洗った方が良いんじゃないかなってぐらい、結構赤ちゃんがどろどろでどうしようと思っていたら。


母がすっと赤ちゃんを抱っこし


「お母さんはしばらく休んでて、その間に赤ちゃん綺麗にしたりするからね、ローラお湯を用意して」


という一言で全員が動き始めた。


侍女様は安堵したのか、そのまま護衛騎士に身体を拭いてもらった後にそのまま寝てしまった。


寝てしまった侍女様を見届けた後、護衛騎士は変な方向に向かってる指や手を何をしているのか解らないけどゴキゴキ言いながら直している・・・痛そうだな。なかなかやれることでは無い、良い夫そして父親になるだろうなとそんな予感がした。にしても侍女様の握力すごいんだな・・・怒らせない様にしよう。


兄は母を手伝って赤ちゃんの身体を綺麗にしている。


父はたまらずといった感じでようやく私に話しかけてきた。


「本当にローラか?」


「うん連絡できなくてごめんね」


「生きてたらいいんだ、後で何があったのか教えてくれるか?」


「うんもちろん!私もお父さんい会いたかった」


と言ったら父親にとても優しく大事なものを包み込むかのように抱きしめられた。ここに来るまで辛いと思ったことは無かったけど、思わず目から涙が出てきた。


私は一生懸命頑張ってきたんだよなって

父親の大きな腕に囲まれて安心してしまったのだろう

誰よりも信用できる存在がいるってこんなにも安心できることなんだって実感した


そしてその上から手が回されてきた

見てみると母が私と父を上から抱きしめいる


母も私の顔を見て泣いている


何も言わず3人で抱きしめ合いながら泣いた


その横で兄はふにゃふにゃの赤ちゃんを抱っこしながら羨ましそうにこちらを見ていた

本日もお読みいただきありがとうございます


面白いな、続きが気になって思った方は

イイネ ☆☆☆☆☆ ブックマークいただけるとうれしいです

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