第132話 魔クマと進むよ
あれからみんなの身体が完全に動くようになったのは5日ほどかかった。日々上の方から体が動くようになっていった感じだ。
トイレの方はみんな意地で自力で行ったようだ。たいてい私が居ないときに。みんなでかわるがわる行ってたみたいだけど、動かないのにどうしていたのかが気になる。はいずって行ってたのだろうか?
みんなが動けるようになり、移動するより肩慣らしに森に行こうということになった。そしてみんなで収納靴下に入っている魔リスをどうするかという話になった。
私はテイムしたいとい。3人は絶対やると言っている。気持ちはわからなくはないけど、テイムしたら絶対面白いと思うんだよね!それにこれだけ強かったら味方になったらとても心強いと思うということを伝えでも、3人の意見は絶対ダメ!の一点張りだった・・・
もし人間の時にようにテイム解除されたらどうなるんだ?と言われると、私も強くは言えなくなるな・・・
それに収納巾着から出した瞬間どうなるかわからないということで、そのまま入れっぱなしでいいんじゃないかと言い始める。
ひどい!人間を入れっぱなしと動物を入れっぱなしは全然違う!人でなし!というと、みんなが困った顔をしている。
話が平行線なのでとりあえず魔リスのことはいったん横に置いて、3人がどれだけ動けるかの確認をすることに。
私は両親を守るように頼んでいた魔猛禽がどうしているのか確認をしてみる。
うん、突然いなくなったらさすがに魔猛禽でも迷子になっていて、全然追えてないようだ。6羽ともめいめい好きな場所で森の中にいるようだ。それなら残念だけどテイムを解除しておくことに。
そしてファルコペッレグリーノにお願いして、この場に襲ってこない動きの素早い魔物を追い込んでもらうように頼む。私は見ているだけ。
3人とも違和感なく動けてるようでみんながうなずきあいながら納得しつつ狩りをしている。
3時間ぐらいたったかな?今日はもう帰ろうよと提案する。3時間もぼーっと待つって暇なんだよ、飽きた。
兄さんがそうなだ帰ろうと言って、一緒に帰ってくれる。護衛騎士と侍女様はもうちょっと残ると言う。ファルコペッレグリーノにはそのまま獲物を追い込んでくれるように頼んで私と兄は岐路に。
あんな強い魔リスが2匹や100匹居るとは思えないけど、一応念のために。魔猛禽に気お付けるように言っておく。
町について兄さんが美味しいものをおごってくれるというので、ほっとチョコレートと一番高いフルーツをおねだりした。夕飯を食べて宿でくつろいでいると、侍女様と護衛騎士が帰ってきた。
この様子なら明日から移動してもいいだろうということになり、王都を目指して移動することにした。
街の門を出たあたりから、侍女様がソワソワしている。魔クマに乗りたいのだろう。手にはなんだかサドルのようなものが。いつの間に?
魔クマを出すか?聞くと、嬉しそうにお願いしますというから、そんなかわいい顔を見てしまったら出さないわけにはいかない。魔クマを出すとガァ!と一言吠えたけど、そのあとは何事もなかったかのように座っている。収納靴下の中で意識はなかったのだろうか?
テイムが解除されてないかを確認して、侍女様にOKを出す。嬉しそうにサドルとつけている。本当にいつ用意したの?
侍女様がひらりと魔クマにのり、のそりのそりと歩き始める。侍女様の笑顔ときたら・・・・・しばらくしたら護衛騎士も侍女様の後ろにひらりと飛び乗り、二人で楽しそうに魔クマで進んでいく。
護衛騎士の馬は少しおびえながら後からついてきている。馬が少し気の毒になる。
ハトは最近見てない、部屋にも来なかったので自由にやってるみたい。
ラロも見てない。
そして侍女様がローラも一緒に!と言って、侍女様の前を指さすので思わず乗ってしまった。少し香る・・・魔クマ臭が・・・これは乗り物酔いしそうな匂いだ。
そしていきなり全力で魔クマを走らせる侍女様。早いって!!!!!!顔に風の圧が半端な言って!怖いって!
途中街道からちょっとした悲鳴が聞こえたりしたけど、これは悪目立ちすぎませんか!?
魔クマの動きがゆっくりになってきたので、目を開けてみると、結構進んだのかもさっぱりわからないけど、たぶん人が一日で進める距離よりはるかに早くたどり着いた辺りという感じだろうか?
街道には誰もいない。兄もいない・・・次の町で待ってれば大丈夫だろう。
侍女様が兄を待つためにもお昼をとりましょうと提案してきたので、ゆっくりランチすることにした。
こんな天気の良い日にはビーチチェアほしいなぁ・・・作るか。今までの失敗を生かして、さっそく侍女様にビーチチェアの提案をする。
こんな感じでこんな風に横になれて、太陽を浴びれて気持ちがいいと。身体を張って身振り手振りでプレゼンする。
そもそもなんで太陽を浴びたいんだ?と言われた・・・確かに・・・この国の人は働き者だから、わざわざ太陽を浴びるようなことをしなくても、太陽を浴びている。
だから太陽を浴びてのんびりしようという考えがない。うん、この考えは前世の考えだな。そのことも伝えて、前世では海に行くと、こんな水着を着て、ビーチチェアやパラソルっていうものがあって、バケーションを楽しんでいたんだよ!と伝える。
そもそもなぜわざわざバケーションを?ということも聞かれた。確かに・・・この国の人はとても働き者だから、まとめて休みを取るのは結婚した時ぐらいで常に働いている・・・
だからね前世ではねとまた一から説明していく、ブラック企業と言う物があったり、私が住んでいた国は闇もなく馬車馬のように働くばかりだったとか、余暇を楽しむ余裕があまりなく・・・
と説明しているうちに、この世界自体が大きなブラック企業では・・・でも暗くなったら働かないしな?と思って、前世では暗くなってからでも明るくして無理やり働いていた、この世界の2倍か3倍は常に毎日働いてる人ばかりで、それなのに休みがないのは不公平ではないか?だからこそまとまった休みが必要だったと力説した。
ようやく、なるほど?という感じで無理やり納得させてビーチチェアを作る許可を得た。
一つ物を作るだけで、これだけのプレゼンをするのが大変だ・・・こっそり作ってまた拉致されたり怒られたりするのは嫌だし。あるものを少し変化させて新しいものを説明するのと、まったくこの世界に無いものを1から説明するのとでは労力が違いすぎる!
太陽にあたるためにとか余計ないこと言わずに、野営用の椅子を大きくして、寝っ転がるための椅子と言えばよかった。私は一つ学びました。これからが簡潔に物事を言わないといけないね。
そして護衛騎士は水着と言う物を作ってはどうだろうか?と想像力を膨らませているようで、ビーチチェアと一緒に水着も作ることを勧められた。
しばらくしたら兄がものすごい息を切らせながら追いついてきた。あまりにもぜぇぜぇ言ってるから少し可哀そうに思う。
兄が付いたと同時に護衛騎士がさぁ行きますかと言うじゃないの。お、鬼か?兄も絶望的な顔をしているが、学んだのかささっと魔クマの上にちゃっかり載っている兄。絶対動かないぞという不動の心構えを感じる。
あきれた顔をしている侍女様だけど、乗せてあげることにしたようだ。そして次は護衛騎士がウォーミングアップをし始めた。
え?護衛騎士乗らないで走るの?魔クマ結構早いし大変だよ?と、思うのと同時に、私は魔クマの上の乗せられて、侍女様が魔クマを走らせる。
余裕でついてくる護衛騎士。兄の複雑そうな顔がほんの少し目の端に移る。しばらくしたら兄もおりて護衛騎士と一緒に走り始めた。あれかな二人とも鍛えてるのかな?私はごめんだけどね!
そうやって二人は走りながら魔クマと一緒に走り、街道を歩いてる人を驚かせながら次の町にとたどりつく。
そんな日々を経て、気づけば王都に。
兄はすっかり逞しくなり、魔クマと並走していてもあまり疲れなくなってきたようだ。体力おばけですか?
王都は大変にぎわっている。コライユ国とドレ国を経由してきたからか、異国情緒という感じはあまりしなかったのだけど、ヴェルト国から直できたら異国にきた!という気持ちになるんだろうけど、実際とても素朴っていうのが正直な感想である。
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