第131話 【side】侍女様と護衛騎士
【side 侍女様】
私の名前はミレーネ。ローラ様と愉快な仲間たちの一人です。
ついつい癖で様をつけちゃうのよね、本当はもう妹みたいに思って可愛がっている。私がもし死んでしまってもいいように、冒険者も簡単な魔物なら一人でも狩りできるように鍛えてるし、こっそりと暗部の仕込みの技などを教えている。
対人間用だとこのツボを押すと昏倒するからいざと言う時はここを押して逃げなさいとかね。実際は昏倒どころじゃなく即死するツボだけど、ローラを襲う輩はこの世から消えてなくなればいいと思ってるから、何の問題も無い。
私はいつだってローラを守ってる気がしていた。けど今回のことはとても不覚だった・・・まかさ魔リスがあんなに強いとは!
しかも一撃で昏倒させるツボを魔リスが心得てるとは夢にも思わなかった。これは私が油断した結果なのか、実力が伴って無かったのか。
ローラが魔リスを捕獲したことを聞いて、無事でよかったと思うと同時に、少し悔しい気持ちも出てくる。
ローラは虫も殺さないような顔をしていて、実は結構やることはエグい気がしている。野盗を収納袋に詰めるなんてね?私なら殺す一択だから、生かされて永遠とあの中に閉じ込められるのと、すぐ殺されるの。どちらが幸せかなんて比べようが無いと思わない?
あとローラのお兄さん、あの人普通じゃない。認めたくは無いけど私より強い、何の訓練も受けてないのに!
私のあの厳しい訓練はなんだったのか・・・ずるいと思う、でもそれが女神様の愛し子を守るための騎士なのだろう。
ローラは間違いなく今でも女神さまの愛し子に違いない。
兄を訓練したらおそらく誰も勝てなくなるだろう。少しづつ教えるべきだけど、しゃくだから私からは教えない。
一見優しい兄を演じているが、そんなことは無い、妹以外は今の所目にも入ってない気がする。そう妹さえ無事であれば私の命も大したことないような扱いをするだろう。それが人として感情が欠如していると言われると、私も似たようなものなので何も言えないのだけど。
兎に角ローラを守るために特化しているような人と成りをしている。
兄は敵に回すと厄介だけど、ローラを一緒に守るという行動を取っていれば敵に回ることない。
最初にローラの侍女になって監視するようにと任務を受けて、何とも思わなかった。しかしとても面白いことをするというか、まぁ変というか。今まで監禁されていた人は沢山いた、秘密裏に始末されてしまった人も沢山いる。
王太子が視察に行った帰りに気に入った女子を拉致監禁なんて、ヴェルト国では当たり前だった。あの国は確かに腐っていた。そのことに対してなんとも思っていなかった。
その中でうまいこと立ち回り、生き延びて、王族のお手付きになることもなく、果ては貴族の嫡子を侍らせて目の保養をするようなしたたかな人間は居なかった。どちらかというと、貴族の嫡子に篭絡されてしまう方が多かった。
全てにおいてローラという平民は真逆に行く変わった子だった。
普通の平民は泣いて許しを請い、そのうち贅沢になれてきて、図に乗り、殺されるだけだ。半年もたってくるとすっかり勘違いした平民が出来上がる。
人は窮地に追い込まれると、自分をだましてでもその状況に適応しようとする。
でもローラにはそれが見られなかった。心が折れることなく、着々と逃げる算段と準備をして、私のことまでテイムしてしまったのだ。
面白すぎるでしょ!今までこんな人いなかった。テイムされたからなのか、その時から私がローラの方にだんだんと染まっていってしまった。この人なら私の世界を変えられるんじゃないかと思ったのだ。
今までそんなこと考えたこともなかったのに、人生をよくしたいとか、変えたいとか、そんなこと考えたことなかったのにだ。
命令があればどんな男とでも過ごしたし、命令があればどんな人間でも殺しもした。
そんな私が、ローラと一緒の生活をしてみたらどんな人生が待ってるのだろうと想像してしまったのだ。
今まで夢なんて見たことがない、ただその日を言われたとおりに生きてきただけの私に突然現れた希望?夢?不思議な存在だ。
まだまだ自分が望む夢や希望というものは無い。でも一つだけ言うなら、ローラが進む世界を一緒に見てみたいと思っている。
【side 護衛騎士】
王宮に連れてこられた大抵の平民は大体1年ぐらいで見かけなくなってる気がする。気がするだけで全員とあってるわけではない。すれ違わないだけかもしれない。
ただあれは拉致されてきたんだろうな、監禁されてるんだろうなというのはここで長く働いてるとだんだんとわかるようになってくる。
ローラとは正直接点はなかった。王宮で監禁されているときに離宮を作れと言ってその要求が初めて通った珍しい平民だということぐらいの認識だった。
ある日護衛を命じられた、王宮から離宮までの移動を護衛するという簡単な仕事だ。でも俺が頼まれるということは、要人もしくは王家にとって重要な人物だということはわかる。
平民で監禁されてるくせに、能天気に自分の要求を言って王族にその要求を認めさせた。そんな人物はどんな奴なのかと興味が湧いたがそれだけだ。
何回か王宮と建設している離宮を往復していると、ローラという平民が俺になにかしているなという、ものを感じるようになった。魔法を使ってるわけではなさそうだが、なんともむず痒いというか、なんとなくだが時々ローラという平民の言うことを聞かなきゃいけない気がしてくる。
ローラという平民が何をしてこようとしたのかは、テイムされて解除された瞬間に理解できた。
テイムされた時は自然のこの人の言うことを聞こう、守ろうという不思議な気持ちになった。
しかし、テイムが解除されてから、なんでそう思ったんだ?と疑問に思ったが、テイムされたとは気づけなかった。テイムが解除された後はなんとなく好意が持てる程度だった。
それからよく観察していると、侍女という名の監視役も何となくだが、ローラという平民に誰にもわからないように、融通している気がした。
なぜ気づいたかって?侍女はすっごいいい女だったんだよ。色気といい身体の線といい、男なら一度はお相手願いたいような女だ。だからよく見ていた。
そしてローラという平民も城の中を歩き回りながら何かしているようだった。城の中は俺の護衛対象でもないし、管轄外だったので上に報告することはしなかった。
侍女は侍女のふりをしていたが、どの部署所属の人間かはすぐにわかった。俺は暗部に片足突っ込んでるようなもんだからな。
ある日侍女を誘ってものにしたわけだけど、侍女側の計画で俺を引き込みたかったんだろう。そして今に至るわけだけど。
俺は仕事より女をとっただけだ、特に王家に忠誠心もなければ反発心もない。騎士で護衛というだけで、影っぽいしごともしていたけど、中途半端だった。特に高い志があるというわけでもなく、騎士として誇りに思うような仕事をしているわけでもなかったからな。
ミレーナとローラと旅をし始めて、いい女を抱けて俺は満足だ。それに美味しいものも食べられるしな?ここだけの話ミレーナのことは結構本気だ。住む場所が落ち着いたらプロポーズしようと思っている。
ミレーナにとってもローラはいい影響を受けてるようで、だんだんと人らしくなってきた気がする。でも根っこは暗殺者の思考をしているけどな。
何よりも面白かったのは、ローラが俺とミレーナのことをテイムしたと思い込んでるところだったかな。
好きにさせていたけど、テイムしてる主人として一生懸命いろいろと決めてる姿は可愛くすら感じた。
正直言えばこの旅は楽しい。ミレーナといういい女も手に入れられて、ローラの面白いところが見られて。そしてレオンという便利なスキル持ちに、ローラの兄。
あの兄はやばいな?なんの訓練もしてないのにあの戦闘能力だ。今後俺が鍛え始めたらあっという間に抜かされていくことだろう。」
まともな人生遅れるとは思っていなかったが、この旅の終着点をとても楽しみにしている
本日もお読みいただきありがとうございます




