第119話 カカオと兄と
今私は決意した、この飲み物の原材料が手に入る場所に住むことを。多少不便でも絶対この飲み物を買える場所に住むと。
今まで忘れていたけど、ようやく出会えたねチョコレート様。
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今私が手にしてるのはホットチョコレートだ。人生が一気に豊かになったきがする。あなたに出会えてよかった。思わず泣いてしまった嬉しさのあまりに・・・前世で大好きだったんだもん、チョコレートが!
今日と言う素晴らしき日に出会えたことを女神さまに感謝しよう。そして買い占めよう。いやっこれは出会いだ!まってまってその前に!ホットチョコレートの屋台の人がどこから来たのか聞かなくては!その地に向かって私は進む。
もう一度列に並んだ、侍女様も兄も無言で一緒に並ぶ。侍女様とお互い目を合わせてうなずき合う。きっと二人の心は一つだ。
護衛騎士とレオンも並んでる、わかってるよな?という目で訴えておく。この二人は欲しくないんだろうけど、私たちのことをよく理解しているし状況判断はぴかいちだ。
まとめて買うことはできないという予想ができたので、買い占められない代わりに割増要因でいてくれてるのだろう、レオンの物は私の物だ!
そしてまた私の順番に来た時に話しかけてみる。
「こんにちはとても美味しですね!ここにくれば毎日飲めますか?」
「ここの屋台は不定期なんだよ、今日会えたのはご縁があるねぇ」
「毎日飲めるようになるにはどうしたらいいですか!?」
「それならリケーネ国に行けばどこにでも売ってるよ」
「ほんとですか!?」
「うん、リケーネはこのカカオの料理とかいろいろあって楽しいと思うよ、私はリケーネ出身だから特別に思ったことは無いんだけどね、初めてカカオを飲む人はすごい感激するよね、リケーネに行くといいよ」
「ありがとうございます!」
侍女様と兄と一緒にまたホットチョコレートを飲む。護衛騎士は買ったホットチョコレートを侍女様に渡し、すぐさま収納巾着に入れていた。レオンも私に渡してくれた、好きになりそう。
明日にはリケーネ国に行くことに決めた。侍女様も賛成している、兄もよくわかってなさそうな顔でうなずいている。
元から次はリケーネ国に行こうと思って居たから、女神さまのお導きに違いない。
屋台で肉の串焼きを買ってベンチで座りながら侍女様と真剣に話す。
「私ね永住の地はリケーネ国にしようと思う」
「賛成します」
「わかってくれるよね!?」
「あれは天下を取れる食べ物です」
「そうだよね!でもさ、なんでヴェルト国には入ってこなかったんだろう?」
「お値段はほどほどでしたし、あのお姉さんが言ってるようにどこでも食べれるわけではないとか?」
「あのお姉さんにとっては当たり前だっただけってこと?」
「そうです、もう一度並んでどこから来たのか聞いてみましょうか」
「そうだねそれしかないね」
この会話を聞いていた護衛騎士は少し呆れた顔をしていたけど、侍女様の眼光が強く黙っていた。それが正解。
もう一度屋台の場所に行くとすでに店じまいをしてしまった後のようでそこには何もなかった。幻だったのか・・・
屋台でちょこちょこつまんでいたので、特に夕飯を食べようと言う気になれず、私以外の4人はまだ外で飲むということなので私は先に宿に戻る。
ベッドでゴロゴロしながらもろこし爆弾を食べる。自分で作れるのでは?と思ったけど私は食べる専門だからやっぱりつくらない。
横になりながら本を読む。もちろん娯楽小説で、コライユ国でヴェルト国の言語の本が売っていたので買っていた本だ。残念なことに3巻目しかなかったので、3巻から読むというとても不本意な成り行きなんだけどね。
気づいたら寝落ちしてたようで朝日が窓から入ってきている。侍女様は帰ってきたのかな?と思って横のベッドを見てみたら居たのは兄だった。まったくもう、ほんと中がいいんだからね!
今日はとうとう国境を超える日だ。ドキドキするのと楽しみなのが入り混じっていて全く恐怖や怖いと言う感情は無い。
言葉が通じればいいなとは少し思うけど、チョコレートの為なら言葉も覚えていく。頭の中をすっきりさせるため、コーヒーを一杯居れることにする。コーヒー豆とミルを取り出してゴリゴリ削っていく。まだぼーっとしているからコーヒー豆を一気に砕いておくことにする。毎回削るのはメンドクサイので・・・
ある程度の量を削ったら手も疲れてきたしコーヒーを入れることに。お湯は収納巾着に入れていたので大丈夫。問題はコーヒーをこすときの道具なんだけど、コーヒー豆を買ったお店ではハンカチでと言っていたので、もったいないけどハンカチでこす。1枚使って捨てるのは忍びないので、ドリップが終わったら綺麗に洗ってまた使うんだ。
コーヒーの匂いにつられたのが兄が起きてきた。そうなるんじゃないかなと思っていたので、兄にもコーヒーを渡す。
兄妹そろって朝は弱いのかもしれない。無言でお互いにコーヒーを飲んでだいぶ頭がすっきりしてきた。
このタイミングで全部話しておこうと急に思ったので自分について話しておくことにした
「兄さんあのね、私隠れ魔法とスキルと言う物があってね」
「なんだそれ?聞いたことも無いぞ?」
「うん、生まれた時からあるのか、後から発現するのかは解らないんだけど、教会の鑑定にも引っ掛からない魔法とスキルを持ってるんだ」
「え?そんなことある?」
「あるんだ、この数日兄さんが狩りしてくれてたから私っはほぼ何もしてないんだけど、風魔法と光魔法が使えるようになった、それとテイマースキルも持ってる」
「え?そんなことあるの?」
同じことを2回も言っている。と信じられないようなので、少しだけ指を光らせてみたり、風をぶぉぉぉーーーと兄に吹きかけたりしたら信じたようだ。
そんなことあるんだなーとびっくりしていた兄は教会に行かなくていいのか?と聞いてきたけど、監禁されてたし複数魔法とスキルを持っていたらどんな目にあうかもわからないから、黙っておくことにしたと言うと、納得していた。
それと、もうヴェルト国に戻る気はないこと、半ば兄さんを連れ去るようにしてしまったことについて謝る。
兄は良い気分転換になったと言って許してくれたけど、ヴェルト国を離れることについては少し怖くて聞けないな、と思って居たら
「俺はローラの行く場所に一緒に移住するよ、たぶんだけど父さんも母さんも移住すると思う。王宮から手紙が来てさ、ローラが手打ちに会ったって読んだ時のことは一生忘れないと思う。遺体も戻ってこなくてさ。棺桶だけがもどってきて、中を見せてくれなかったんだよ。あの時はおかしいとかそんな事考える余裕が無かった。
でもな、身を引き裂かれる思いをしたのは一生忘れない。ローラが生き返るならなんだってするって思った。そしてローラは今こうして生きている、今の俺にはそれ以上に大事な事なんてないんだよ、父さんも母さんもそういうと思うよ。だからローラが安心して住める場所に移住しような」
どのぐらいぶりだろうか、これから一人じゃない安心感に包まれて本気で泣いてしまった。兄は私の事をギュっと抱きしめながら大丈夫だよと言ってくれて背中をさすってくれている。
いろいろあったけど、兄がこう言ってくれてすべてが報われた気がする。
宿のフロントに降りて行き、侍女様と護衛騎士がすでに待っていた。侍女様がレオンが
”今日のうちに私の両親と出発するようにする”
という伝言を残して私の両親のもとに行ってしまったそうだ。
新しい一歩が今日から始まる、国境まで歩いて30分と聞いたのでみんなで歩いて行く。ハトも居る、馬の上にはなぜかラロも居る、大人しくちょこんと鞍の上から出ない様に気を遣っているようだ。
国境付近に来て、住民板を出し、国境を通る手続きをする。国境警備隊の人達が何を言ってるかわからないけど、侍女様と国境警備隊が何か揉めてる様だ。
侍女様が鋭い眼光で笑えと無言の圧力を送ってくるので、ニコーっと自分が思う最強の笑顔を出したら、揉めてたようだけどすぐに通れることになった。
よぉーし幸よい、新しい国の始まりだ!
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