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まぼろしのひつじ  作者: うしさん@似非南国
裏伝 幼き神龍の巫
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9.光るのは羊だけじゃなかった

 この日と次の日は、おにいちゃんと一緒に、家に引きこもっていた。

 金髪洗濯兄ちゃんが、三日ほど間を置くくらいがちょうどいい技術なら開示できるので、そのへんで手を打ちましょう、などと言っていたせいだ。

 その話し合い以外で、直接顔を合わせてないから、結局名前を知らないままだな。


 ……なんか、あたしが避けられてる気がするんだけど、気のせいかしら。

 お互い相性は確かに悪いって気はしてるんだけどねえ。


 まあこうやってのんびりするのもたまにはいいか、と思ってたら集落から、長老のおばあちゃまがご用事です、って連れ帰られる羽目になりました!もうちょっとおにいちゃん成分を補給させろ!!


 ……ごほん。


 しかも、戻ったものの、用事というのも大したことではなくてですね。

 うん、おにいちゃん関連の近況を報告しただけでした。

 まあ皆おにいちゃんが心配だったのは判りますけど、わかりますけどぉ……


 そのあとの余った時間は、

 《あらー、なんだかつやつやしてるわねえ!かわいいー》

 なんて言われて祖霊様衆のトークネタという名のおもちゃになってましたハイ。


 夜はおばあちゃまのところにお泊りでした。ええ、うちの天幕、まだ立ててもいなかったっていうね!

 そうよね、おにいちゃんがあっちの快適な家にお泊りだから、あたしひとりのために天幕立てるのもどうかっちゃどうかよね。なんたってもう晩秋、ひとりじゃ寒いしね。


 翌日、おにいちゃんが来たので、久々に羊ちゃんたちと遊んでいたのを中断して、一緒におばあちゃまのところへ行ったけど、今度も祖霊様たちのご用事があるので、って引き留められました。解せぬ。


 まあ、なんだかんだで駄弁るのは楽しいので、寝落ちするまで喋ってしまったんだけど。

 割とガチの雑談ですよ雑談。あとは、畑が作れなくて暇な農家の奥さん方のほうに連れていかれて、一緒にお風呂とか、髪を編み込んで遊ばれたりとか。

 これも農家さん勢のところに遊びにきていた羊追いの奥さんが、旦那さんが売るための品物を編んだあまり毛糸で、白いふわふわのケープを編んだんだよ、って見せてくれて、ついでに何故か試着されて、気が付いたらあたしのものになっていた。

 かわいいし暖かいし嬉しいけど何故?と、首を傾げたら、きゃーかわいい!と。いやまって、なんぞ?

 そこから奥様勢の話は、うちにもこんなかわいい娘が欲しかったー、なんて方向に移り変わっていったので、そっと脱出しました。

 いやあ、両親を亡くしたときの、この子貰いたい云々のトラウマが、ちみっと。まだちみっと残ってる。



 《それにしても、ここは本当に草原ばかりじゃな》

 翌日も、似たような経緯で人目につかないように逃げ込んだ祖霊殿。実体に触れないのに、器用に優雅に櫃に凭れた姿勢のクレクさんがため息をつく。森のほうがお好み?

 《そういう訳でもなかったと思うのじゃが……まあ、長年森の傍に居ったからのう》

 《こっちの人の集落も結構遠いっぽいのよねえ、馬で1日でつかないとかいう噂よ》

 《こっちの人、かあ。どんな人だろうね。あの得体のしれない人は綺麗だけど、あれはなんか違うよね》


 口々に、起きている皆が喋っている。この草原に来てから、力が安定し増しているそうで、起きている人が増えた。

 ……まあ、あたし経由でかみさまの力がちょこっと流れてるのもあるかもしれない。

 巫女なんでね、そこらへんはどんだけコントロールしてても、ちょろっとだけ漏れるのよ。特に今はナカノヒトはともかく、体が未熟だしね。

 そういう意味では、祖霊様がたは力の流れる先としてもまあ適してはいる。

 あたし経由だから、破片と違って汚染は発生しないはず、だし。


 得体のしれない人って洗濯兄ちゃんか。確かに、あの人はなんか変だよねえ、どこがどうとは言えないけど。


 《あれは、我らとは特に相性の悪い力の気配があるな。そもそもあそこで動いておるのは、本体でもなさそうじゃ》

 ほほう?そう言われてみると、あの兄ちゃんは、なんていうか、どこかがすかすかした感じがするんだよねえ。

 避けられてるっぽくて、最初の日以外あんまり顔もみていないけど。


 《おや、その胡散臭い人が随分慌てて集落に来たわよ?何かあったのかしら》

 おにいちゃん側になにかあったなら、なんだかんだ言っておにいちゃんにひっついたままのエスロさんたちが連絡してきそうなんだけど、特に何も聞こえてこないよねえ。距離的には、簡単なお話くらいはできるんだけど。


 《……例の熱病の件。こっちにあるか、判らないそう》

 ラクレさんから、ぽそっと情報が入る。


 あーーーーーーー!確かに東方にあの熱病がなかったら、ものすっごく!まずい!検疫!!


 というか、ここ数日この草原に留め置かれてるのも、検疫のためなんじゃないかな。

 《検疫とはなんぞ?》

 えっとねえ、伝染病とか持ち込まないように、病気になるひとがいないか一定期間地元の人や動物から隔離して様子見すること。

 あの熱病は流行るときの潜伏期間は短いけど、流行りと流行りの間に隠れてる期間が凄く長いから、きちんと検査しないとだめだとおもう。


 最初にいた世界だと、人間はともかく、動物は一か月くらい留め置いてた気がする。

 《へえ、まあうちの羊は病気とはあんま縁がないからねえ》

 光ってる子がいるせいか、他所の羊より病気に強くて丈夫なんだって。


 集落にやってきた洗濯兄ちゃんの用事は、やっぱり伝染病の調査だった。おにいちゃんが熱病のことを思い出して教えたんだそうだ。

 東方にあって西側にない病気もあるかもしれないから、一週間くらいかけて検査しますねって言って、洗濯兄ちゃんは世代と性別ごとに各種検査用の検体をてきぱきと作って帰っていった。

 あの兄ちゃんやたら綺麗好きだと思ったら医療従事者か検査技師だな、あの動きはプロですよプロ。


 って隔離期間中おにいちゃんに会えない?!しまったあああああ!!!




 まあ、案外と一週間なんてすぐ過ぎるもんですね。

 隔離期間といっても、ここは、馬で二日くらい走らないと隣接の集落には着かないくらいの国の端っこなんだそうで、あたしも集落の人も、羊や動物の世話をしながら、いつも通り過ごしていた。

 そもそもあの病気、冬には余り流行らないのよねえ。蚊でも媒介してるのかしらと思ったけど、そういやこの世界、そういう羽虫っていうか、血を吸う虫って見ないな?蜂とかはいるんだけど。


 いないことはないよお。おいはらってるう


 光る羊ちゃんが、草をむしゃむしゃしながら、のんびりと答えをくれる。

 前から思ってたけど、ほんと君たちはお役立ちだねえ。


 かいてきせいかつ だいじ


 すりっ、とあたしの顔にもこもこした首を擦り付ける別の羊ちゃん。うん、ふわふわで気持ちいいねえ。

 しかし、快適生活なんて難しい言葉知ってるわね?


 えへー


 めえ、と声をあげて、羊ちゃんは楽しそうだ。


「……おうい、嬢ちゃん、また光っとるぞ?」


 近くにいた羊追いさんちのご隠居の爺ちゃんが声をかけてくれる。ありゃ、またか。

 なんだか最近、光る羊ちゃんたちと遊んでると、あたしまでぴかぴか光るようになっちゃって、ちょっと困ってるのよね。

 まあ、遊ぶのをやめればすぐに落ち着きはするのだけど。


 正直最初はどうしようかと思ったんだけど、集落のひとは、こっちがびっくりするくらい驚かなかった。

 羊が光るんだし、子供が光ることもあるだろ、くらいのスルー力でした。なんでだ。


 まあ、見たことあるのは羊追いご一家と犬屋の皆さんくらいだし。羊追いの息子さんは一人だけびっくりして二度見してたけど。


「そうそう、嬢ちゃん、兄ちゃんと東のお客人がこっちに来とるぞ、今日から会いに行ってもいいそうじゃ。行っておいで」


「ひつじのおじいちゃん、ありがと!」


 羊追いの、ときちんと言おうとすると六割噛むので、ひつじのおじいちゃん、なんて呼んでいる。

 なんかそう呼ぶと、おじいちゃんも嬉しそうなんだよねえ。


 のっていく びっくりさせよお


 ほんの出来心。誘ってくれた光る羊ちゃんに乗っかって、出発進行!



 程なくして、おにいちゃん発見!なるほど、赤毛の高身長イケメンとご一緒、あれが東のお客人とやらかー。

 それにしても、おにいちゃんがやけにご機嫌そうだ。なんかいいことでもあったかな。


「おーにーいーちゃーん!」

 そそくさと光る羊から飛び降りて、駆け寄る。自然と笑顔になる。一週間ぶりのおにいちゃんだ!


「ちょ、シィ、なんか漏れてる漏れてる、なんでぴかぴかしてるのおまえ?!」

 おにいちゃんが慌ててるのが非常にかわいい。後ろで赤毛のイケメンがぽかーんとしている。っていかん!他所の人!!うかつ!


「えへー!ひつじちゃんといるとたまにこうなるの!そのうちなおるー!」

 可愛い方面で!ごまかす!!

 おにいちゃんは、最初こそ慌てていたけど、飛びついたあたしをしっかりと抱きとめてくれる。なんという安定感!

 そのままお互い久しぶりのきょうだい成分を堪能する。いかん、顔がでれでれする、いかん。


 赤毛のイケメンさんは、ハルムレクさんというそうだ。なんだか随分とおにいちゃんと仲がよさそうに見える。


 《隔離期間中ずっと一緒だったんですもの、男の友情!みたいな感じで盛り上がってたわよお》

 エスロさんからの情報。なんと!それはつまり、おにいちゃんに友達ができたということでよろしいか?


 《あってる。むしろ親友?メシウマ》

 ラクレさん、その感想?はいらなかった。最近あなた残念方向が加速してません?


 それにしても、見事な赤毛だ。二番目の世界でもなかなかいないレベルの、華やかな炎の色。瞳は琥珀色。均整の取れた筋肉しっかり細マッチョ?かな?礼装っぽい白い衣装がよく似合っている。


 《あら、相談役くんまで来たのね、あとでいいのにぃ》

 エスロさんもなんか残念そうに言う。そりゃあ東の人が訪ねてきたなら、相談役さんが出てくるに決まってる。あの人が本来の集落の渉外なんだし。


 そういや、相談役さんも赤毛だなあ。ハルムレクさんより色が濃いけど。弓狩さんちが赤毛一家だったっけ。


 《そうね、相談役くんは今の弓狩の弟さんよ。間にふたり挟まっているから、歳がだいぶ離れているけどね》

 ふたりも?ってことは四兄弟?この集落にしてはたくさん兄弟がいるのね。


 《今の弓狩くんもそうだけど、二人のお母様も街の方だからかしらね。とはいっても、相談役くんのすぐ上のお兄さんは遠くで亡くなったそうだけど》

 もうひとり、お姉さんがいて、その人は隣村にお嫁にいったんだそうだ。


 相談役さんとハルムレクさんが挨拶から初めて、社交儀礼もそこそこに、集落の話などをしだすのを、おにいちゃんと遊びながら眺めていたら、おにいちゃんが二人に呼びつけられた。ぐぬう。まだおにいちゃん成分が足りない!


 脚にしがみついてついていく。今のおにいちゃんならあたしくらい余裕で運べるからね。見上げたら、なんかあたしに目線を向けてにやにやしてるので、この状態がかわいく見えてるんだな、きっと。よし!


 それにしても、大人二人がなんだか似てるなあ、気のせいかなあ、と思っていたら、おにいちゃんが近所の親戚呼ばわりしだした。

 やめてそれツボる、初対面の人の事笑っちゃだめだから!耐えろ耐えるのよあたし!


「「……そんなに似てるか?」」


 あっだめだ、もうだめ。なんで同時に同じこというのあなたたちー!


 ぶはっと吹き出したところで、本当に表情そっくりな赤毛二人の顔が目に入ったもんですから、あとはもう笑い転げるしかできませんでした。

 無理!!




 最終的に全員笑ったので許された。なんかおにいちゃんの笑い方が一番お付き合いっぽかった。内心引いてた疑惑。

流石に羊さんはひらがなしかしゃべらない。

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