第二話
サシャはいまだに兄の死を受け入れられなかった。
あんなにも聡明で優しい兄が、過激な反革命に関わっていたなどどうしても信じられなかった。
パリ近郊の教会で捕らえられた最愛の兄。
最期に彼は何を思い、どんな言葉を残して逝ったのか──。
兄が死んだと聞かされたあの日から、サシャはずっとその答えを探している。
開催された被害者の集いは、しかしその場限りで終わることなく、富豪のナタンという男の提案によって定期的な開催が約束された。
ナタンが自らの所有する洋館を会場として開けば、毎月15日には喪服と首に赤いリボンを巻いた者たちが、目元を隠す仮面を身につけ、革命後のパリの明るさから逃れるようにひっそりとそこに集まった。
サシャはここでひとりの青年と出会った。フランスの多くの者がそうであるように、聖人の名を持つこの青年はサシャよりも2、3年上に見えた。
「やぁ、サシャ。また君に会えて嬉しいよ」
青年ラファエルは、サシャよりも頭ひとつ分も高い背丈と、仮面越しにうっすらと分かるヘーゼルの瞳、そして少し癖のある焦茶色の髪を持っていた。
サシャは彼の姿を見つけると、いつも胸の高鳴りを感じた。
同性愛は、神に背く行為だ──。
サシャは誰にも打ち明けられない思いに身を焦がしていた。