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もう一つの贈り物

 伊右衛門が助九郎を促し辞令を出す。

 「徳俵次郎。そなたを不正不備改め方の長官に任ずる」

 「不正不備改め方‥‥長官!?」

 伊右衛門が話す。

 「熱中症の件では水の他に塩を与えるよう助言したそうじゃの。また、ゴミの分別についてはそなたの発案なのじゃろう。これには民の意識が大きく変わったと聞いておる。これらの実績により、まだまだこの国の力になれると判断した。まあ、葵がそうして欲しいとの願いなのじゃ」

 「しかし、何故長官なのですか」

 「ふむ。今回の旅で世直しをするための仕組みが出来た。今後改善する事もあるかもしれぬがの。そなたは前の世界の知識もある。それはこの国をさらに良くする財産となろう。さらに、余の嫡男として、ゆくゆくはそなたは王になる。不正不備改め方長官はこの国を深く知る仕事と言えよう」

 「私が王に‥‥」

 「葵と旅したそなたならなれる。余よりも遥かに良い王にのお」

 

 変わって一子が話し出す。

 「その部下として左近。そして、入られよ」

 入ってきたのは椿、そして、太助であった。

 「椿と太助もそなたの部下となる。安心せよ。相談役として助九郎もおる。協力してこの国を良くして欲しい」

 「三人とも、それでいいのですか。私はあなたたちより年下で‥‥」

 太助がそれに答える。

 「次郎様。喜んであなたの下で働かせていただきます。私も今回秘かに巡回しておりましたが、以前していた義賊より人々の役に立てる仕事がやりたかったのです。それに、私は外が向いており、次郎様は中で指揮される方がよろしいかと」

 

 左近と椿が太助の冗談にクスッと笑う。

 事情を知らない一子が訊ねる。

 「失礼しました。以前、次郎様が雨の中、人参を探していまして、木の上に登ったまでは良かったのですが、枝から足を滑らせまして、さらにすぐ下が崖になっており、そこからも落ちてしまったのです」

 と、太助が説明した。次郎は頭を掻いて顔を赤くする。

 「まあ、そのような事が‥‥」

 椿がフォローする。

 「次郎様は長官として改め方の頭脳になられるべきかと。戦闘、隠密などは我らにお任せ下され」

 「‥‥分かりました」

 左近も付け足しに話す。

 「次郎様。我ら三名の下で働く者が十名ずつ。計三十名、長官の配下に加わる事も決まりました。これにより、簡易な案件にはそれぞれの隊で解決も可能になります」

 伊右衛門が最後に話し出す。

 「次郎。葵からの贈り物は以上になる。宜しく頼むぞ」


 伊右衛門が助九郎に締めるよう促す。

 


 退出して次郎は太助と一緒に庭を歩く。

 「そういや太助、何故改め方に入る事になったんだ」

 「左近様と椿様の推薦でございます」

 「太助、敬語やっぱりやめないか。以前のように対等の方がいい」

 「じゃあ、二人の時は対等。これでいいか」

 「その方がありがたい。それにしても、二人とも義賊から足を洗って改め方になれるとはな」

 「全くだ。これで堂々と正義の為に働ける。お互い夢が叶ったな!」

 次郎が空を見上げて言う。

 「ああ‥‥葵のお陰だ‥‥」






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