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対話

 葵がまた呪いに苦しみ始める!

 「ああっ!熱い!助けてたもれ!」

 良子と藤子が泣きながら葵に水を流す。そして水を拭き取る。

 「姫様!お気をたしかに!」

 「姫様!しっかりなさいませ!」

 良子も藤子も旅の最後はこうなることを覚悟していた。

 出来れば代わりに呪いを受ける事も厭わないと。

 呪いによる禍々しい模様は全身に広がりをみせていた。

 幼い姫に地獄の苦しみが襲い掛かる!

 その苦しみは一分だったり二分程だが、葵にしてみれば永遠と感じるほどの苦痛!

 小さな身体でよく耐えてはいるが、見ていられない!

 

 漸く落ち着きを取り戻しても、いつまた激痛に襲われるか分からない恐怖!

 落ち着いているうちは着物を着替えて雲じいに任せて、良子と藤子は休憩する。

 「憐れな姫様よ‥‥機械いじりしか出来ぬわしに出来る事は、また無くなってしもうた‥‥元気であれば北限島の美しい景色をお見せしたかったのお」

 雲じいは眠っている葵に酒を呑みながら話しかける。

 「姫様‥‥北限島には本州以上に雄大な土地がありましての。地平線まで一面緑で覆われていたり、どこまでも続く一直線の道がいくつもあり、それを見るだけでもわくわくするのです‥‥」

 雲じいが一口酒を呑む。

 「姫様‥‥他にもナデシコにはたくさんお見せしたい素晴らしい場所がある‥‥幼少から姫様は呪いと戦ってこられました。わしならとっくに発狂するほどの苦しみに何度も耐えなさった‥‥」

 しわが増えた目尻から、つぅ~と涙が流れる。

 「姫様‥‥今、ナデシコ全国の民が呪いに打ち勝つためのお祈りをしております‥‥お一人ではない。皆がついておるのです!そろそろあの元気で明るい姫にお戻り下され‥‥」

 




 恐山では、術者の様子が変わり悪魔のような表情となってゆく!

 「牛島原安親殿か‥‥」

 「いかにも‥‥お主は誰だ‥」

 「私は与平と申す。安親殿、そなたの掛けた呪いを解いて欲しくて参上した」

 「一度掛けた呪いは解けはせぬ‥諦めよ‥」

 「そうはいきません。そもそも何故呪いを掛けたのだ」

 「‥‥納得いかぬからだ‥」

 「何が納得いかぬ」

 「降伏を求めた事じゃ‥‥」

 「では、どうしたかった」

 「無論、一騎討ちじゃ!」

 「私が相手したいところだが、本題から逸れてしまう。安親殿、勝政は何故降伏を求めたとお思いか」

 「勝政は‥わしと政治をしたいと申していた‥」

 「そうだ。勝政は安親殿の統治能力を高く評価していたのだ。徳俵三代目伊右衛門の治世の今でも、そなたの治めていた北限島の民はそなたを慕っており、豊かに暮らしている」

 「長きに渡り、北限島の民は牛島原家が育ててきた。いわば大きな家族を目指した政治‥‥」

 「その政治を本州全域に広めたかったのだ、勝政はな」

 「‥‥」

 「安親殿。納得いかぬと申していたが、それは私もだ」






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