全国民動く
左近が町に到着した。
「皆、聞いてもらいたい!現在葵姫が呪いを受け、苦しんでおられる!」左近が切り出すと民がざわつき始めた。
「葵姫が呪いに!」
「まあ!お可哀想に‥‥」
「姫様って、たしかまだ七つだぞ‥‥」
左近が再び話し出す。
「葵姫とそなたたちは直接関わりはないかも知れない!だが、呪いに打ち勝つために共にお祈りしてはくれないだろうか!」
数日後。
椿が関八州に入る。
「皆様聞いて下さい!今、葵姫が呪いを受けておられます!このままでは今年の桜を見ることなく‥‥」
椿の叫びに民が動揺する!
「そういや、先代の御崩御の際に呪いの噂を聞いた事がある!姫様に掛かっていたのかよ!」
「まだ幼いのに、なんと惨い‥‥」
「しかし、呪いなんてどうすりゃあいいんだ‥‥」
椿が話し出す。
「お祈りしてはくれまいか!口に出した言葉には力がある!呪いを鎮めよと!姫様を解放せよと口に出して欲しい!」
さらに数日後。
太助がナデシコ西部に到着した。
「皆、聞いてくれ!葵姫が今、呪いに掛かっているんだ!皆の助けが必要なんだ!」
村人たちは驚いて言葉を失う!太助は続ける!
「呪いは病ではない!だが、解ける可能性はある!お祈りをしてもらいたい!これなら皆も出来る事だと思う!」
これを聞いて民が反応する。
「確かにお祈りなら出来ます‥‥それで姫様を救えるのかね」
「言葉にする事でそれを力に変える事が出来る!何でもいいんだ。呪い消えろ!とか、姫様頑張れでもいい!皆がお祈りすれば強力な力に変わる!」
さらに数日後。
次郎が先住民の村に着く。
「皆、落ち着いて聞いて欲しい。葵姫が今、呪いに掛かっているんだ」
テオが泣きそうになっている。次郎は話し続ける。「呪いを解くには掛けた本人を鎮めるか、お祈りするしか手段がない。しかし、お祈りが手段の一つならやってみないか!発した言葉は言霊となり、力を宿す!言葉は希望をもたらす!言葉は勇気をくれるんだ!」
「私も葵、助けたい!力になりたい!」
「テオ。君にお祈りしてもらえたら葵も勇気を持ってくれる!葵も言っていた。テオが人命救助の時に叫んだ声に奇跡を見せてもらった、勇気をもらったと!」
全国の町や村に四人が飛んでいく!
民は話を聞いて葵の力になりたいと動き始める!
「葵姫には家を新しくしていただいた恩があります!あれから手厚い保護も受けられて有り難く、有り難く思っておりました!」
「わしらは末代まで守れる堤防を作った。長雨による河川の氾濫も地震による津波も心配なくなった。これは葵姫が資金と人材を用意してくれたおかげだ!お祈り、お安い御用だ!」
「わしらは熱中症への認識と予防法、掛かってからの対処を葵姫に教えていただきました!」
「葵姫はおらのおっ母の病を救ってくれた。お金もいらぬと言いながら食事も与えてもらった。こんなに良くしてもらいながら、何もお返し出来なくて気になっていたんだ!姫様へのお祈り!精一杯やるよ!」
葵姫に恩を感じている者は多い!
全国的なお祈りが始まる!
一方、恐山に入った与平が術者を訪ねる。
「おや、珍しい。こんなとこまで何か用かね」
「牛島原安親と話をしたい」
「ほお。安親とな。何故かの」
「安親が掛けた呪いを解きたいのだ」
「呪いか‥‥そなた、死ぬ覚悟はおありかの」
「無論。私より大切なお命のためだ」
「ならば何も言うまい‥‥降ろしてみよう‥‥」
術者が不明な言葉を唱える。




