民の意識改革
葵たちは早速ゴミ捨て場の状況を見てみることにした。
空き地にゴミが捨てられているのだが、そこまでに行く道にもゴミが溢れている。
「これは、ぶほっ、酷いのお。何もかも構わず捨てておるわ」
「なあ、葵。普通は捨てかたはどうしてるんだ」
次郎が聞く。
「わらわは正直、ゴミはわからぬ。こんなことになっていたとは、恥ずかしい限りじゃ」
「もし、全国的にこのようなやり方をやっているなら、ナデシコは悪臭に包まれてしまうぞ」
「どうすればいいんじゃろう」
「先月、全国に布令を出したようにゴミに関する法律を作らないといけないな。また、ゴミの専門業者を全国につくる。それと、ゴミを分別して、再利用できるもの、出来ないものは燃やすなど、それが出来る施設をつくるんだ」
「まずはどこから手をつけよう‥‥」
「各家庭からのゴミを分別して貯めておく施設を作ることかな。出来れば各家庭の段階でゴミを分別したい。これは法律がいいな。」
「貯めるのかえ」
「ゴミの中には生ゴミ、金属、木材、着物など衣料、紙くらいに分けられると思う。金属は加工業者が買いたいだろうし、着物はさらに小さく子供用に作り替えたり、雑巾にしてもいい」
「なるほど。ゴミの中にも使えるものがあるということじゃな」
「そうだ。さらに生ゴミは、おからや乾いた草と混ぜ合わせて、栄養分の多い餌さとさらに混ぜると牛などの飼料になるんだ」
「ならば、ほとんどのゴミをまた使えるように出来るのかえ!」
「今より随分減らせられるはずだよ」
「しかし、兄上。これは神社仏閣以上に民までの末端に至る改革じゃ。容易ではないのお」
「段階的に実現していくんだ。取り敢えず分別だ。これをやらないと先に進めない」
「兄上。良い知恵をいただいた。感謝するぞえ」
葵は次郎の案を元に早鳥を飛ばした!
効果は予想を上回る早さで実現されていた。
「新しい布令が出たんだって!」
「どういう内容なんだよ」
「ゴミを分ける事みたいだよ」
「なんだそりゃ!めんどくせえなあ!」
「でもよ、悪い事ばかりじゃないらしい。まず、ゴミを分けるだろ、金属がほしいやつはゴミでも買うやつがいる。着物も、古着でも欲しいやつは買うし、小さくして子供用に作り替えたり出来るってわけだ」
「生ゴミはどうすんだい。臭くてたまんないのにさあ」
「それも、おからや乾いた草と混ぜ合わせて牛が食べる飼料に出来るらしいんだよ!」
「すごいなあ!だってよ、それが出来りゃあゴミがかなり減るんじゃねえのか!」
「これ、まさか、姫様のお考えなのかな‥‥」
「おめえも新調完治の小説読んでるのかい!オレもあの話し好きなんだよ!」
かつて祭りの中での誘拐事件が起こった際に、葵によって心を入れ替えた男が名を新調完治と改めて葵を主人公とした世直し物が全国的に流行っていた。
実在の姫様が実際に困っている人々を助けていく話しは貧困層を中心に話題となり、英雄扱いされているのだ。
「もし、もしもだよ!姫様のお考えってんなら、ゴミを減らせて悪臭も無くす大仕事だぜ!」
「分別する施設‥‥作ってみねえか!なあ!」
「皆、ゴミの事は困ってた事だ!いい布令じゃあねえか!」
こうしたやり取りが全国的に広まり、ゴミを分別する施設を作る流れが出来ていった!
さらに焼却施設も作られていき、また、無造作に捨てられているゴミを拾う者たちも現れた。それは町の中に、海岸に、色んな道に落ちているゴミである。
町や道からゴミが無くなり、民の気持ちも変化する。
「なあ‥‥町ってこんなに広かったんだな‥‥」
「人はいつも通り歩いてるのに、まだまだ余裕があるよ‥‥」
「ゴミが町や道を狭くしてたんだなあ‥‥」
「ちょっとあんた!だんごの串!そのへんに捨ててんじゃないよ!また町を狭くする気かい!」
「す、すまねえ!」
ナデシコ国からゴミが大幅に減った。民の心にゴミをあちこちに捨てないという気持ちが生まれ、再利用の道を知る。
そして、それは大人だけでなく子供に至るまで浸透し、物を粗末にしない考えなども行き渡るようになった。




