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暴力撲滅へ

 程なくして南から馬が数頭、馬車一台がやってきた。屋敷の門を叩く。

 「待ち人が来たようじゃ」

 屋敷に入って来たのは三人。いずれも女性であった。

 「髙梨銀でございます」

 「花笠茜でございます」

 「水山紅でございます」

 「皆よう参った。この新之助とその母君じゃ。よろしく頼む」

 「ははっ!」

 葵が妻と新之助に説明する。

 

 「二人には我が城に入ってもらおうと思う」

 「は!お城ですか!」

 「ここより南に大和城がある。城まではこの者達が護衛する。いずれも手練れじゃ。安心するがよい」

 「ですが‥‥身分があまりにも‥」

 「城には確かに王族や武家もいるが、平民が最も多く住んでおる。まあ、入ってはならぬ場所など規則はあるが、周りは気さくで似た境遇の者も多いのじゃ」

 「似た境遇‥‥」

 「二十年前に戦が終わり、戦で夫を亡くした者を城で一斉に引き取り、持ち場に就かせて働く場所を与えたのじゃ。持ち場については、恐らく助九郎という者が適所に就かせよう。安心するがよい」

 「ありがとうございます!‥‥」

 二人は葵に何度も泣きながら感謝を述べ、茜と紅に連れられ馬車に乗り込んだ。

 残った髙梨銀が助九郎からの伝言を話す。

 

 「今後、このような事態に対応するために神社に協力していただくことになりました」

 「神社とな」

 「はい。現在ナデシコ国には八万以上の神社がございます。夫の暴力に悩む妻が駆け込む場所として、巫女として働ける土壌を作れるようにするとの事でございます」

 「ほお」

 「さらに寺にも働きかけておりまして、同じく寺も七万以上ございます。子を授かりながらも育てきれない親もおります。そういった赤子の受け入れ先として、寺にも協力していただくことになりました」

 「さすが助九郎じゃ。合わせて十五万もの駆け込む場所があれば十分対応出来よう。銀、二人を頼んだぞ」

 「御意」

 

 こうして全国の神社仏閣に駆け込むことが出来ると宣伝されると、実はうちも暴力に悩んでいた、若くして子を授かったが育てきれないなど、多くの者が頼りにしたという。


 次郎は思う。

 現在のコンビニの数が六万弱だったはずだ‥‥

 それより遥かに多い神社仏閣‥‥

 これで女性と子供は守られる土壌が出来たかもしれない‥‥

 問題は男だ‥‥

 男を暴力的にしない方法を考えなければ永久に解決しないことになる‥


 次郎はそのことを葵に話してみた。

 葵もそれは思っていたらしい。

 男は女に比べて子供への対処が圧倒的に下手な人が多い。女は悩みを共通する女友達や女の母親に相談したりする事で解決出来るが、男は普段仕事をしており、子供と一緒にいる時間が短く、妻に任せる事がほとんどなので、初めこそ可愛く思っていても徐々に関心が薄くなっていく。

 さらに、仕事が順調な者とそうでない者でも差が出てくる。仕事が上手くいかないとイライラが募り、家庭でも子供が言う事を聞かなくなると、手を出してしまう。叩く以外の方法を知らないからである。

 

 とはいえ、今さら仕事を持つ男達に子供に対する教育をするのも難しい。

 葵は改めて早鳥を飛ばす。

 

 これを元に大和城から全国に布令が出る!

 弱者に対する暴力暴言禁止令である。

 男は女子供に暴力暴言をしてはならない。また、女も子供に暴力暴言をしてはならない。その他、自分より弱い者に対して暴力暴言をしてはならない。という法律を制定した。

 但し、武芸、スポーツとして武器や素手で殴る場合は規則を設けて行う事とした。

 

 男も暴力暴言は良い事だとは思ってはいない。だが、正式に法律にする事で抑制を促し、世間的に、してはいけない事と認識させる狙いがある。

 

 それでも、暴力暴言をする者はいる。

 奉行はこれを根気よく罰し、人々が暴力ではなく平和的に話し合う事で解決していくよう導く役割を果たす事となった。


 





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