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こたつ

 「兄上~。いよいよ寒くないかえ」

 「そうだな。もう昼時でも寒くなってきたかな」

 「藤子や。こたつを出そう!屋敷にあるじゃろ」

 「かしこまりました」

 少しすると、藤子と良子が皆が入れるほどの大きめのこたつを運んできた。

 藤子が魔力で温かくすると、次郎を促して、葵もこたつに入った。

 「おほ~!温かいのお‥‥今日はもう動かぬぞ~」

 「ははは。いいんじゃないか。毎日どこか行かなきゃいけないわけじゃないんだろう。ゆっくりしようじゃないか」

 

 暦は十二月となった。

 「もう今年も終わりじゃのお。兄上、ここまでの旅はどうじゃった」

 「葵のお陰であっという間だったなあ。前にいた世界でも味わえないことも色々あったし」

 「例えばどんなことじゃ」

 「まずは魔力の存在だ。オレのいた世界には魔力はない。それに、空を飛ぶ乗り物はあったが、それが屋敷というのは初めてだ」

 雲じいが運転しながらニヤリとする。


 「それに‥‥葵だ。葵のような人間はなかなかいないと思う」

 「わらわがかえ」

 「初めて出会った時を覚えているかな。オレが天井裏から部屋に落ちた時だ。葵は、オレを盗賊だとすぐ分かったのに騒ぐどころか、オレを護衛から助けようとしてくれた。普通は身の危険を感じて逃げたり大声を出して助けを求めるものだ。あの時の葵の度胸には驚いていたんだ」

 「そんなこともありましたなあ」

 「さらに、壊れかけの家を見て大工を大量に動員して新築を与える行動力。やると決めた時の迅速さはオレのいた世界の政治家たちも見習って欲しいと思ったよ」

 「わらわはそれが出来る立場だったからじゃ。大したことではないわえ」

 

 「それに大規模堤防工事だ。来て欲しいと思っても数千人は普通は無理だ。それを集めて完成させた。しかも一つの事故もなしにだぞ!」

 「集めたのは良子と藤子じゃ。監督もそう。無事故で励んでいたのは作業に来た者たちじゃ。わらわは、やろうと言うただけじゃ」

 「その、やろう、がなかなか言えないもんだよ」

 「わらわの話しは良いわ。こそばゆい」

 

 「そうか‥‥良子さんと藤子さんにも驚かされたんだが、ミスリルゴーレムを倒した強さは特に」

 みかんを食べていた二人が急にかしこまる。

 「幼少から武芸を嗜んでおりまして、私も良子も武家の娘なのです」と藤子が言う。

 「ですので、人一倍力もありますよ!」て良子が言った。

 「そうでしたか。藤子さんは料理も素晴らしいですね。毎日有り難く戴いておりますよ」

 「料理は母が味付けに厳しい方でしたので鍛えられました」

 「良子さんは本来は葵と歳が近いのでお世話係の他に話し相手も」

 「はい。姫様と仲良く遊んだりお話しをするような役目を仰せつかっておりましたが、武芸しか身につけておらず、世間の遊びを知らないのです」

 申し訳なさそうに良子が言う。次郎も、まずい流れとなり申し訳なさそうにしている。

 

 「あ!でも、次郎様が加わっていただいて、助かっているんです。私の足りない部分を助けていただき、ありがとうございます!」て良子が言うと次郎は、いえいえと頭を搔いた。

 「与平さんも、いつもは診察室に閉じ籠っているけど、やはり医者としてすごいな。崖から落ちた時はオレもお世話になったし、土砂崩れの時も重傷者を分けて、手際よく手当てされていた」

 と次郎が言うと葵が話す。

 「与平は屋敷の中でも特殊な役割をしておる。与平が最も働いておると言って良い」

 「与平さんが!特殊な役割って‥‥」

 「簡単に言えば、全員の健康状態を毎日診ておるという事じゃ」

 「そうか‥‥なるほど‥‥」

 

 「そういう意味では兄上も特殊な役割をしており、旅に役立っておるわえ」

 「オレに役割なんてあったのか。それは何なんだ」

 「話し相手じゃと言うていたじゃろ」

 「あ‥‥そうだったな‥‥」

 「おほほほ。まあ、旅をする段階で城の者だけでは会話をしても皆かしこまるのじゃ。じゃから、兄上がいきなり現れて、この者なら話し相手を堪能出来そうじゃと思うたのじゃ」

 「それでオレを旅に連れて行ったのか」

 「そういう事じゃ」

 次郎は溜め息をつく。

 「いや、オレを連れて行く時に王様を説得していただろ。もっと重大な使命があるもんだと思ってたんだよ‥‥話し相手かあ‥‥」

 「おほほほ。長い旅の重大な使命じゃ」

 

 四人はいつしか師走の寒さも忘れ、こたつで何でもない話を楽しむのであった。







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