心からの笑顔
用心棒たちが刀を抜く!だが、部屋の中では刀は長すぎて振り回せない!
椿は両手に苦無を手に思うように動けない用心棒を次々に倒して行く!
次郎は葵を守ることに努め、良子と藤子は葵に近づく者たちを投げや蹴りなどで返り討ちにしていく!
岡っ引きたちは部屋から洩れてきた者を数を武器に一人一人捕らえてゆく!
徐々に用心棒が少なくなり、いよいよ清水川、小佐田などを捕らえる好機が巡る!
椿もさすがに疲れが出てきたようだ。
そこへ!
今までとは別格の用心棒が現れた!
「おお、正親!何をしていた、早く斬ってしまえ!」
正親は部屋での戦いに慣れているのか、椿の猛攻をいなし、躱しながら要所で攻めてくる!
周りの者たちは二人の激しい攻防戦に入っていけない!
攻め合いの中、疲れが出てきた椿が僅かな段差に転んでしまった!
正親が、これは好機と刀を振りかぶる!
「椿!」
「くのいちめ、死ねいっ!」
まさに斬られる寸前!正親の目に礫が当たる!
「ぐあっ!」
その隙を逃さず椿が正親を一撃で撃ち倒した!
次郎は見ていた!
礫は太助が投げたものだ!
思えば嵩崑人参をオレに渡してくれたのも、崖から落ちたオレに縄で助けてくれたのも太助だったんだ!
太助は、屋敷を追いながらピンチの時に助けてくれていたんだ‥‥
もしかしたら、太助も義賊というやり方ではなく、正規の方法で民を救いたいのかもしれない‥‥
岡っ引きが一斉に捕らえていく!
あとは岡っ引きに任せて屋敷に戻ると、南から馬に乗ってやってくる者たちがいた。
屋敷の前に馬を降りると、二十名ほどの男たちが入ってきて、膝をついて礼をする。
「大江橋忠広でござる。これより永島の町奉行として公平に裁いて参ります!」
「橋本刑部でござる。これより新たに中間業者を一つにまとめ、農家からの買い取り価格に限りなく近い価格で消費者に届けられるよう監督して参ります!」
「秋葉原元保でござる。これより永島の新しい領主として不正のない町づくりを行って参ります!」
「辻堂丹波でござる。これより全ての流通に不正がないか以下の者たちと監督して参ります!」
葵が歓迎する。
「よう来てくれた!この町は風土が米を育てるのに適しており一味違い上手いのじゃ。じゃが、その上手さを逆手にとり不当に値を吊り上げて一部の者たちだけが利を貪っておった。しかも、町奉行、領主など上に立つ者たちがじゃ!これを機に他の流通も不正がないかよく調べよ!」
「ははっ!」
「良いか。大事なのは良い品を安く消費者が買えるようにすることじゃ。金持ちだけが高くて良い物を買うのでは、良い政とは呼べぬ。全ての民が安心して買えるよう見直すのじゃぞ」
「御意!」
その後、連盟書の四人は厳しく罰せられた。流通も程なくすると以前の半額の値で消費者が買えるようになっていた。
葵たちが商店街に足を運び、おにぎりを買う。
「店主や、おにぎりが随分安くなったのお」
「はい。お求め易くなりましたので、どの店も大繁盛でございます」
「それは良いことじゃ。これ程上手いおにぎり。多くの者に食べてもらわんとのお」
以前よりも店も人も明るくなっている!美味しい物を口にしている者たちは皆笑顔になる!
人々の心からの笑顔を見ながら葵は、もうこの土地は大丈夫だと改めて思うのであった。




