捕り物
椿は早速、変装して商人、越中屋仁平の元で雑用係として潜入していた。
見た目を目立たないよう、よくある顔、着物に変えて地味を演じる。また口数も少なく自己を持たない影の薄い人物に徹した。
名も、和とした。椿は嘘の身分を伝え、住み込みで採用されることになった。
潜入して数日経った頃、仁平が行きつけの料亭、賀茂屋に頻繁に出入りしていることを知る。
椿はまた別の変装をして料亭、賀茂屋に潜入する。名を清として住み込みで雑用係をする事になった。
目立たないが与えられた雑用は素早くこなし、余った時間を情報収集に費やした。
そして、辛抱強く聞き込みを続けていたある日、連盟書の四人が清水川の屋敷で会合することが遂に判明した。
椿は早速、葵のいる屋敷に伝えにいく。
「では明晩、清水川の屋敷で四人が会うのじゃな」
「はい。揃えば買い占めの話題が必ず出るでしょう」
「そうじゃな。これを解決して上手い米を民に安く提供せねばならぬ」
翌日。葵は岡っ引きにも協力してもらい、一網打尽にすることを計画し、夜を待つこととなった。
葵、次郎、椿、良子、藤子は清水川の屋敷の近くに来ると物陰に身を潜め、連盟書の三人が来るのを待つ。
岡っ引きは少し遠巻きから様子見し、確証を得てから踏み込む手筈だ。
まず、四井湯左衛門が門を潜る。
間を置いて、越中屋仁平が中に入る。
さらに町奉行、小佐田弥太郎が入った。
椿が黒装束となり動きだす。
闇に紛れた椿が門番を次々に音もなく倒して行く。屋敷の門を制圧した椿が門を開け、葵たちを中に入れる。
椿が先頭に立ち、障害になる者を倒しながら四人がいる部屋を目指す!
「次回の買い取りだが、もう少し値を上げたいと考えておる」
「と言いますと」
「わしの妻にちと土産をな。これが値をはる物で米の値を三百ほど上げたいのだ」
「そうですか、しかし一気に上げますとその理由を考えませんと」
「それなら今年は不作じゃと、流通を搾れば良い。なに、小売り業者や民はそれでも買うしかない。米が無ければ商売が出来ぬのだからな」
「仰る通りで」
障子が開かれる!
「全て聞かせてもろうた。そなたたちが米を買い占め、値を不当に吊り上げておる輩じゃな」
「なんだこのわらべは!」
次郎が前に出る。
「このお方はナデシコ国の葵姫である!控えよ!」次郎は心の中で、まさに水戸黄門の助さんをやることになるとは、と興奮している。
「葵姫だと!は、ははあっ!」
「農家から安く買い取り、中間業者を幾重に通過させることで尻尾を掴みにくくしおって、しかも清水川、小佐田!そなたらは取り締まる方の役目でありながら、何をやっておるのじゃ!」
「私どももここにおる越中屋、四井に唆されまして‥‥まさかこのような話しになるとは」
「先ほど自ら値を吊り上げたい話をしておったではないか!この期に及んでまだシラをきりたいのかえ!」
「‥‥もはやこれまで‥‥出会え!出会えぃ!」
他の部屋に潜んでいた用心棒たちが出てくる!
そこへ!
さらに潜んでいた岡っ引きたちも現れた!
「清水川、小佐田!越中屋、四井!話しは聞かせてもらったぜ!神妙にお縄につきやがれ!」
両陣営、部屋に庭に入り乱れての大乱戦が始まった!




