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土砂崩れ

 数日続いた雨がようやく止んだ。

 遠くから馬が走る音が聞こえてくる。

 先日、葵が飛ばした早鳥により召集された者たちである。

 「村岡郡司でござる。この度より森を守る役職を賜り、さらに先住民の集落を守って参ります!」

 村岡以下三十名が馬と船を使って馳せ参じた。若者たちが多く、テオのこともあり、同年代の子供も五名ほど来てくれた。

 

 葵は労いながら出迎えた。

 「おお!遠路遥々よう来てくれた!聞いての通りこの土地には先住民がおる。じゃが、年寄りが多く色々不便じゃと思うので長く暮らせる手助けをお願いしたいのじゃ。それとのお、森の中に綺麗な滝がある。そこは彼らのお墓だそうじゃ。これを末代まで守りたい。というのも、本州から移り住む者たちが増え、森を削り開拓しておるようじゃ。このままでは、彼らの滝が危うくなる。なんとか、いや、これを絶対守るのじゃ!」

 「ははっ!我ら三十名、この土地に骨を埋めに参りました!では、早速!」

 「まあ待つのじゃ。藤子がそなたたちのために料理を用意しておる。しばし疲れを癒すが良い」

 

 食事が終わり、皆を森に案内しようと歩き出す。ちょうどテオもやってきて一緒に行くことにした。

 テオは何事だろうといった表情をしていたが、葵から、村や森を守る人たちだと説明すると、笑顔を見せて身振り手振り歓迎してくれた。

 

 滝まで来ると村岡たちが、そのあまりの美しさにどよめく。

 「なるほど。これは末代まで残さねばなりませんな」と村岡がテオに微笑んだ。続けて村岡が葵とテオに話しかける。

 「しかしながら、森自体の間伐が必要ですな」

 「間伐とはなんじゃ」

 「ご覧ください。育っている木は老木が多く、下の木が育っておりません。これは老木ばかりが増え、日差しが下まで届いていないからでございます。このままでは、森は年寄りだらけになり、全て枯らすことになってしまいます。それで、日差しが届くように調整して木を伐るのです」

 

 テオは木を伐ると聞いて心配している。葵が深く聞いてみる。

 「それは自然を壊すことにならぬのか」

 「はい。むしろ強くなります。老木を伐り、日差しを与える事で若い木が育ち、根がしっかりします。また土地を甦らせますので、土砂崩れの心配も少なくなります」

 「ほお。テオよ、木を伐るのは悪い事ではないようじゃ!むしろ森を強く守るためにしなければならぬようじゃ。とはいえ、村人の理解も必要じゃ。後で説明をしに行こう」

 

 ダエンの話では本州から来た移民たちは、森の下の土地に住んでいるらしい。

 徐々に開拓していき、今では百名を超える村となっている。

 村のそばには川も流れ、飲料水、洗濯、食器洗いに使っているようだ。

 

 突然、テオが慌て始める!

 「なんじゃ!どうしたというのじゃ!」葵も突然の反応に困っていると、辺り一帯に地震が起きる!

 「皆、伏せるんだ!立っていると転倒する!」次郎が叫ぶ!

 葵とテオは身体が大きい五郎が守っている!他の子供たちもそれぞれ近くにいた大人が守っている!

 ほどなく地震が治まる。

 「余震が来るかもしれない!足元に気をつけて屋敷まで戻るぞ!」と、次郎が指揮して戻りかけた時、少し先で地滑りが発生した!

 みるみるうちに傾斜に沿うように木が、地面がずるずる下へ落ちて行く!

 こうならないように間伐をしなければならないのだが、今はそれどころではない!

 

 テオがさらに慌てている!葵や、五郎の着物を引っ張り、地滑りした場所の下へ行こうと促している!

 どうやら、本州人の村がそこにあるようだ!

 地滑りが治まると、テオは先に下へと走っていく!

 「テオ!待たぬか!‥‥皆の者!来てもらって早速の大仕事じゃ!急ぎ下に向かい、人命救助を行う!良子は与平を、藤子は雲じいに屋敷を下に移動するよう伝えて参れ!」

 

 慎重に下に降りて行くと、村の四分の一ほどが埋まっているようだ!絶望的な光景に目を疑う!

 生き残った村人たちをさらに奥へ避難させる!

 男たちが力を合わせて流れた木をどかしていく!

 

 テオはどこに行ってしまったのか!

 葵が、次郎が必死に探す!

 生きている者は!

 






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