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葵姫との出逢い

 太助と次郎が暗闇の中、屋根伝いに城へ向かって走っていく。

 「城に行くのは初めてだが、経験で見張りを多めに配置している場所が怪しい」

 太助はそうにらむ。

 次郎はさすがに城を襲うのは危ない気がしていた。それに王自身は悪どい事をしているかどうかは分からない。

 ただ、貧困が無くならないのは王の責任なのも否めない。太助はそれを大義名分として城を目指す。

 さすがに城の警備は隙が少ない。外壁から見張りが多数配備している。

 遠巻きに警備の薄い場所を探してみる。そこを手掛かりに侵入しようということになった。


 すると、城の裏側にも結構な屋敷が広がっているのが見える。ここは何の屋敷なのだろう。

 城の裏に隠れた屋敷。

 庶民には存在さえ普通は知られる事はない。

 そこは大奥と呼ばれる女だけが住まう屋敷だ。

 見張りも女しかいない。

 太助はここから侵入をすると次郎に伝え、人気のない壁を乗り越え侵入した。

 闇に紛れながら屋敷の屋根に登る。


 屋敷の西側、やや見張りが多い。太助はここが怪しいとみる。

 瓦を剥がして中に入る。

 天井裏には何もないようだ。


 慎重に身を屈めて進んでいくと、突然次郎のいた床がはずれて、次郎は部屋に落ちてしまった!

 

 そこには幼い姫が一人で座っていた。

 次郎は逃げようとしたが、何故か身体が動かない。

 「おお。そなたは泥棒さんかえ。済まんなあ、小判はここには無いのじゃ」

 上にいる太助は一向に逃げない次郎にやきもきしている。

 次郎は何故動けないのかパニックになっている!

 「姫!何やら曲者が入った様子!入りますぞ!」と女見張りの声がする!

 「心配なさるな。そなたはわらわが救うてみせる」とニコと笑った。

 

 女見張りが部屋に雪崩れ込む!

 太助は次郎を気にしながらも屋根の上に一時逃れた!次郎は必ず取り返す!

 「姫様!ご無事で!こやつは、何者じゃ!」

 見張りが薙刀で威嚇する!

 次郎は動けないのもあり、観念して目を閉じる。

 「皆、安心せよ。薙刀も納め。この者は天が遣わした、わらわと旅をする者じゃ」

 姫はそう言ったがいきなりの曲者が現れて信じられるわけがない!

 「姫様、曲者ですぞ!何ゆえそのような事を!」

 「大丈夫。この者はわらわを害する事はない。そうじゃろう」姫が次郎に話しかける。

 「この者は旅先できっと役に立つ。たとえ、父上母上が反対なされても、わらわは連れて行くぞえ」

 

 見張りは、これは手に負えないと、王と王妃を呼びに向かった。

 

 ほどなくして、王と王妃が現れた。

 山田のいた江戸時代でのトップといえば征夷大将軍だが、この世界にはそんな役職は無いらしい。

 天皇もいない世界なのだ。

 姫は見張りを下がらせて父上の王と母上の王妃に話す。

 「父上母上、お騒がせしまして申し訳ありませぬ。天啓がございました。この者は天が遣わした、旅の共にございます」

 「葵‥‥」

 姫の名は葵というのか……

 次郎は命の危機なのにそんなことを考えていた。

 

 「その者は賊であろう。共に旅など‥‥」

 王妃も心配して葵姫を見ている。

 「父上母上、この者はきっとわらわの‥‥を盗んでくれる。お願いします。わらわのわがまま、お聞き訳下さいませ」

 次郎は肝心なところが聞こえなかったが、王と王妃が何か納得している表情を見せる。

 「分かった。この者の同行を許す。出発の準備は整ったのか」

 「はい。明日旅立ちます」

 「そうか。済まぬ、これ以上は‥‥いや、また明日だ」

 王と王妃は、おやすみと声かけて城へ戻っていった。

 

 「ふう~。そなた、そういうわけでわらわと旅をするのじゃ。よいな」

 次郎はまだわけが分かっていない。身体は動けるようになった。逃げる事も出来る。

 しかし、何故か逃げてはいけない気がして逃げられない。

 まさか、オレがこの世界に来たのはこの姫と旅をするためなのか‥‥

 思えば太助との義賊活動には疑問を感じていた‥‥

 オレはもっと立派な職に就いて仕事をしたい‥‥

 太助には悪いがオレはこの姫と旅をきっかけに真っ当になりたい‥‥

 

 次郎は葵と出逢い、本当にやりたい事を見つけたくなったのだった。







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