第0話 恩返しの始まり、始まり
――変わりますよ、あなた。
日本という国の絆市と呼ばれる町に1人の心優しい真面目な男がいました。
彼の名は寿周助。
平凡な顔立ちと四角いメガネが特徴の24歳。
身長176センチ、69キロ。今年大学を卒業したフリーター。ちなみに独身、彼女なし。
彼は運が悪い。それは幼い頃からだが、近年特に激しくなっている気がする。――いや、なっています。
今日だけで天気予報は外れ一時雨。電車には乗り遅れ派遣の仕事に遅刻。仕事の帰り道で犬のしっぽを踏んで吠えられてと踏んだり蹴ったり。
ため息をついて電車を待っていた時、ふと数日前にもらったチラシを思い出しました。
そこにはこう書いてありました。
「運命を変えたくありませんか?あなたは運がいい。お代は必要ありません。気になったならまたこちらにいらしてください」
バカらしい……となぜか思えませんでした。むしろ今行かなければ後悔するとさえ思ったのです。
指定された場所に行くと数日前と同じ格好をした女性が机に水晶玉を乗せて座っていました。
そこで彼女は言いました。
「ようこそ、周助様。あなたは選ばれました。こちらをお受け取りください」
それは緑色の宝石――いえ、ガラス玉でしょう。
それを周助に手渡しました。それと同時に煙幕が現れ、次に目を開いた時には綺麗さっぱり消えていたのです。
夢だったのか?と手を握ると、それを否定するように手の中には緑色の玉がありました。
こうして彼の運命はゆっくりと変わり始めました。