27:『ワカラセ』
それは夢のような、ふわふわとした時間でした。
別世界を見せられ、疲れ果て、ベッドの上でウトウトとしていましたら、ラルフ様が私に背を向けた状態でベッドに座り、頭を抱えていました。
「あーくそ。やらかした。アホだ俺」
たぶん、ラルフ様は私が寝ていると思っているのでしょう。
『俺』という言葉にドキッとしたものの、『やらかした』の言葉が脳に届いて、息が止まりそうになりました。
「もっと優しくしたかったのに。色ボケばばぁのせいだ。くそ」
ラルフ様は、頭を抱えたまま、ボソリボソリと呟き続けています。
「あーくそ。イレーナが可愛過ぎる。…………オイ、元気になるなよ」
何が元気になるのでしょうか?
「あー。あー。どうしよ。ワカラセとか最悪だろ」
先程から、よくわからない単語が飛び出ているのですが。つまりは、このことを後悔されているのでしょうか?
「はぁぁぁ。イレーナ…………好きだ。嫌わないで。信じて。愛してる」
顔を見なければ言えるのに。
そう呟かれて、トイレに向かわれました。全裸で。
筋肉質な背中、長い手足、引き締まったお尻。
先程の事を思い出してしまい、顔から火が出そうです。
シーツに包まり俯せで悶えていましたら、ラルフ様が戻って来られました。
「無理させてごめん」
そっと後頭部を撫でられました。
「奪ってごめん」
何かを奪われた記憶はないのですが。
「逃してあげられなくてごめん」
ずっと謝られます。
「一生、君だけに愛を誓う」
それは、贖罪の気持ちで?
「初恋は、叶わない。なんでそんな言い伝えがあるんだろうな? 君が起きたら、この恋は終わるのかな?」
――――はつこい?
「は、初恋ぃぃぃぃ⁉」
びっくりしすぎて、勢いよく起き上がってしまい、後頭部でラルフ様の顔面を激打してしまいました。
ベッドの上で、全裸シーツ姿で、正座してラルフ様に説教されています。
服、着たいです。
「君は鼻に恨みでもあるのか」
「特にはありませんです、はい…………」
何故か、ラルフ様の鼻目がけて後頭部が吸い寄せられまして。
「私の鼻息はそれほどのもの、と」
「ひえっ、ちが――――」
そこでハタリと気付いてしまいました。
「あら? 『私』? 『俺』は言わないのですか?」
「っ! 聞いてたのか⁉」
恐る恐るこくりと頷くと、ラルフ様のお顔がボンっと赤く染まりました。
焦りながら必死になって弁明するラルフ様が、可愛らしくてキュンキュンします。
幼い頃は『俺』と言われていたそうですが、少年といえる年齢になり、騎士団に所属するようになって、『私』というようにしていたそうです。
ですが、心の中では『俺』が時々出てきていたとのことでした。
そして、ついでだからと言われたのが、『照れてしまうと、どうしても素っ気なく強気な態度』をしてしまうそうです。
――――天然のツンデレ⁉
次話は、19時頃に投稿します。
本日は、複数話を投稿後に完結の予定です。




