21:覚悟。
ぽろぽろと落ち続ける涙を手の甲で拭っていましたら、ラルフ様が隣でおろおろとし始めました。
「いっ…………嫌だったか? また何か嫌なことをしてしまったのか⁉」
「っ、ちが、違います。ラルフ様を好きになって良かったなって。ラルフ様は、なんて素敵な人なんだろうなって」
犯人だと思われていた間も誠実で丁寧な対応をしてくださっていました。
誤解が解けて、このような状態になっても、心配のみで、一切馬鹿になんてされませんでした。
ただただ、素敵な人でした。
恋するのは必然でした。
そんな方に想いを告げられ、両想いになれるなんて。
なんという幸運なのか。
そう思ったら心が温かくなり、感極まってしまったのです。
ラルフ様が急に抱きついて来られました。
「イレーナのほうが素晴らしくて、清らかで、誰よりも美しい」
「あ、はい。ありがとうございます……」
「…………」
感謝の言葉を伝えましたら、ラルフ様が抱擁を解き、ジッと見つめて来られました。
「…………」
「ラルフ様?」
「何故、素に戻った? さっきまで頬を染めてたのに」
「へ?」
どうやら、無意識のうちに素っ気ない返事をしてしまっていたようです。
明らかに私より見目の良い方に『美しい』と言われて、スンッとなってしまったのは否めません。
あと、少しだけ頭を過ぎってしまった『ラルフ様とお付き合いされたことがある女性』のこと。
ラルフ様ほどの方です。
婚約者様とまではいかなくても、お付き合いされていた方などがいたのではないのでしょうか?
…………だって、何だか手慣れていらっしゃいましたし。
「な、何故そんなに剣呑な空気を醸しているんだ……」
「あ、いえ。ラルフ様の女性遍歴に思いを馳――――」
――――あ。
物凄く口が滑ってしまいました。
ラルフ様のお顔が見る見るうちに不機嫌なものになっていきます。
「…………ふぅん?」
「あ、あの――――」
「今日はもう寝なさい」
ラルフ様が真顔でそう告げると、スッと立ち上がり部屋から出ていかれました。
そして、ドアを締める直前、後ろ姿のままで宣言されました。背筋が凍りそうなほどの低い声で。
「明日から、覚悟しておくといい」
あ、明日から、一体何があるのでしょうか⁉
何が起こって、私はどうなってしまうのでしょうか⁉
謎が謎を呼び、目がギンギラギンで、全く持って眠れませんでした。
――――朝になっちゃったぁぁぁぁ!
次話は、明日19時頃に投稿します。




