19:選択を間違えたラルフ様。
コンコンと控えめなノックのあと、ラルフ様の柔らかい声が聞こえました。
「イレーナ、御父上には一旦引き上げてもらった。それから、君の実家と商店には騎士団から警備を送った」
「……」
「イレーナ。君を、君の大切な人々を傷付けてすまない」
ラルフ様の何かを堪えたような声が気になって、そっと扉に近づきました。
「イレーナ、扉の前に来てくれたんだね」
「っ⁉」
何故か言い当てられてしまい、キョロキョロと辺りを見回したのですが、誰もいません。いえ、まぁ、それはそうなのですが……。
騎士たちはそういった人の気配などを察知する能力が高く、訓練もしているとのことでした。
「君の穏やかな心根が、話しているだけでいつも伝わって来ていて、一緒にいると安心できた。その君が心を痛めている。だから、それを解決したかった。私が、取り除いてあげたかった。私は選択を間違えたようだね」
「…………大嫌いです」
「ん。でも私は愛しているよ。もう君を手放そうなんてしないから……顔を見せてくれないかい?」
そんなことを言われたら、部屋から出ざるを得ないではないですか!
ゆっくりとドアノブを回し、扉の隙間から廊下をそっと覗きましたら、扉の隙間から節ばった手がガッ! と入り込み、ガッチリと扉を握られてしまいました。
「イレーナ」
ラルフ様が扉を全開にし、私の首の後ろに右手を差し込んで、グイッと引き寄せて来られました。
ぽすんと彼の胸に抱き着く形になり、慌てて離れようとしたのですが、腰をガッチリと抱き留められていて、逃げられそうにありません。
「ラ……ラララルフさま?」
「ん?」
「あの、お顔が……その、とても…………」
先程までは赤く腫れていて、もしかして? という程度だったのに、今は明らかに腫れているうえに、目元辺りまでそれが広がっています。
「気にしないでくれ」
――――いや、あの、気になります!
腫れている頬にそっと手を当てましたら、物凄く熱くなっており、驚いて手を引こうとしましたら、ラルフ様に手を握られ止められてしまいました。
すり、と私の手で頬を撫でるように触れさせたあと、「冷たくて気持ちいい」と仰られました。
冷やしましょうと言っても、聞いてくださいません。
「嫌だ」
「ええぇぇぇ?」
「…………これは、君を手に入れるための勲章だから」
プイッとそっぽを向き、ちょっと照れくさそうに唇を尖らせたラルフ様は、胸がキュンキュンするほどに可愛かったです。
次話は、明日19時頃に投稿します。




