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666


 まりえは、植物人間になった広志ひろしの事を思っていた。

 私のいくじなし!

 ちゃんとバラバラにしてあげられたら生きながらの死体にならなくとも良かったじゃないの。

 でも、、、。

 あんな目で、私の事を「美しい」と言ってくれた。私には出来なかった。

 666体目の記念すべき獲物を愛してしまったのだから。

 結婚した時も、時より悲しそうな目をしていた。

「ゴメンね。殺人鬼なのに殺せなくしちゃって」

 でも、不思議だけど。

 殺したい気持ちが湧かなかった。

 朝食の目玉焼きに感激してくれた人。

 殺人課の刑事なのに底が明るいというか、朗らかというか、とても暖かくて。

 夕陽みたいな人。

 私みたいな人間でも、優しく暖かくオレンジ色につつんでくれる。

 昨日も殺した相手は、千葉コーポレーションとか言ってだけど。

 それは、じっくりと取り掛かるとして。

 恐怖って、ビーフシチューと同じじっくり煮込まないと。

 そうそう、広志さんは、死ね!っていう手紙をにこやかに見せてくれた人だったわ。

 そう、この手紙、何処から来るのかしら。

 この文字って、手書きよね。

 かなり、字が綺麗。

 今どき、書道で死ね!

 宛名無しだけど、わりと良い封筒が使われていた。

『杉浦まりえ、これから、この手紙の主を探します!』

 可愛い悪魔の微笑みだった。

 子供頃から私は不思議と悪い奴を惹きつけてしまう。

 初めて殺したのは、小学生の頃、小児性愛の男だった。

 中学の頃は、隣のクラスのイジメっ子、また、隣のイジメっ子と。学校中のイジメっ子。高校生の頃は、盗撮教師、痴漢、デートと見せかけて薬で輪姦する奴らを。

 大学に入っては、サークルの宴会と称してお酒で潰れるまで飲ませて、後は、やりたい放題の連中。私は酒は底なしの強さなの。

 あーあー素敵な青春だった。

 悪い奴らが集まってくるの!

 1人の時もあれば2人、3人。

 アイツらが宴会で儲けた数千万の金は、私の殺しの貯金に入ってるので。

 どれにしようかなぁ♪って歌いながらバラバラ。しまいには。

『早く殺して下さい』

と哀願されちゃって、テンション上がるわよね。

 OLになった頃にはストーカー被害もどきに遭った。

 そのストーカーの写真、それも、吊り革に捕まった手だけを手掛かりにあの人は私にたどり着いた。

 私は、そのストーカーさんのターゲットでは無かったけど。私の手を写真に撮られるのは許せなかった。

 指を全部、切断してくり抜いた目玉に、左目にポケットWi-Fi と右目には、小型カメラや盗聴器を詰め込んだわ。

 たくさんの人間を血祭りにあげた神聖な私の手だ。

「可愛い手ですよね」

 駅の構内で話しかけられた。

「初めまして、杉浦と言います。これでも刑事なんです」

「えっ」

としか言いようがなかった。

 驚いた。

 今までの犯行を見透かされた瞳だった。

「お時間、宜しいでしょうか?」

 向き合うと少年みたいな丸い瞳だ。

「はい。あの。家が近くなのでそこで」

 早目に殺しておこうと思った。

 刑事は普通は相棒と一緒だ。

 1人となるとまだ、誰にも私の事を話してないはずだ。

 たぶん。

 隣に歩いていると、変な感じだ。

 時おり、微笑むこの人がこれから殺されるなんて、、、。

 アレ。

 変な私。

 初めて会う人なのに、妙に懐かしい。

 前世で、殺した相手なのかなぁ。

 心がふんわりする。


 

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