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テロリストB

作者: 黒楓

「ランジェリーショップの店頭に掛かっている2点セット¥2,980を着けている女性ってどんな気持ちなんだろう?」


いきなりこんな話を振られて、オレは口を付けた生ビールの泡を吹いてしまった。


「な、なに??!!」


「だからー『店頭に掛かっている2点セット¥2,980を着けている女性ってどんな気持ちなんだろう?』ってこと」


「いやいや繰り返さんでも…オレに分かる訳ないじゃん!! 男なんだしさー!」


「じゃあ、キミのカノジョさんに聞いてみてよ」


「そんな彼女なんていねーよ」


「あー、怖くてカノジョさんに聞けないんだ!!」


「彼女そのものが居ないよ」


「どうだかなー ()()()と見るとオトコは平気で嘘つくからなー」


オレは自分の視線が見透かされたような気がして慌てて、でもなるだけぎこちなくないように…視線を外す。

だってさっきから胸ぐりと肩が大きく開いた白のワンピからチラチラ“見えてる”から…


で、

「ヤれるってなんだよ!」

心外だと言うニュアンスで言葉を返すと…


この目の前の…『同期』さんは…ビールをひとくちコクン!と飲んで小首を傾げてみせた。

「何、それ?」



土曜日の昼下がり…オレたちはさっきのプレゼンの打ち上げをしていた。


華やかな風貌と人好きする性格のカノジョの事は…入社前の“Z●●m”研修の時から気に掛かっていた。そして入社式で初めて見かけたカノジョは…“Z●●m”でのギャラリービューの時以上にひときわ眩しかった。


そんなカノジョは当然、営業部に配属され、オレは…大学での専攻が加味されて販売促進部の配属になった。


そのカノジョが初めて一人でまとめ上げた案件で…決して大きな物件ではなかったから…プレゼン資料の作成が新人のオレに回ってきたのだ。


で、“休日返上のひとりプレゼン”じゃなにかと大変だろうと、オレも付き合って得意先へ…

無事成約の瞬間をカノジョと味わう事ができて…ふたり高揚した気分で、()()()()()()()()()()で打ち上げと相成ったのだ。


で、カンパイのグラスをカチン!と当て、クイ!と飲んだカノジョの次の一言が…さっき成約した案件の話でなく…これだ。

不意付かれちゃうよね、これ。しかもカノジョ、ドンドン自分のペースで話を進める。


「じゃあさ! キミが女の子だとしたら…まあ、オトコでもいいけどさ。いや、やっぱりキモいから、それは無し!!… キミのカノジョがその下着を着けていたら…どう思う?」


「えっ! いや別にどうとも…」


「キミが見る前にその下着は…店の前を行きかうたくさんの人々の目に晒されていたんダヨ」


オレの頭を一瞬、このワンピの“下”が覆い尽くして…オレは目をしばたたかせる。


「それを…どういう経緯で買ったか知る由も無ければ、どうとも思わないんじゃない?」


「なるほど、そうね。じゃあ私はヘタ打ったんだ」


「ええっ?!」


「だって、それ、私の事だもん! 昨日さ! 帰りに出会っちゃたのよ。一目ぼれで買ったの! で、今日着けて来た。ショーブ下着ってヤツ! こんなのを勝負下着にする私は駄目かなあ…ちなみにこのワンピも“¥2,980”だよ」


ああ分かった!! 今日の商談相手だ!!! 

若くして課長になったっていう…いかにもバリバリこなせそうなイケメンさんだった…


カノジョ、土曜日の商談だからイメージ変えてアプローチした?? それとも“個人的”にも??


あの人、言ってたもんな


「私も独り身だから、平気ですよ」って


そっか! 色んな意味で平気なのか…で、カノジョはそれを承知でアプローチ掛けたけど…こちらの方は未だ“成約”ならずで終わったんだ。


なるほど!それなら分かる!さっきのカノジョの一言!!


だとすれば…この打ち上げは…半分は残念会なんだから、フォローしてあげなくちゃ。

…良かった!危うく勘違いで“アツク”なるところだった…


「いや全然イケてるよ! 今日の服! むしろ何と言うか…新鮮!! いつもはビシッとスーツ着こなしていて…時計とか身に付けているものも他の子とは違うから…」


「ああ、“タンク ルイ”はね…キャンギャルやコンパニオンのバイトやりまくって買ったんだよ。あれも一目で惚れこんじゃったの!! それがたまたま100万越えだっただけ! 私の中では、この下着と同じ…」

と、胸に手を当てるものだから

“柄”まで見えそう…それと…オトコの目を惹く危険な谷間が…


オレ、必死に視線を気持ちを外へ向けて言葉を返す。


「まあ、そんなに気を落とさないで…」


ホント!大丈夫だよ! 今日はオレがくっついて行ったから不成約だっただけ!今度、二人きりの商談なら間違いない!


でも、その言葉にカノジョは絡んでくる。


「何で気を落とさなきゃいけないわけ? 商談まとまって打ち上げしてるのに!」


慣れていないやり取りにオレはたじたじする。


「ん、そうだよね! あれっ?! なんだろな? 話…どっか行っちゃってるね。そう!キミ自身はどういう気持ちなわけ? そうやって買った物を身に付けて」


「痒い!!」


「えっ??!!」


「アルコール入ると余計に痒みがマシマシ!! バリバリ掻きたくてしかたがない!!」

そう言いながらカノジョ、ワンピの袖口に指を滑らそうとする。


「ちょい待って!! ヤバいでしょ! それ!!」


「でしょっ?!!! 絶対、お店のダニがくっついてたんだ。 私の部屋、自慢じゃないけどいつ誰が来てもいいように掃除怠らないもん!! 洗濯だってマメにしてるもん! 買って来てそのままのを着けてたんだから、それ以外考えられない!!」


「いや…そう言う意味のヤバいじゃなくて…今日は暑かったから…それでかもしれないし…」


「ひどい! キミはお店の肩を持つんだ。目の前にいる、この可哀想な私の肩よりも…」


「いや、違うって!!」


「違わない!!」


「いやいや、店の肩とかそういうのじゃなくて…」と声を細めて「ここでする話じゃないよ」


カノジョ! ガタン!とジョッキを置いてむくっと立ち上がった。


「言ったわね!!」


「えっ??!!う、うん…」


「じゃあ責任取ってよ!!!」


「責任??…って?」


カノジョ、オレの脇の下に自分の腕を巻き込んでオレを椅子から引き上げた。


「場所変えるからアナタの目でダニに噛まれたかどうか確かめて!!」



こうして『同期』…蜂谷さんに引っ張られてオレは店を出て…昼下がりの“ご休憩”に入ったのだった…




黒楓が書く“可愛らしさ”はこのくらいが限界です…(^^;)



ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>

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― 新着の感想 ―
[良い点] 匠の技ですね!(笑)
[良い点] 面白かったです。 お話に勢いがありました。 会社の業務内容などもリアリティがあって良いです。 2980円のセットアップブラ、という着眼点が光っていました。
[良い点] 積極的(*´艸`*)
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