バザーのお菓子
「セリーナお嬢様は、型抜きをしてくださいますか?」
週末は王都の屋敷に帰ってきます。家族に学園の話をしたりして過ごしました。
そして侍女とお菓子作りの練習をしようとしたところ、数人のメイドとコック長が手伝ってくれる事になりました。
私が言い出した事なのですがお菓子を作った事はありませんし大人しくプロに習いましょう。
見た目は可愛らしいお菓子ですけれど作るには大変で、材料を計ったり刃物を使ったり力仕事もあるのですね。
知りませんでした! 発見ですわ!
椅子に座って作り方を見学しているだけでも、とても面白くて勉強になりますわね。
と言うところで、クッキーの生地が出来たようで声が掛けられたのです!
「型抜きってどうすればいいのかしら? 教えて貰える?」
まずはエプロンをつけて、手を洗いました。
「クッキーになる生地を伸ばしているので端からこのように、」
侍女が人の形になっている型を生地に押し付けました。
「こうして、ぽんぽんぽんっと押していくのです。生地にもう型がおけなくなりましたら、余った生地を取って丸めて伸ばして型を抜く、数回この作業を繰り返します」
とても手際がいいわね。私に出来るかしら? 見ている分には簡単そうに見えるにだけど。
「そう言う仕組みなのね! 余すことなく使えるという事ね!」
侍女に習って型を押し付けました。力加減がわからないけれど作業は楽しい。
「お上手ですよ! お嬢様」
型を抜き始めて数十分、ようやく全ての型抜きは終わり、オーブンに入れて焼き上がりを待つのだそうです。
「楽しみね!」
「お疲れさまでした。クッキーの焼き上がりを待つ間、お茶にしましょう。その後はラッピングの練習を致しましょうね! 可愛らしくラッピングをして販売した方が喜ばれる事でしょうし売れ行きもいいでしょう」
そこまで考えが及びませんでした。
そうだわ! クッキーを焼いてサムさんとダニエルさんにお渡ししましょう。当日は販売をして貰わなくてはいけませんものね。どんなクッキーを販売するか実物を見ておいた方がよろしいですわね。
週明けにいつも通り学園へ行きました。
「サムさん、ダニエルさん、おはようございます。昨日クッキーを作ってみましたの! ……と言っても私は型抜きをしただけですけれども。当日はクッキーとアップルパイを販売しようと思います。宜しかったらご試食してみてくださいな」
ラッピングをしたクッキーを二人に渡したところ、とても驚いた表情をしています。
「え! セリーナ様がお作りに……」
「光栄です! 僕たちがいただいてもよろしいのですか!」
「もちろんですわ。当日は販売をお願いするのですから、どんなものか知っておいた方が宜しいでしょう?」
「「ありがとうございます!!」」
お二人とも快く受け取ってくださって安心しました。
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「セリーナはまだかなぁ」
サロンでウロウロとするジェフェリー。
コンコンコンとノックする音が!
「来た!」
側近の一人が扉を開けに行く。
セリーナの前で緊張して話ができなかった時は側近がフォローしてくれる。頼りになる存在だ。
「えっと……ジュリアナ嬢? どうされました?」
「え? ジェフェリー殿下からご招待をいただいたのですけれど……」
「ほぅ? それはどのように?」
「これです! 私の机の上に招待状が置いてありましたもの」
「……少しお待ちを!」
「殿下! 招待状はセリーナ様の机の上に置いたのですね?」
「当たり前だろ! 教壇の真ん中前から二番目」
「……殿下、セリーナ様のクラスは席替えをされてセリーナ様の席は窓側の席に移られました!」
「なんだって!」
「招待状は間違えてジュリアナ様の机に置かれたのでしょう。間違いとは言え、帰すことは出来ません。こちらのミスですから失礼に当たります」
招待して間違いだったとは言えない。そういえばセリーナから返事が返ってこなくておかしいと思ったんだ……
「それはそうだが……せっかくのセリーナとの時間が」
「次回はお間違えのないように! 本日はジュリアナさんとお茶を…… 適当に楽しませて帰ってもらいましょう。世話役として誘ったと言う事にしておけば、周りから不思議に思われることはないでしょう」
「……わかった」
がくりと項垂れるジェフェリーだった。