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ランディ侯爵



「セリーナ! 無事か!」


 セリーナの父であるランディ侯爵が娘が怪我をして王宮に運ばれたと聞き駆けつけてきた。



「お父様、ご心配をおかけしました。大した事ないので平気ですわ」


 お父様は駆けつけるなりジェフェリー様を睨みながら言いました。



「セリーナの怪我は元々殿下がセリーナに対して煮え切らない態度をしていたからでしょう!」



「侯爵のおっしゃる通りです。面目ありません」



 顔面蒼白とはこの事を言うのでしょう。お父様はジェフェリー様にタラタラとお説教をはじめました。王子殿下にお説教って……こんなお父様の姿を見た事がありませんでした。



「お父様、もうその辺で……ジェフェリー様のお気持ちはもう十分伝わりましたの」




「あぁ、セリーナ可哀想に……来るのが遅くなってすまなかった。来客があってどうしても外せなかった」


 お父様が辛そうな顔をしていました。そんなに大した怪我ではないのに、申し訳ないですわ。



「お仕事を優先してください。気にしていませんよ。ご心配おかけ致しました」



「怪我の具合は? 医師はなんて言っていた?」



「数日の安静だそうです。念の為の固定で見た目は痛々しいですが大したことありませんのに、皆さん大袈裟なのですわ」


 

 足を少し捻っただけなのに、みんな大袈裟というか……二、三日で治りそうな感じですのに、反論は許されませんでした。



「そうか。十日後にはデビュタントがある。それまで安静にしてなさい。さぁ帰ろうか」



「侯爵! ちょっとお待ちください! セリーナは安静ですよね! 後遺症が残ってはいけません。このまま王宮で安静にしていてください。国一番の医師もいますし、ここの方が安心です!」



「いや、家の方が落ち着くでしょう」



「お願いします。安静です! セリーナこの部屋を好きに使って良い、何か足りないものがあったらすぐに揃えさせるから、ここにいて欲しい。頼むからっ」



 こんなに必死で言われたらお断りすることは難しいですね。



「お父様……よろしいですか?」





「う……む。仕方がない」




 お父様も断ることができなかったようでしたので、しばらくお城で生活をする事になりました。お妃教育の座学をしたり、王妃様とお茶会をしたり、毎日ジェフリー様と過ごしました。



 王宮で働く人の中には平民出身の方がいらして、皆さん学園を好成績で卒業された方ばかり。今の陛下になってから平民の方を積極的に採用するようになったのだそうですわ。



 国を語る上で平民の暮らしで役立つ事も多く、一般目線での意見も大事だとおっしゃいました。


 たくさん税金を納めて、国を支えてくれている貴族は大事な存在だけど、平民を蔑ろにしては国が成り立たないとの事です。


 平民出身の方で、貢献度が高い方は貴族の位を与えられて大臣補佐官にまで出世した方もおられるのだそうです。



 私も負けてはいられませんわね!




******



「怪我の具合はどう?」



 ランチを一緒にとジェフェリー様が私に用意してくださった部屋に来ました。



「だいぶ良くなりました。包帯も取れましたよ。右腕がまだ少し……ですけど、治りましたら私もジェフェリー様のお手伝いをさせてくださいね」


 歩くと少し違和感はありますが、痛みはありません。右腕は動かすとまだ少し痛みが走ります。



「良いの? 意外と大変なんだよ」



「少しずつですけれど、ジェフェリー様のお力になりたいのです」



「ありがとう。助かるよ」



 ジェフェリー様はあの告白以来、二人で過ごす時はかなり私を甘やかしてくれるようになりました。


 まだぎこちないところもありますけれど、とても優しくしてくださいます。


 側近の方と話をする時や、他の方と話をしている姿を見ると皆さんから慕われている事がよく分かります。



 昨日は大臣がジェフェリー様の執務室に来てお話をされている様子を見ますと、お仕事も優秀なんだと見ていて嬉しくなりました。



 思っていたより安く上がった工事費で市民の教育の場を増やすと言う話をされていました。例の教会を参考に下見へ行くとのことでしたわ。学びたい市民のために教育の場を設けるなんて素敵なことですもの。



「セリーナ、聞いて欲しい事がある」


 急に真面目な声のトーンになりました。



「はい」



「セリーナに足を引っ掛けたあの生徒の話なんだけど」


 ジュリアナ様? あれ以来学園はお休みしているのでその後の事は知りませんでした。



「ジュリアナ様がどうかされましたの?」



「学園を退学になった」



「まぁ! まさか! まさか私のせいで……」



 カトラリーを置きました。私の行動で一人の人生を変えてしまう事になるなんて……ジュリアナ様は優秀な方ですから、将来は王宮で働いていたかもしれませんのに……王宮は憧れの職場ですもの。



「あぁ、それは全く関係ないよ。成績不振がまず理由だ。とても口に出せるような成績ではなかったようだよ。一般の生徒のボーダーラインの遥か下だった。遅かれ早かれ退学になっていたよ」



「まぁ! そうなのですか」



「学園にはルールがあってそのルールを守らなければ退学になる」



「はい」



 入学の際に学園の規則を読みサインをしましたわね。



「成績のこともあるが、セリーナを怪我させた事や、侮辱する行為、そして反省が見られなかったとの事だ。学園長から説明を受けた」




「学園長様がそのように判断されたのなら、仕方がございませんわね」



 学園長様は王族です。国の将来の為に優秀な平民を学ばせたいと陛下と話をされて、学園の事を一任されています。


 学園長様はとても人格者であり、教育熱心なお方ですもの。学園長様が決めた判断に異を唱えることはもちろん致しません。



「それで…………フロス商会がまた……」



「なんですの?」


 歯切れが悪そうです。フロス商会といえばジュリアナ様のご実家。最近世間を騒がせています。



「違うゴシップ誌に事実無根の事を証言したんだ」



 バサっと新聞紙を出してきました。




【王立学園の学園長はワンマンだ!】


【王太子と平民の身分差婚を阻む権力】


【王都一のフロス商会の経営を邪魔するランディ侯爵を許すな!】


【王太子の婚約者は贅沢病で税金を搾り取っている】


【ジュリアナ嬢の強制退学の裏側】




「まぁ……! この記事を市民は信じて喜んでいますの?」




「いや。そっぽを向いている」


 そう言ってジェフェリー様は笑いました。



「違う新聞だ。これはちゃんとした所が発行しているから信頼度も高いよ」



 別の新聞を出してきました。




【フロス商会で働いていたAさんが告発!

フロス商会で起きていたこと────】











明日も2話投稿します。最終回となります。


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