表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/30

ジュリアナ

「お父様! これニセモノなのっ!?」


 とてつもない勢いでジュリアナが商会にいる父の元へとやってきた。急な事で驚くジュリアナの父。



「ジュリアナ、学園はどうしたんだ?!」



 学園は許可なく外出してはいけない規則になっている。校則違反に当たる行為だ。



「そんな事今はどうでもよろしいのです!! それよりも、これ! ニセモノを渡してくるなんてどう言う事! お父様のせいで恥をかいたのよ!」


 例の髪飾りをドンッと音を立てて机の上に出した。


 今思い出してもムカムカする! あのすました顔! ちょっと美しくてちょっと身分が高いだけじゃないの! 侯爵家の令嬢じゃなかったら価値ないわよね!



「何を言っているんだ? イミテーションに決まっているだろ? こんな大きなエメラルドはたとえ王族でも中々手に入らない品物だ。うちで仕入れた商品をジュリアナが身につけて宣伝する為に渡したんだ」


 首飾りや耳飾りならまだしも、髪飾りにここまで立派な宝石を使う事は中々ない。それほどの品物。



「じゃあ西の国の王妃様が~って言う話は?!」


 なんか色々と由来? 的なものを言ってたわよね! と言う顔で父を見ていた。



「このエメラルドの大きさを語る上で、ありえない話だと言う喩えに決まっているだろう? 王妃様は国民思いの方だ」



「……それじゃ私の勘違い……酷いじゃない! お父様のせいで恥をかいたじゃない! 恥ずかしくて学園にも行けない!」



「……うちがイミテーションの宝石を扱っているのを知っているだろう? 最後まで話をちゃんと聞かないからだ」



「いつもは本物をくれるもの!」



「うーーん。困ったな……」



「仕返しをしてよ! セリーナ様の屋敷に食品を卸さないで! 食べる物が無くなって家族がひもじい思いをするといいわ! 他の品物も手を回してセリーナ様の家にいかないようにして! 土下座をして謝るか、ジェフェリー様の婚約者を降りるか選ばせるのよ!」



「ジュリアナに恥をかかせたのか! よし分かった。この街一番のフロス商会を敵に回すとどうなるか目にモノ見せてやろう!」



 さすがお父様話が分かるわね。目にもの見せてやるんだから! 誰を敵に回したか後悔するといいわ!



******


 そんなことも知らず週末になり屋敷に帰ってきたセリーナ。



「あら? 美味しそうですわね」



 食卓には艶のある立派なサーモンやパンにスープ、新鮮なサラダが並んでいる。



「今まで来ていた業者を替えたのよ。新しい業者の持ってくるお魚が新鮮でとても美味しいのよ。パンはセリーナのお友達のサムさんの家のパンよ。朝焼いた物をついでに業者に頼んで持ってきてもらう事にしたの。シェフも気に入ったらしいわ」



「サムさんの家のパンですか。それは良いですね」


 グラスに注がれたミルクを一口飲むと、これもまた違う味わいだった。


「ミルクも甘くてコクがあって濃厚で美味しいですね、こちらも前のものとは違いますよね?」



「ミルクはセリーナのお友達のダニエルさんの家のミルクよ」



「まぁ! ダニエルさんの?」



「チーズも作っているみたいで、シェフが足を運んで決めたらしいの。ダニエルさんの家はとてもこだわりを持っているのよ。セリーナから話を聞いてシェフに伝えておいたの。食材はシェフに任せていますからね」



「ふふふ。それは素敵です、なにより美味しいですわ」



「以前はフロス商会から買っていたが、今は替えてよかったと思うよ。商売に手を広げすぎて食材についてはおざなりになっている感が見られたから、いい機会だよ」



 お父様もお母様も満足気な顔をしていましたわ。



「そう言えばセリーナは今日王宮だろう? 準備はいいのかい? ずいぶんのんびりしていないか?」



「えぇ。王妃様のお茶会にジェフェリー様と行きますの。準備は整っていますし朝食後に着替えて行って来ます」



「ほぅ。それは珍しいね、殿下に誘われたのか?」



「はい」



「婚約解消の話はなかった事になりそうだね。殿下の気持ちを聞いたのかい?」



 ニヤニヤする両親を見て恥ずかしくなりました。両親はジェフェリー様の気持ちを知っていたのですね。



「……はい」



「殿下はセリーナを裏切る事はないから信用していい。あの方は嘘をつかない」



「……はい」



 やはり誠実な方なんだわ。私がとんだ勘違いをしていただけなのかもしれません。


******




「ねぇ、あなたフロス商会をどうなさるおつもり?」



「うちを敵に回して何がしたいんだろうか? 今度友人を招いて晩餐で食材が替わった事を知ったら皆どうするだろうか?」



「まぁ! あなたったら。皆さんフロス商会から買わなくなるではないですか、人が悪いです事」



 オホホホホ……と笑う夫人。



「貴族の家に食材を卸して()()()()()と言う態度が見え見えだったんだ。他にも業者はいる。他の業者はフロス商会に気を遣っているだろうが今がチャンスだな」



「セリーナのお友達の家の方も喜んでいらしたし、良かったですわね」



「あぁ。貴族の家で食材が使われると言う事は評判にも繋がる。ただし! 売れたからと言って手を抜き味が変わったら、そこで契約は終了だよ」


「まぁ、フロス商会のことを言っておいでですの?」



「さぁ。どうだろう」



「例のゴシップ誌の事もありましたのにね」



「廃刊にしたくらいじゃ、殿下の怒りは収まらなかったよ」






面白いと思ってくださったら、いいね!&ブックマーク登録&↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価してくださると嬉しいです^_^励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ