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ジュリアナの思惑


「お父様、教会への寄付へ行ってまいりましたわ」


 ジュリアナの父が営なむフロス商会へ顔を出し、教会へ寄付してきた事を報告した。



「おぉ、ご苦労様。お茶を用意するから一緒にどうだ?」


「はい。お相手しますわ」


 そう言ってソファに座った。



 下働きのメイドがお茶の準備する。かちゃかちゃと音を立てて……はぁ。ジェフェリー様の側近の方とは大違いね。優雅さに欠けるわ。もっとマシな給仕はいないのかしら。そう思いながらお茶を口に入れた。


 うーん。少し煮出しすぎ? 茶葉のせい? 苦味が残る。うちで出すお茶をお父様がケチるわけないわよね? 殿下のサロンで飲んだお茶は美味しかったわ。まぁこの茶器は豪華で良いけどね。カップに金の装飾をしてあり持ち手も凝った作りになっている。ジェフェリー様のサロンで出された一番初めの茶器はとっても可愛くて特別感があったのに、二回目は至って普通……と言うか初めの時の気遣いがもう少し欲しかったわね。




「学園はどうだ? 平民と言って嫌がらせされていないか? うちは爵位はないが平民としては上級だ、そんじょそこらの家とは格が違う。だから優秀なお前が王立学園に行けたんだ」


 上級市民ってお父様が言うけれど、そこら辺の普通の平民も学園にはいるから、一緒くたにされたくはない。という事。



「学園では殿下が世話役をしてくださっています。とっても良くしてくださるんですよ。優しい方なんです」


 上級市民には殿下が手ずから世話をしてくれるんですからね!



「おぉ! 殿下が! さすが我が娘!」



 自慢の娘よね。ジェフェリー様とお近づきになれたんだもの。



「とても良い方ですのよジェフェリー様。サロンへも特別に呼んでくださって、それも二度もよ?」



「なんと! いや……しかし殿下には婚約者がおられたではないか! まずいのではないか? 確か侯爵家のお姫様だったな。流石にうちが金持ちだとしても貴族で侯爵家ともなると太刀打ちできんな……」



「あら? だって殿下と婚約者は愛がありませんもの。家同士の繋がりですよ。だから私の世話役もしてくださるのでしょう? 必要以上に。ふふっ」



「そうなのか! 愛妾でも良い。お手付きになるだけでも……」



 色んな事を考えるが、上級市民であっても平民に変わりはない。正室に……ましてや王妃になどはなれるはずもない。側室と言うのも難しいだろう。



「お父様ってば最低ですわね。愛妾()()だなんて! ジェフェリー様は婚約を解消しようとなさっておいでなのよ?」


 この前ジェフェリー様と側近の人が話しているのを聞いたわよ! 婚約解消って。もう破棄しちゃえば良いのに!



「そうか! 殿下には名前呼びを許されているんだもんな! でかしたぞジュリアナ」



「でも、私の存在が原因なら婚約解消の慰謝料を請求されるかも知れません」



「あぁ。任せておけ! そのくらいなんとかしようではないか」



「さすがお父様。頼りになります」



 慰謝料っていくらくらいなんだろう? 婚約解消されてもあの人、顔はお人形さんみたいに綺麗だからなんとかなるでしょう。最近市民の生活に興味を持っているようだから、平民になってリアル平民の暮らしを楽しんでも良いんだしねぇ。




******



「おはようございます、セリーナ様」


 教室へ入る前にお人形さん(セリーナ様)に会った。



「おはようございます、ジュリアナ様」


 近くで見ても本当に美しい方……! でもね、美しいだけなの!



「セリーナ様は昨日教会のバザーへ行かれましたの?」


 サムやらダニエルやらがバザーの話をしていたし、あの教会に寄付をしてるとかしてないとか?



「お邪魔になるかと思って、バザーが始まる前に帰ってきましたの。サムさんとダニエルさんにお願いしてお菓子の販売をしてもらいました。少しでも寄付に繋がればと思いまして」



「あらぁー。そうでしたの。私が教会に寄付にいった時にサムとダニエルがお菓子を売っていたのはセリーナ様のお菓子でしたのね」



「ジュリアナ様も、寄付をされにいかれたのですね。素晴らしいですわ」


「えぇ。うちは()()で寄付していますのよ」


「まぁ! そうでしたのね。お金の方が良かったのかしら…」


「余裕のあるうちは現金が基本ですわね」



「そうでしたの。知りませんでしたわ。バザーに協力することが良いのかと思っていましたもの。浅はかでしたわ。教えてくださってありがとうございます。ジュリアナ様」



 頭を下げて礼をしてくるセリーナ様。ふふっなにかしら? この高揚する感じ……侯爵家の令嬢が平民に頭を下げるだなんて。



「おはようございます。セリーナ様!! どうかされましたの! 頭を上げてくださいな。ジュリアナ様何があって?!」


 またいつもの令嬢ね。邪魔する気?



「おはようございますシーラ様。ジュリアナ様に私の至らないところを教えていただいたのです」


 まぁ、その通りよね。教えてあげたの。世間知らずなお嬢様に。



「そんなことがあったのですね。でも頭を軽々しく下げるのはジュリアナ様のためにも良く無いと思いますわ」



「そう……ね。ここは公の場ではなく学園ですから咎める人はいないでしょう。これからは気をつけますわね」



「はい。セリーナ様、私も差し出がましい真似をして申し訳ございませんでした」




 なんの話かしら? 貴族のそういうところって嫌! 謝るときは頭を下げるのは基本でしょうに……。それにジェフェリー様の婚約者でいられるのもいつまでかしらねぇ。



 それにしてもこのシーラって令嬢は以前私に謝ってきたじゃないの! 何が違うのかしらね









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