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ジェフェリーの休日


「母上、お呼びですか?」



 週末(王宮)に帰ると早速母である王妃に呼び出された。丸テーブルがあり母の座る前に用意された椅子に座る。


「少し聞きたいことがあるのだけれど? 良いかしら?」



 若干の怒気を含んだ声……何かやらかしただろうか? 急ぎの書類などないはずだ。



「はい、勿論です。何かありましたか?」



 心当たりは……



「セリーナの事なんだけど」



 ……!!



「セリーナに何か! もしかして昨日の外出で体調不良になったとか!」


 慣れない街歩きで靴擦れをしたとか? 食べ慣れないものを食べてお腹を壊したとか? 王宮医師の手配を! ガタンッと席を立つ。



「何バカな事を言っているの! ランディ侯爵が変な事を言っているの! セリーナが婚約を解消したがっているのだけれど、どういう事かと聞かれたわ! どういう事よっ!」


 冗談じゃないっ!



「母上の耳にも入っているとは! 私が聞きたいですよ! こんなに私はセリーナの事を好きなのに、そんな一方的に…………ん?」



「あなた、学園でセリーナと交流をしていないでしょう! あなたが学園に入ってから手紙のやり取りしかしていないと報告がありました! そんなんだからセリーナが離れて行ったんでしょうが!」


 セリーナが離れる? 心の距離なのか、物理的な距離なのか……どっちも嫌だ。


「離れて行っただなんて! そんな……セリーナが……私に死ねとおっしゃるのですか!」


 絶望的な顔をして机に伏せるジェフェリー。


「なんで死ぬのよ!」



「セリーナがいない人生なんて……私には生きている価値が有りません……」



 セリーナと歩む未来しかいらない。一人寂しく死んでいくしかないのか。



「死にたくなかったらとっとと誤解を解きなさい! 先日セリーナとお茶をしていたら、慣れない寮生活が寂しいと言っていたわよ。あなた何をしているの! こんな時こそ寄り添うのがパートナーでしょうが!」



「私もそうできればどんなに幸せか……」



「うじうじしてないで、とっととなんとかしなさい! 仕事ばっかりして!」



「仕事をしないと……書類が滞ると民のためにならないではないですか……」






「……そうでした。あなたの仕事ぶりは陛下も宰相も大臣も褒めていたわ、よくやっています」



「お褒めいただきありがとうございます」



「良いですか? とりあえず仕事はほどほどに、セリーナの事を早急によ!」



「はい」



「私たちがなんとかしようとするのは嫌なんでしょう?」



「自分の口で伝えないと意味がないと思います」



 十年間も言えなかった。でもセリーナに対する気持ちは変わらないし増える一方。


 明日は王宮に来るはずだから、明日こそ伝えよう。誤解を解いて大好きだと伝えよう。返事は考えてくれればいい。


 考えてくれると言う事は少なからず可能性があると言う事にしたいから。それにその間は私の事を考えてくれるのだろう。少しでも私がセリーナの頭の片隅にあるなんて幸せこの上ない。




******



 〜次の日〜



「サムさん、ダニエルさんそれではよろしくお願いしますね」



「「はい。お任せください」」



 教会のバザーに出すお菓子を届けました。昨日一日中お菓子を作っていたので、身体中から甘い匂いがします。ふふふっ。



「おはようございますセリーナ様! いつもお心遣いいただきありがとうございます」



 神父様が挨拶に来られました。



「おはようございます。お役に立てたなら嬉しいですわ。こちらの子供達から感謝の手紙を頂戴しましたの。皆さんが成長する姿が見られて私も嬉しく思います」


 文具や本を贈ったことの感謝の手紙を貰いました。お父様にもお見せすると、また力になれる事があったら相談してほしい。と言われました。



「セリーナ様のような方が将来この国の王妃様になられるなんて、私は心から嬉しく思います。更に国が発展する様、毎日神に祈りを捧げさせていただきます」



 ……ごめんなさいね。その願いは叶える事は出来ませんが、次のお相手の方の為にお祈りしていただければよろしいですわね。

 とりあえず、笑ってお別れをしました。



******





「あら? サムにダニエルじゃない」


「ジュリアナさんか、どうしたんだい?」



「バザーに来たのよ。あんた達も大変ね、バイト代も出ないのにご苦労様」



「教会のためになるんだから当たり前だろう?」



「はいはい。大変ね、寄付しにきてあげたの。どこに行けばいいの?」


「寄付に来てくれたのか。それは有り難い。教会の入り口に神父さまがいるからそちらでお願いします」


「分かったわ」




 まぁまぁ盛り上がっているわね。しかしあいつら私が声をかけたんだから、クッキーの袋の一つくらい渡してくれればいいのに! 本当貧乏人はケチなんだから。



 この寄付だってお父様が体裁を良くする為に出すんだからね。ここでは名の知れた商売をしていると寄付の話ばっか! 嫌になっちゃう。



 この古い教会も陰気くさいわね……。あら? かなり身なりの良い男性がいるわ。



「神父さま? 寄付に参りました」



「これはこれは。ありがとうございます。フロス商会のお嬢様ですか。お父上によろしくお伝えください」


「えぇ。父に伝えておきますわね」


 こういう時だけ擦り寄るのよね。神職なのに! 金の亡者ね!



「それでは神父様、また」


 身なりの良い男性は頭を下げて帰っていった。


「失礼ですが神父さまあちらの方は?」


「ボランティアで子供に勉強を教えてくださっている方です。貴族の方ですが、とても気さくな方でいらして、こちらとしても頭が下がる思いです」


 こんな場所にボランティアだなんて、変な貴族もいるのね……。そういえばセリーナ様も変な人だったわ!



 さて、お役御免だわ。時間が余っちゃった。こういう時にジェフェリー様とデートできたら良いのになぁ。今度誘ってみようかな。それでジェフェリー様の行きつけのお店で……





******



「今日はセリーナが王宮に来る日ではなかったのか?」


 朝からソワソワしてセリーナを待っていた。



「言っていませんでしたか? 今日は用事があるそうで、一昨日王宮に来られました。夕方に来られて、その後ランディ侯爵とお帰りになられましたよ」


「聞いてない!」



「言いましたよ。でも殿下はうつらうつらとされていたかも知れませんねぇ」




「徹夜した時か……あの時か」



「そうですね」



「あっ、こちら大臣からで思ったより整備が安く上がりそうだとお褒めの言葉を頂きましたよ」



「うむ。市民の会社を何社か使う。それに市民を雇えば、生活も少しは楽になるだろう。冬支度に間に合う様に給金も出すように」



「はい、その様に致します」




 セリーナが来ない事を伝えて、がっかりするジェフェリーを仕事の話で誤魔化す側近達だった。








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