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セリーナ街歩きをする

 明日は週末で家族の待つ家に帰ります。学園も終わったので今日から家に帰れるように学園側から許可を頂いているので、サムさん、ダニエルさんに王都の街を案内してもらいました。



 いつも行っていた街とは反対側の、市民の方で賑わう街です。



 反対側というのは貴族街で護衛が常にいますし、舗装された美しい街並みにブティックや宝石、スイーツやカフェなどの店がゆったりと構えていて全体的に明るくて清潔といった街並みです。



 そして今回訪れたこちらの市民の街は活気があって、人がたくさん! ぼんやり歩いているとすれ違う人と肩がぶつかりそうになってしまいます。



「セリーナ様! お気をつけ下さい」


 サムさんもダニエルさんも慣れているようですいすいと歩いています。そして声を掛けてくれます。


「ありがとうございます。平気ですわよ。それにしてもここはお祭りみたいですわね。いつもこのように人がたくさんいますの?」


 サムさん、ダニエルさんに聞きました。貴族街しか行った事がなかったので、たくさんの人に驚いてしまいました。



「夕飯が近いですからね。家の仕事を終えた主婦たちが買い物に出る時間帯でもあります。早く仕事を終えた男たちは、店の前で軽く一杯飲んで帰ったりと言う感じです」


 丁度賑わう時間帯でしたのね。


「まぁ。そうですの。うちの父も兄も仕事を終えてお酒を飲んで帰ってくる事がありますの。同じですわね」


「……同じなのかな? 行動はそうですね。同じです!」



 違いましたのね。失礼致しました、まだまだ市民の生活を知る必要がありそうです。



「セリーナ様、ここが僕の家がやっているパン屋です」



 大きくはないけれど清潔な建物で立派ですわね。支店があるくらいですもの。この辺では有名なパン屋さんなのでしょうね。



 所狭しとパンが並んでいますが、売り切れた商品も多々ありました。



「お昼頃にはたくさんの種類が並ぶんですけど、今は売り切れで種類が減っています。このパンがうちの売りです」


 バターの香りがする艶々のクロワッサンでした。お菓子作りをしていて分かったのですが、きっと手間暇かけて作られたものなんでしょうね。



 パン作りの工房は見えるようになっていて、何人ものパン職人が工房内の片付けをしていました。本日分のパンは作り終えたのでしょうね。



「美味しそうですわね。あら、こちらのパンは見たことが有りませんわ」


 丸くて可愛らしいコロンとしたパンです。艶々としていて我が家では見た事がないパンでした。


「中にクリームを入れてあるんですよ。スイーツの様な甘いパンです。こちらは特に女性に好まれています」



 女性人気のパンなんですね。確かに見た目も可愛らしいですもの。



「クリームが入っている甘いパンなんて初めて見ますわ。購入したいのですが、どの様にお会計しますの?」


 パンといえば食事パンが主流です。甘いパンと言われ興味がありますが買い求め方が分かりません。



「はい。ここにトレーとトングがあるので、お好きなものをトングで取りトレーに載せます。その後、あちらの会計係に渡して袋詰めをして貰い、会計となります」


 自分で好きなものを選んでトレーに載せて会計をするのね。


「初めてですわ!」



 侍女も一緒に来ていたので、侍女がトレーとトングを取って待ちかねていました。


「私がやりたいですわ」


 侍女のトレーを譲ってもらおうとしたのですが……



「いいえ。お手伝い致します。もし落とされでもしたらパンが可哀想です」


 両手を使わなくてはいけないものね。人にぶつかって落とす可能性もあるという事?



「そ、そう? それならお願いね」



 侍女とのやりとりをサムさんとダニエルさんに笑われてしまいました。



 数種類選んで会計に進みました。


 するとサムさんのご両親が出てきて、帽子を取り丁寧に挨拶をしてくださいましたわ。



 私の方がお世話になっていますのにね。奥にお茶をご用意しますと言われ、せっかくなので奥の席へと移動しました。



 焼き立てのパンを食べられる様にカフェの様なスペースが設けられていました。


 そして林檎と蜂蜜のフレッシュジュースをご馳走になりました。喉越しが爽やかで美味しく頂きました。


 ご両親の話を聞くと、パン屋さんを新たに作るにあたり、このシステムを導入したのはサムさんの意見だそうです。



 以前はショーケースに並んでいたものを、店員が取っていたそうですわ。


 自分で選ぶというのはとても楽しいです。支店は食パンやクロワッサンに特化した販売をしているので、お店は小さくショーケースに並んであるものを注文というシステムなのだそうです。



「ありがとうございました、とても有意義な時間でしたわ。サムさん、ダニエルさんそれではまた学園で」


「「はい。お気をつけて」」





 楽しかったですわ。お家に帰って家族に話をしましょう。



******



「殿下、ジュリアナさんですが、少々不敬ではありませんか?」



「何かあったか?」



「殿下の事をお名前でお呼びしていました。名前呼びを許されたのですか?」



「許した覚えはない」



「それではきちんと咎めなければいけません。学園と言ってもそこはきちんとしなくては他の生徒に示しがつきませんよ」


 いつの間に名前で呼ばれていたのだろうか? 私の名前を呼んで欲しいのはセリーナだけだ。



「分かった。三ヶ月の世話役だと思って適当に相手にしてきたが、セリーナが聞いたらよく思わないだろうな。誤解されては困る」



「えぇ、そうです。そのセリーナ嬢ですが本日は王都の市民の街へ行かれたようですよ」



「なんだって! 危険じゃないか! 人が沢山いるところで、ぶつかったりしたらどうするのだ! 舗装されていない道もまだまだあるのに躓いたりしたら怪我するだろうが!」



「無事にお屋敷に帰られました。報告だけです」



「セリーナが怪我をしないように市民の街の整備を急がせないと!」



「はい。その書類がこちらで、工事にかかる費用と照らし合わせてくださいね」



「なるほど! 早くしないと冬が来る。少しずつでも早く進めていかなくては」



「そうですね。ついでに○△橋の補修もしなくてはなりませんね。セリーナ嬢が通るかもしれませんし」



「あそこか! もしもの水害に備えなくてはならんな! セリーナの足を止めるわけにはいかない。遠回りになるじゃないかっ」



「そうですね。これも……提出してしまいますか?」



「徹夜になりそうだな。明日は休みだからやっつけてしまおう」




「はい。お付き合いしますよ」



「悪いな」




 必要以上に仕事をさせる優秀な側近達だった。



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