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10/30

焦るセリーナ



 早く婚約を解消して自由にして差し上げないとジェフェリー様が可哀想だわ!



 学園が終わり王宮へと行きました。

 本日は王宮で王妃様とお茶会があります。その前にお父様にお会いして、婚約解消のお話をするべくお父様の王宮での執務室へと向かいました。




「お父様!」


「どうした、セリーナ。今日は王妃様とのお茶会ではないのか?」


 学園で寮生活をしているセリーナと会う事になり嬉しい反面、勢いよく執務室に入ってきたセリーナを見て驚く父。



「はい。その前にお父様にお話をしたいことがあって、急ぎこちらへ来ました。先触れも出さずに無礼をお許しください」


 家族であっても、お伺いの旨を伝えるのはマナーだし、こんなセリーナの姿を見るのは子供の時以来の事であった。子供の頃はただ会いたかったから。と言う可愛い理由でセリーナは執務室に突撃したこともあった。




「何だ? 王妃様をお待たせする事は出来ないから簡潔に話をしてくれ」


 お茶会の時間に遅れるようなら、わざわざここに来ないだろうが親として遅刻を許す事は出来ない。冷たい言い方と捉えられるかもしれないがこれは親としての教育でもある。



「はい。ジェフェリー殿下との婚約を解消して貰いたいのです」











「……なぜ、だ?」



 お父様は何を言っているのか分からないと言った顔をしていました。



「見ていて分かるのです。ジェフェリー殿下は婚約を解消して自由になりたいと思っておられるのですわ」





「……何をどう見てそうなった?」



「婚約してもうすぐ十年ですが、最近では季節のやりとりのお手紙くらいしか交流はありません。殿下は優しい方ですし、婚約者として形式だけのお手紙をくださりますが、学園でもお会いする事はありませんし、」



「……何をしているんだ! ジェフェリー殿下は……」



 はぁっ。とため息を吐き頭を抱え出す。



「お父様っ?」



「セリーナの言いたいことは分かった。でも少し待って欲しい。急な事でパパ少し……混乱してきたよ……」



 そう仰るお父様の顔はなんとも言えない様子でした。混乱したと言った通り昔のようにパパと言った。



「あぁ……そうだ。例の教会にはボランティアで教師を数人行かせる事にしたからね。学力が上がるのは国としてもいい事だ。バザーも上手く行くといいね。セリーナが型抜きをしたクッキーを貰ったよ。とても上手に出来ていたね。おや? もうこんな時間か」



 なんだか話を逸らされたような気がしましたが、お父様はちゃんと話を聞いて教会への寄付もしてくださいました。クッキーも受け取ってくれたみたいです。



「はい。それではお父様よろしくお願いします」



 追い出されるような感じがしたけれど、気のせいですよね?



「セリーナ、近々……上手く行くと思う。とだけ言っておくよ」



「? ? ?」



「王妃様がお待ちだ、早く行きなさい」



「はい。失礼いたします」



******



 王妃様とのお茶会が始まりました。いつも通り近況報告からです。



「セリーナ、学園はどう?」


 まるで母のように優しく気遣ってくださる王妃様を私は尊敬しています。



「学園にはいろんな方が居られてとても勉強になりますわ。寮生活も初めてですし、慣れない寮生活で家族と離れるのは少し寂しいです」



 週末には家に帰っているけれど慣れ親しんだ家の方が過ごしやすいと思うのは仕方がない事ですわよね。



「まぁ。寂しいだなんて! ジェフェリーがいるでしょう?」



「殿下ですか?」



「ジェフェリーがセリーナの寂しい気持ちを補ってくれるでしょう?」



「……王妃様? 仰る意味が分かりかねますわ」



 寂しい気持ちを補う? 殿下はいつも忙しそうでお話をするタイミングもありませんのに。個人的な事で迷惑をお掛けするわけにはいけませんね。



「あの子は何をしているの!」


 はぁっ。とため息を吐き王妃様は頭を押さえました。先ほどのお父様とのやり取りをもう一度したような気がします。



「殿下はお忙しい方ですから」



「……セリーナ、早まらないでね」



 王妃様の仰る意味が分からなくて首を傾げてしまいました。早まる? とは一体?




******



 〜その後のジェフェリー〜




「な! なんて事だ! セリーナが私との婚約を解消したいと……」



 青褪めるジェフリーに側近が言う。



「あーあー。やはりセリーナ嬢は殿下に嫌われていると思われているのではないですか? 私が女性ならそう思ってしまいますよ」



「母上からも手紙が来た……母上は私がどれだけセリーナの事を思っているか知っているだろうに!」



 母に会うたびにセリーナの話題になり、どれだけ尊い存在かと言う事を熱く語っているのに!



「殿下の周りでその熱い気持ちを知らないのはセリーナ嬢くらいではないですか?」



 みんな知っているのに、セリーナに伝わっていない……自分で言うからと口止めをしたせいか?!



「セリーナに渡すデビューのドレスは出来上がっているか?」



「はい。もうすぐ出来ますよ。注文していた茶器もそろそろ届きますからご安心を」


 新しい茶器でセリーナを改めて誘う。人が使った茶器なんてセリーナに出せない。まずはセリーナに出してからじゃないと他の人には使わせない。それが私のマイルールだ!



「よし! 十周年アニバーサリーのお揃いのリングは?」


 もうすぐ婚約して十周年。記念にお揃いのリングを作った。デザインも私がして足も現地に足を運び選んだ。



「出来上がり次第取りに行って参りまーす」



「なんだ、その間の抜けた返事は」



「呆れているだけです。はい、仕事しますよー」



「…………」



「やらないと増えていくだけですからね!」



「優しい言葉が欲しかっただけだ」



「私どもは優しい方ですよ、ほらほら筆を持って下さい。終わりませんよ? セリーナ嬢とお揃いの万年筆でしたよね? お気に入りの万年筆を使った方が捗りますよ」



「……そうだな。いつもすまない」




 どんな時でも最終的には真面目に執務をこなすジェフェリーを側近達は知っていた。








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