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第三章──石鹸箱Ⅰ
第三章 石鹸箱
Ⅰ
「私が初めてこの摩文仁でご遺骨を探していたとき、まず遺品が見つかったんだよ」
「最初に遺品が出てきたの?」
「そうだよ。セルロイド製の黄色い石鹸箱だった──よく見ると持ち主の名前と住所が彫ってあってね。そして、そのすぐ下からご遺骨が出てきたのさ」
「じゃ、そのご遺骨が誰なのかが判ったってこと?」
「そうだよ」
「すごい!──そういうことってよくあることなの?」
「万年筆なんかには名前が彫られていることがありますよ。だけど石鹸箱は初めてでした」仲本晴美が割って入って説明した。
「そうなんだ!──それで…どうなったの?」
「住所をたよりにご遺骨をご自宅に届けることにしたよ。──そしたらね…」
錫は土を掘っていたスコップの手を止めて、前のめりになってミツに近づいた。