謎の旅行Ⅲ
Ⅲ
翌朝、錫は沖縄の郷土料理をたらふく食べた。
「沖縄の食べ物ってこんなに美味しいのぉ~!──錫ちゃんずっとここに居たい」
「ははは…夕食は晴美がもっと美味しい料理をごちそうしてくれるよ」
「それは責任重大──腕を振るうから楽しみにしててちょうだい」
「わ~!これよりごちそう!?──錫ちゃんもうお腹が減ってきた!」ミツと晴美は目を大きく開けて笑った。
「それじゃ、そろそろ準備をしようかね」
三人は登山の服装に着替え、今度は晴美の運転で出発した。目的地までの所要時間はたったの十五分ほどだった。
「えっ…ここ!?──ここで登山…?」
錫が連れて行かれた場所は、沖縄本島の最南端にある沖縄戦跡国定公園だった。
「ここはね、沖縄戦の激戦地だった場所だよ。〝百聞は一見に如かず〟ここには平和祈念資料館があるから、まずそこに行くよ」
錫は言われるまま平和記念資料館に入って、俄かではあったが沖縄戦の知識を得た。
「私…沖縄って海が綺麗なリゾート地っていうイメージしかなかったわ…。こんな負の歴史があったなんて…。なんだか世界観が変わっちゃった」
平和記念資料館の目の前には【平和の礎】が放射線状に広がっていた。ここには刻銘碑と呼ばれる黒石が百十八基も列を成していて、約二十五万人の戦没者の氏名が刻まれている。
「日本の兵隊さんも国籍の違う軍人さんも、もちろん民間人も──沖縄戦で亡くなったすべての人たちの名前がここにあるんだよ」
「なんだか胸が痛むわ…」錫は刻銘碑をさすりながら平和の礎を見て回ったのだった。