君は余りの痛さで笑った事は有るか?(やや閲覧注意)
誰でも生きていれば痛みを感じる事は御座います。今回は脳がバグる位の痛みに遭遇した稲村某のリアルな体験記です。お陰様で左手親指は包帯でグルグル巻きだぜ!!
知らない方は初めまして、知ってる方は毎度お馴染みの稲村某で御座います。
人は誰でも、知らない事は知りません。しかし、知ってみて「あー、なるほどな」と初めて納得する事も多々あります。
今夜はそんな、過去に経験した事の無い体験をすると……人はどんな反応をするのか、と言うお話。そんなに小難しいモノではありませんので、足を崩して気楽な姿勢でお読みくださいませ。
【 注意書き 】
このエッセイは、稲村某が先日体験したばかりの鮮度抜群、ピッチピチのレアなお話ではありますが、内容が内容だけに痛みや怪我のリアルな描写が散見されます。そうした表記が苦手、若しくは生理的に無理な方はここから先は読み飛ばしてポイント項目を【5】と打刻してからお帰りくださいませ。ここ重要。尚、途中下車での払い戻しは御座いませんので、その点はご了承ください。
※※※※※※ ここから本編です ※※※※※
切り傷、刺し傷、心の傷。人は誰でも必ず一度は、自らの身体や心に傷を負うものです。但し、大抵は軽く皮一枚切って血を流し、絆創膏でも貼り付けて「あー、痛かったぁ!」と言って済むものです。
不肖、稲村某。仕事は魚を切って加工する飲食業を生業とし、日々包丁を握って様々な技法を用いて魚を捌いております。そうした作業は多岐に渡りますが、仕入れた魚を開封する朝から、営業を開始する昼前までが勝負。忙しいけれど、ある意味楽しい時間でもあるのです。
そもそも、何を言おうと魚なんてのは鮮度が大事。昨今は熟成だの何だのと理由をつけて日を跨ぐ保存法も確かに有りますが、基本的に仕入れた魚の大半は、その日の内に使い切るのが決まりで御座います。
……そんなある日、稲村某は上司と共に魚を捌いておりました。まあ、細かい事は省きますが、その中の白身魚、その魚のカマ……いわゆるエラと首の付け根の辺りに付いた箇所を切っていた時に、事件は起きました。
いつも使っている、刃渡り30センチ超の両刃の包丁。こいつは世間で言う所のステンレス鋼の解体包丁と呼ばれる一般的な物で、特に筆記するような業物でも無い、ごく普通に流通している在り来たりな道具で御座います。但し、刃物を扱う職業の者は、大抵自分好みの刃先の角度になるまで丁寧に研ぎ上げ、市販時の卸し立ての時分とは異なる仕上げにして使うものです。
で、その包丁を振るい、カマに付いた余計なヒレを根元から切り落とし、長い物は半分にすれば作業は終わり。そんな最後の最後を迎えようとした瞬間、ふと魔が差した、とでも言うしかない【余所見】を何故か、その時にしてしまったのです。
最初に感じたのは、左手の親指の表面を僅かに滑りながら、包丁の踵(握り元に近い最も太く重い刃の部分)がキッ、と止まる感触でした。
そう、本当ならばカマのヒレに当たる筈の包丁の踵を、やや逸らせて添えていた左手の親指目掛けて、振り下ろしてしまったのです。
……グキッ、と爪が一瞬だけ耐える僅かな時間の後、包丁はまな板へと接触しました。
その刹那、稲村某はアッと言いながら小さく飛び跳ねて、即座に居合わせた上司に向かって叫んだのです。
「……すいません! やりました!!」
上司はその言葉を聞いた、沈痛な面持ちで天井を眺めてから、静かに言いました。
「……時間外診療してる所に電話して、直ぐに処置して貰えるか、聞いて(その日は土曜日)」
「……はい、すいません!!」
そう答えながらスマホを取り出し、一件目、二件目、と電話して三件目(農協系の大きな総合病院)でやっと診察して貰える事になり、左の親指にペーパータオルとエチレンラップをグルグル巻いて即席の止血を施してから、自らハンドルを握り病院へ。
因みに、床のタイルと調理台の上に滴った血痕は、お願いしてホースで流して貰いました(これが後程、困った事を引き起こす)。
さて、それから受付に到着し、「電話した指を切った者ですが、処置をお願いしたいのですが」と、受付の女性に話し掛けました。すると、
「あ……、指を切断した方ですか?」
と、少し話が大袈裟になっていたで、
「いえ、切り落としてはいませんが、ちょっと出血が激しいので止血して貰いたくて……」
そう言い直しました。いや、正直言って、もしかしたら骨までいってたかどうかなんて、見たくも知りたくもないですし、その時は痛みなんてほんの僅か。それより早く出血を止めて欲しかっただけなんですが……まあ、仕方ないですな。
取り敢えず、処置は直ぐにしてもらえるようで、10分と待たず先生が待つ処置室へと向かいました。
「あー、あなたが切断した方ですね?」
いやいやだから違うんですってば。
しかし、とにかく見て貰わない事には何も出来ません。看護士さんの助けを受けながら、ラップとペーパータオルを除去し、患部を診て貰いました。
「……あー、結構切ってますね……でも、切断した場所が有れば縫って塞げますが、お持ちですか?」
診察しながら、先生が仰有います。しかし、面積的に見て楕円形の傷口に見合うだけのパーツですよね? そんな小さなモノなんて……
【……すいませんね、この辺り血塗れだから、ホースでジャーッて流して貰って頂けますか?】
……あー、俺、もしかしたら自分の肉片、床の上に落ちてたかもしれない奴、ホースの水で流してもらっちゃったなぁ! てへ!!
「……持ってきてないですねぇ」
「そーですか。じゃあ、ひとまず止血効果のある○○○酸の付いた脱脂綿貼りますんで、傷口を水で洗いますね」
(ふーん、粉みたいな止血剤じゃないんだぁ。何となくそーゆーモノかと思ってたけど?)
内心そう思った、次の瞬間。先生はちょっと聞き逃せないような事をサラッと言いました。
「……物凄く痛いんで、腰を抜かしても良いよう座りながら洗います。椅子を用意しますね」
……おや? 先生。ちょっと待て。腰抜かすとか尋常じゃねーぞ?
「あと、必要なら脱脂綿噛んでおきますか?」
いやいや、それって時代劇とかで「染みるから覚悟しておけ……」とか言いながら傷口に、口に含んだ焼酎吹き付ける類いの忠告だよね? 俺、そんな痛い目に会うの? 嘘でしょ?
因みに、この時までは痛みなんて殆ど無く、そうした忠告も半ば他人事として聞いていました。
「じゃあ、流しますねー」
ジャ~ッ、と勢い良くシンクの排水溝目掛けて流される、水道水。右から読んでも左から読んでも、水道水。そんな日々に馴染むごく普通の、水道水。
びしゃ~っ、と患部に直接、勢い良く迸っていく水道水が当たった瞬間、
「……あごぉっ!!!???」
そう叫ぶと同時に、ビリビリと患部から肩、そして脳まで響くような強烈な痛み……いや予想を遥かに上回る激痛が、小さな傷口を介して全身まで駆け巡ります。
……うん、ナメてた。
洗浄する寸前まで、大した事なかろうと嘲笑ってました。どーせピリッとして終わりなんだろーと。
だがしかし、その痛みはリアル。そして強烈。今まで切り傷に止血の為に塩を盛ったり(塩分が細胞を収縮させて毛細血管を縮め止血を早める)、患部に直接消毒液を吹き付けたりした事は有りましたが、ここまで痛かった記憶は過去に一度としてありません。マジでビビった。
と、痛みを感じた瞬間……稲村某は突如、笑い出したのです。
「アハハハハハハハっ!! こりゃマジで痛いいいいぃーーっ!!」
無論、痛みに顔をしかめ、苦痛に耐えてプルプルと背筋を震わせながら、ですが。そして、余りの痛みで意識がシャッキリした瞬間、
「アハハハハハハハっ!! こりゃあ(二日)酔いが覚めるぅーーっ!!」
とか余計な事(確かに前日の夜は飲んでた)を言った瞬間、先生にリアルな感じで「えっ?」と言われました。只の冗談なのにねぇ……。
そんな麻酔抜きの激痛拷問チックな洗浄の後、ダラダラと血を流しながら○○○酸付き脱脂綿(二回程聞いたがアルギニンとしか聞こえなかった)を貼り、上からガーゼでグルグル巻きにして、血が止まるまで安静にする為、ベッドに横たわりました。
久々の処置室のベッド。昔、この仕事に就いて三年が経過した頃、急性胃炎で喉から出血する程吐きまくり、そのまま職場から病院まで行って以来のベッドです。もう慣れてます。ただ、あの頃は携帯使用NGでしたが、今は問題無いみたいで、職場や妻にメールしながら待ちました。今でもダメだったらご免なさい。しかし、やっぱり多少は不安なんです、全く何もしないのはね……。
それから暫し後、二度目の止血を施して経過を見て、患部を上からキチンとガーゼと包帯で包んだ後、無事に処置は終了して職場に戻りました。
その後、職場の上司と相談し、五日間は休む事が出来ました。でも、果たして五日間で傷が塞がるのか、今からとーっても不安。誰か傷が塞がる妖精さんの鱗粉とか、くれないかな?
※※※※※ お疲れ様でした! ※※※※※
……これが、稲村某の体験した怪我の、その一部で御座います。いやぁ、人間って極限の痛みを感じると逆に笑ったりするんですね。貴重な体験でした!
……もう一回どーかって?
そりゃ指はあと九本有りますがねぇ、嫌ですよ二度と!!
何もないのが一番です。休めないのに無理矢理休んだから、後半の公休がスッカスカ! 有休? 何それおいしいの?
ご感想並びにポイント加算、是非お願いいたします!そして他作品も御一読して頂ければ幸いです!!
ではまたー!(いや傷や痛みの話は書かんぞ!)




