蘇我鞍作、海を渡るのは怖いので船を作る
とりあえず弓と鎧をアップデートした俺。小札を前で合わせて弱点晒している古式はいらぬ。
ついでに刀も古臭い直刀ではなく馬上で振るいやすい日本刀チックな太刀を作らせ、無駄にでかくて重い鉾もスッキリ槍を作らせて大伴家などの正規軍は三間槍風に。弓は施策しているうちに竹合わせるだけじゃなくて木材も工夫されて大型化したから『古代日本の防人』的な感じから見た目は一気に源平時代風に。うちの直属の兵も整備して…だって巨勢とか史実でも優秀だけどあっさり見限ったから…東漢氏とか配下にやらせた…ついでに小札を合わせる糸などを赤くして赤備えにさせた。ヒヒヒ。
馬の方も馬鎧作って鞍に鐙…これは我が国の伝統的な舌長鐙作らせた。これで名のあるものは馬上で長弓を放ち、弓を打つ技量がないものはスリングで投石させ、守りは槍衾に竹束、とちょっとした室町時代的な兵科編成が出来上がったのだ。
それと同時に俺は船の改良にも乗り出した。この時代、日本で使われていたのは準構造船という奴ででかい丸木舟の上に木組みの構造を乗っけているという代物なのだ。まぁこれで遠洋航海できちゃうんだから人間の根性はすごいが、朝鮮半島から即時撤退は…やりたいが口に出したら絶対粛清されるから…できないのでせめて船をまともにするのだ。
こういう技術チートものだと竜骨備えた西洋船ベースでガレオン船とか建造しようぜ!となるのだが、俺は一味違う。
ガレオン船遠洋航海の実績は確かにあるのだが、底がV字型に出張っているので、浅いところで座礁しやすくまた陸に引き上げたりするとが大変(というか無理)なので日本近海で使うのは結構辛かったりする。なので入れる港が少なく…日本でそのタイプの船が使い物になるのは明治移行に港湾整備されてからなのだ。
かといって丸木舟ベースの準構造船はいややねん。この時代まだ巨木はゴロゴロあるから大きめの船は作れるけど限界があるし。
という訳で今回、私蘇我鞍作は中国のジャンク船をベースに作ってみました。船大工の親方が
「底が板のつなぎ合わせだと水漏れが。」
というので
「そこは上部構造と同様槙肌(ヒノキや槙の甘皮砕いて繊維状にしたもの)を詰め、石灰を練ったもので埋めるのだ。板と板のつなぎ合わせは木釘でなく鉄釘を使え。釘の上の板を少し削ってそこも石灰で埋めよ。」
と命じた。ジャンク船にしたのはジャンク船は下側が箱になってはっきりした竜骨を持たないが(と言っても箱の横側に構造通っているが)古い和船との違いは船を横切るような仕切りが何個も作られていて、そこがびっちり詰まっていて(和船の場合は横の支柱のみ)前後に水を通さない水密区画になっているのだ。よってそこに多少水が入っても沈まない。
じゃあなぜ和船でその様な水密構造にしなかったかというと仕切りが多いので荷物が入らないのが理由だったりする。同様に一番上の甲板も広く開いていたから荷物の積みやすさと積載量という点では日本式は大正義だったりする。しかし遠洋航海や戦闘用には嬉しくない。ので当然甲板も閉じられるようにした。
帆も横帆で風上に進むのが難しかったので、こちらもジャンクのような上をすぼめた台形の帆でマストを三本立てさせるようにした。帆は木綿が理想的だが…この時代きつかったんでそこは旧来の竹を編んだ物で妥協。三角帆でもいいのだが、ジャンク式の台形の帆は風がいいときには横帆の様に使えて速力を上げられ、また嵐のときにはすぐに下ろして撤収できるのが強いのだ。舵もジャンクのように船尾で上げ下げできるようにした。
それはそうと兵といい船といい旧来より大量の鉄を使うのでそこを詰め寄られたが、
「出雲や美濃、越(新潟)で砂鉄とれるやん、それ使えばいいやん。石灰は伊吹山ね。」
と『攻略本知っているチート』的なサジェッションをしたらなんとかなった。
ちなみにコレで鉄の産生が国内でまかなえるようになってきて鉄の入手が最大の目的だった(後は先進技術や文化などももちろんあるが)朝鮮半島へのこだわりが薄くなっていったのに実は俺は気づいていなかったりする。
こうして完成した船第一号を俺は『宝丸』と名付けた。うまく行けばいいが失敗したら大王の宝女王にしめられそうだ。
宝丸は河内湖で進水し、試験航海を行った。ちなみに宝丸作る前にプロトタイプでもっと小さい船は何隻か作ってちゃんと沈まないのを確認はしてる。
でもチキンな俺は怖いから陸地で宝女王様一家などの群臣と宝丸の航海を見ていた。
「鞍作様!この船すごいですぜ!ほとんど櫂(いちおう付けてる。)を使わなくても風上でも風下でもスイスイ進みますぜ!」
水軍を預かる将軍、安曇比羅夫が船から降りて興奮して手を激しく握って言ってきた。ちょっと痛いぜ。
その後模擬戦ということで旧来の軍船と一緒に走らせてみたが宝丸の機動性はまさにチートという感じだった。
「鞍作よ、よくやった!」
とはしゃぐ宝女王様。いやそろそろそれなりに歳ですから無理はしないで。
「今後の大和の軍船はこの船を規範とせよ。宝丸が量産の暁には海北なぞあっという間に叩いてみせるわ!」
と嬉しいお言葉をいただきました。でも宝丸はビクザムではないのだよ。
興奮する大王ご一家や武門の方々を他所に、後ろの方では
「鞍作がまた軍を…自分が天下を取るつもりか…」
「あの侍とかいう異形の軍勢に続いて…」
「出雲の鉄が使えるようになりそうとはいえ貴重な鉄を湯水のように…」
という声がブツブツ聞こえたのは聞こえなかったことにしよう。別に私兵ばかり増やしているわけじゃなくて国の装備を改新しているだけなんだけどなぁ。




