かくれんぼしてたはずなのにね
今日は久しぶりの忘年会。
大勢が集まる機会はなかなかない為、皆気がつくとアルコールを多々飲んでしまい、ヘベレケとなってしまっていた。
そんな時に同僚の一人が面白いことを言い始めた。
子供の頃、田舎で流行った遊びがあったって。
【かくれんぼ】
田舎だからとにかく隠れる場所の範囲も広く、探すことに関しては大変苦労したとも言っていたっけ。
都会では空き地がなかなかなくて隠れる場所もなかった為,知らないものもいた。
酔った勢いでやろうと言う話になり、腕枕をした男性陣と女性陣がごちゃ混ぜになってできる場所を探した。
「そうだ。学校に行こう。学校なら広いじゃん。」となったが、「最近の学校は警備も厳しい為入れないと思う。」となった。ならばと廃校を探してそこで遊ぼうとなった。
都会の廃校はないかなと思われたが、昨今のこのご時世子どもの数が減少している為かネット検索をかけるとすぐにヒットした。
その学校は統廃合して廃校となったばかりのまだ比較的新しい廃校舎。
建物自体は綺麗なままで、ここが廃校とは思えない状態のものだった。
「まだ綺麗だね〜。ねぇねぇ、早くやろうよ!かくれんぼ。鬼はどうする?ジャンケン?あみだくじ?なんで決める?」「オイオイ、そんなに早くやりたいのか?ったく、誰だよ?こんなに飲ませたの〜。」
「ワリイ。面白くってさ、つい飲ませすぎたわ。」
「じゃあさ、範囲はどのくらいまでにする?校舎内だけでいいかな?」「ああ、いいんじゃね?」「じゃあ、あとは鬼だね。」
全員で10人いた。
だから鬼は一人で十分かなとなり、今は夜の7時40分だから8時からスタートとする事にした。
それまで各々好きな場所を探して隠れるのだ。
みんなドキドキしていた。
だけど一人だけ違っていた。
そう、彼は一人だけ違うのだ。
霊感を持っていたから。
この建物に入る時にも嫌な感じがしていたが、誰にも喋ってはいなかった。場の雰囲気が変わるのが嫌だったからだ。
だけど、今いるこの部屋…職員室からは出られそうもない。だって廊下の側に不気味な大きな影を見てしまったからだ。
彼は田舎の出身だったのでおばあちゃんから聞いて多少は知っていたのだ。この【かくれんぼ】の本当の意味を。
そして時間になった。
「はっじめるぞー!!」
そう遠くから声が聞こえた。
僕がいるのはこの校舎の二階。
普通職員室と言ったら一階を連想するんだろうが、ごくたまに二階に職員室を持ってくる学校もあったのだ。だから今僕は二階にいる。
一回には保健室、音楽室、理科室、図書室などあり、隠れる場所もそこそこありそうなのだが、今のところ誰も見つかっていなさそうだ。
【なかなかみんなやるじゃないか。僕も負けてられないや。見つかったら最後だし…。】
子供の頃は見つけられたことはなかった。
時間になったらみんな出てきていたから。
今回も同じ。
時間は10時までとしている。
あんまし遅いと終電がなくなる奴もいるからさ。
それに素早くささっと捕まえるのはかっこいいと思う奴らばっかだから狙われるのは必然的に女子かな。
だけどいつまで経っても誰の声も聞こえては来ない。
どうなってるんだ?
もうそろそろ一人二人くらい捕まってそうなんだけど…。
と、その時「ギャーーッ!」と叫び声が聞こえてきた。それはとても見つかって叫ぶような感じではなく、恐怖による叫び声のように聞こえた。
その叫びを皮切りにあちこちで一斉に叫び声が聞こえてきた。
どうなってるんだ?
ただのかくれんぼだよ?
その時ふと子供の頃にばあちゃんから聞いたかくれんぼについて思い出していた。
[いいかい?【かくれんぼ】は偶数でやっちゃダメだよ?鬼が増えちまう。鬼に捕まったら取り憑かれちまうぞ?いいか?鬼が出たらジッとして朝まで隠れるんだぞ?誰にも見つかったらなんね!]
ヤバイ!
僕ら偶数でやってるじゃないか。
だったらどうなるの?
その時近くで女子の叫び声が。
考えてる暇はない。
とにかく何かで体を隠して隠れるんだ。
朝まで…。
あと…5、5時間?ま、マジか。
携帯もマナーモードに切り替えて音も消した。
居場所がバレることはないはずだ。
気がついたら寝ていた。
携帯の時間を確認すると夜中の3時だった。
マナーモードの為、電話等には出られなくて留守電とか入ってたらヤバいなぁと思ったが、見た瞬間怖くなった。だってさ、一定ごとにズラーっと鳴らされてたんだよ?留守電は一本もなくて。
おかしいよな?
同僚だったら電話してくるはず。
鳴らすだけなんて…おかしい。
携帯の明かりも最低にまで調整している為、周りに光が漏れることはないはずだ。
時計は朝の4時を回っていた。
あと少し、あと少しで助かる。そのゆるみが危険を呼び込むことを知っているが、恐怖に取り憑かれていた僕は忘れてしまっていた。
バタン!
職員室の後ろのドアが開いて何かが這いずってくるのを音で聞いて真っ青になった。
ここは校長が座る机の椅子の中側。
外からは窺い知れることはないが、油断はできない。
全神経を尖らせ、音がどのように動いているのかを探る。
するとどうやら机の上に乗って探しているようだ。誰を?
まさか…僕じゃ…ない、よね?
怖いよ。
心臓の鼓動が大きく聞こえる気がして仕方がなかった。
吐く息も音がしてる気がしてゆっくりと静かに吐くようにして音を消した。
その塊の音が僕のところのわずか1M手前まで来た時震えたが、なんとか踏ん張って音を立てないようにしたよ。
その頃になってようやく周りの音が聞こえなくなっていることに気づいた。みんなどうしたんだろう?見つかってどこかに捕まってる…とか?
でもばあちゃんから聞いた話だと鬼になるんだよね。
もし本当なら今出るのはやばい。
叫び声が何回聞こえたのかを思い出してみることにした。
1人…、2人、…3人、4人5人…6人…7人、…8人、あと1人僕以外にまだ捕まってないやついたんだ。
そいつもうまく逃げてくれれば…。
しかしその願いは届かなかったようだ。
だってホラ…「ギャーー!」聞こえてしまった。
ということはもう捕まってないのは僕だけだ。
携帯の時計は朝の4時45分を回っていた。後15分逃げ切れば明るくなる。そうすれば僕は助かる。
僕は両目を閉じ、縮こまって静かにしていた。
そう、ただそれだけをしていた。
しばらくして明るくなり、携帯の時計が5時を回ったのを教えてくれた。
助かったぁ〜。
あたりの様子を伺いながら机の下から出てきた僕は固まってしまっていた。
そう、まだ終わってなかったんだ。
かくれんぼの終わりは僕が捕まるまで。
そして今職員室の僕がいる側と反対の側にいるのは捕まったであろう仲間たち。
ただ様子はおかしかった。
そう…まるで鬼にでもなったかのように額に1本のツノがあった。
そして、…雄叫びとともに一斉に僕に襲いかかる。
僕は慌てて職員室を出て建物内から避難した。
すぐに警察署にと駆け込むが、誰1人としていなかった。警官だけじゃない、街から人の姿が消えていた。
僕は…どうしたらいい?
かくれんぼはしちゃいけなかったんだ。
武器を探そう。
署内なら拳銃や警棒などが保管されているはず。
どこにあるかはわからなかったが、多分地下だと踏んだ僕は地下へ急いだ。
署内の地図があったので一般人が入れそうもない場所を探したらヒットしたよ。多分そこだ。
ただ鍵がかかっているからどうやって壊すかだけど、近くのトイレから使えそうなものを片っ端から持ってきて鍵を壊しにかかった。
手当たり次第に壊しにかかり、何度目かでようやくドアが壊れ開いた。
そこには署内の人間が閉じこもっていたのだ。
皆震えてる。
「なんでこんなところに隠れてるんですか?」僕の問いに答えたのは1人の警官。
「たまたま巡回中だったパトカーが例の廃校舎のそばを通った時叫び声が聞こえ、本部に連絡した後連絡が途絶えたんだ。スイッチは入っていたから相手側の声は聞こえたんだけど、叫び声が聞こえただけですぐに静かになってしまってね、もしかして誰かが事件に巻き込まれてるのかもと思い、増援を送ったが連絡はなく、これはもしかして誰かが何かをしたに違いないとふんで街の人を退避させ、自分らは署内の地下に立て籠もったんだ。」
なら話は早いと僕は全てを話して聞かせた。
そしたらさ、ものすごい剣幕で怒られたよ。
「かくれんぼ」はしちゃいけない。もちろん校舎でするのはもってのほかと。
子供の頃の流行った遊びだったからと言ったが、町民は誰1人として味方になってはくれなかった。
でも待てよ?警官が丸腰で行くなどありえない。ならばまだ生存しているかも。
僕は警官から半ば奪い取るようにして警棒を借り、借用書を書いて強引に渡した。
「もしも…もしもだけど僕が帰らなかったら探してください。きっとどこかに隠れてるかと思います。相手は幽霊?だと思います。
「はっ、幽霊だって?そんなの現実なわけあるか。」
「でも実際に見たのは僕だけですから。」
「だな、だから狂言と言うこともある。」
「なら僕に同行すればいいじゃないですか。そしたら真実がわかります。」
「真実ねぇ〜?」
「時間がないんです。朝になるのを待ってはいられません。それに朝ももし動くのであれば逃げ場がなくなります。どうしますか?」
「わぁったよ。俺が行くわ。」「なんであんたが…。」「まぁ、ごちゃごちゃ考えるのめんどくさーんだわ。だからさ、行くわ。行くぞ!坊主。」
「坊主じゃありません!」
「ガキか。」
僕は黙ってそいつについてった。そいつも警棒を2本手にしていた。僕も腰に1本差してある。何かの時に使う為である。
廃校舎の周りは音が聞こえてこなかった。
この時期虫の声がうるさいくらいなのになぜか全く聞こえてこない。
僕は震えたよ。
ビビってる。
でも同僚の為だ。やめられない。
門から校庭に入り、校舎内に入ろうとしたら玄関にバリケードが敷かれていた。
なんで?一体誰が?
何の為に?
わからないが、まずこれをなんとかしなければと2人で協力してガラスを破りドアを開けた。バリケードはすぐに崩すことができたが、この静けさはなんだ?
人の気配が……ない?
2人とも唾を飲み込んで辺りの様子を伺いながら一歩づつ歩き出す。
もう日が上り始めていた。
だからなのか鬼の姿もない。
「朝になったから鬼も隠れたんでしょうか?…じゃないとおかしいですよね?みんなどうなったんだろう……。」
「お前さんさ、この村のでだろ?なら分かる…よな?やった奴らがどうなるのか…。親から聞いてるだろ?」
「そ、それは…ばあちゃんしか知らなくて、ばあちゃんボケてたから半分くらいしかちゃんと聞いてなかった…。」
「アホか!いいか、ちゃんと聞けよ!【かくれんぼ】は神隠しの歌だ。かくれんぼすると誰か1人必ずと言っていいほど行方不明になる。そして見つかってもいなかった頃の記憶がない。しかもだ、真っ赤な口と血に濡れた両手。当時は村で事件があってな、未解決事件だ。ほら、あっただろ?一家惨殺事件。犯人は子供の手だったって言ってたのを警官から聞いてな。騒ぎになったもんだ。」
それを思い出した僕は真っ青になって警棒をギュッと握っていた。当時、僕も子供だったからあんまり知らないが、噂で少しは聞いていたときだったのを覚えている。
そうこうしているうちに建物内で一番広い体育館に来ていた。そこには行方不明になっているであろう同僚の姿がたくさんあった。皆目をつむっている。
だがまだ距離がある為、生きているのか死んでいるのかまでは分かりかねていた。
近寄らなくてはならないが、近寄ると襲われる危険性もある。出たとこ勝負となるか?
一歩、また一歩と近寄るが、まだ誰も目を覚まそうとしない。僕は警棒を伸ばしていつでも振り下ろせるようにした。ついてきた男性も同じようにかまえた。
全方位に神経をとがらせてその場でジッとしていたら、上から何かが落ちてきた。
それは人の血で、僕ら以外で捕まった人のものかもしれない。
でも、ドスンと落ちてきたのは警官だった。
しかも4人。
とっさに上を向くと上に何かがいた。
その塊が落ちてきそうなところに僕ともう1人は警棒を全部上に向けて待ち構えた。
落ちてきたのは巨大な蜘蛛で、子供の体くらいの大きさだった。
ぐさりと体に刺さり体液があちこちに飛んだ。
すると奇怪な悲鳴と共に絶命した。
それと同時に同僚たちが目を覚まし、目の前にあるそれに恐怖し、自分たちが何をやってしまったのかを後悔することになった。
亡くなった警官は地域の人に慕われていた人たちばかりで、花束が絶えることはなかった。
それ以降、僕らは【かくれんぼ】を口にすることもなく過ごしていくことになる。昔の遊びの怖い事、まだあるよね?きっと………。




