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8. お早い業務開始

 ユダスと語り合った後、お互い居住地へ帰り、俺はベッドでまどろんでいた。やることと言えば、自身のマナ特性の把握。だが、この街の探索もしておきたい。

 早速、外へと出てみた。


 昼でも夜と変わらない、静かで穏やかな街。淡い空に浮かんでいる。


 グラビティスの練習を兼ねて、周囲に漂う岩へと飛び乗っていく。上空ではあるが、地上に落下することは絶対にない。街が浮かんでいるように、一定の位置で落下が止まるらしい。


 でも落ちたら戻るのが面倒だそうだから気をつけよう、なんて考えていると、最上部の岩へとたどり着いた。


 気持ちいい柔らかな風。ゆったりとくつろいでいると、何かが近づいてきた。


 鳳のような、優雅な純白の竜。それは、俺にテレパスで話しかけてきた。


『君がクウマだね。お休みのところすまないが、エヴァンが君を探しているんだ。乗ってくれ、連れて行こう』


なんでも、ミゥホが俺を呼びにきてくれたらしいのだが、すでに外出した後で端末もないゆえに色々と探してくれていたらしい。端末がないのは俺のせいでもなんでもない。

 竜、かっこいいな。なんて考えているとエヴァンの仕事場に着いてしまった。


「やーっときたぁ」


着くなりぼやかれた。


「きて早速で悪いんだけど、明日から現世に行ってもらうわ。そのことを伝えるために来てもらったの」


「配属ってやつか、思ったより早いな」


「管理者不足なんだから仕方ないの。人数が少ないのに世界をどんどん増やしていくし」


 またボヤキが始まった。


「習うより慣れろってよくいうでしょ。だからアンタも現世へ行って、慣れてきなさい。それに最初の数年間は短期間でいろんな世界に行ってもらうし、おーじぇーてぃーもあるんだから大丈夫。ベテランについて行って教えてもらえるんだから」


OJTって・・・。会社員そのままだな。


「はい、これ」


 と言って渡されたのは、ユダスが言っていた端末だ。


「これって・・・」


「これは、アタシたち管理者同士で連絡を取り合う時に使うもの。テレパスではある程度近くでないと通じないから、何光年も離れてたり異なる宇宙間でも連絡を取るために必須なの。無くしたら怒るからね」


 ユダスに後で連絡しておこう。


「この端末を使えば、音声で会話したり、現世でのメールの機能もある。配属先世界の情報もあるから、事前調べしておきなさい。じゃあ、これで終わり。明日になったら、とりあえずここに来なさい」


「それで、配属先世界の名前は?」


 エヴァンは忘れてた、という表情をした。


「そうだったわね。名前は”エディアカラン”。戦争とかはない、比較的平和な世界だから」


 比較的平和なのか。信じるしかないしな。端末で調べつつ、出発の準備でもしよう。


「準備するにしろ、何を持っていけばいいんだ?所持品は端末くらいだし、所持金なんて一銭もないんだが」


「お金はいらないわよ。現地の管理者持ってるし、荷物とかバッグ一式も向こうで用意する手はずになっているんだし。そうそう、管理者には一応武器も渡してるんだった」


 また忘れていたな。

 エヴァンが持ってきた武器。それはロングソードとかと同じ(実物はみたことがないが)くらいの長さの細い長剣だった。所々に時計をモチーフにした装飾が飾られている。刀身は紫に淡く光っていて綺麗なもんだ。だが。


「武器を携帯することが問題になる世界では使えないよな」


この疑問があった。地球で持っていたら大問題で捕まってしまう。


「大丈夫よ、そんなこと。剣が合わない世界だったら別な武器、例えば銃を渡すから」


「それはそれで別の問題があるような・・・」


「大丈夫って言ってるんだから大丈夫なの!どうせ魔法が一般的ではない世界の生命体には知られないためのものなんだから」


 これ以上、突っ込まない方が良さそうだ。


「衣服はどうすれば?流石に地球でのジーンズやジャケット、スーツは違和感ありありなんだが」


「・・・もー。あんたの家のクローゼットに、一通りの世界で併用できる服とか用意してあるから!詳しくはミゥホに聞いてちょうだい!アタシは別な仕事があるから、また明日ここにきなさい!」


 ミゥホが室外で待っていてくれた。初めての異世界エディアカランのことや服装、俺と行動を共にする管理者などについて簡単に教えてくれた。

 行動を共にする管理者は火のマナ使い、ヒノヤ。トラステッドインストーラの一人だという。いきなり大物と一緒に仕事か。会うのが楽しみだ。



 次の日。


 クローゼットとは言えないほど大きな部屋の中から、剣と魔法の世界であるエディアカランでも違和感がなさそうな白いローブと肩当て、胸当て程度の極軽装の鎧を選び、着替えた。

 つい先日まで会社員でスーツを着ていたんだ、こんな映画の衣装みたいなものなんてとてつもなく違和感があるし、軽いと鎧とはいえ若干重さを感じる。

 スーツ姿の長剣よりは数倍マシだが。

 長旅に必須である水分は、俺の神術でなんとかなりそうだし、お金、着替え、食料は現地でどうとでもなるだろう。スマホの代わりにバッテリー残量を気にしなくていい端末があるんだし、持ち物は特にいらないな。 


 それじゃあエヴァンのところへ行くとするか。

 

 いざ、異世界へ!


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