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5. 面倒臭がりな管理者

 ふわふわとした浮遊感、雲に包まれているような空気感、柔らかな色調の空と降り注ぐ光のシャワー、果てしない地平線。

 天空から降り注ぐ滝。

 空に浮かんでいるこの街並み。

 大きな岩も街の周囲を漂っている。高天原や桃源郷、シャングリラとか仙境とはこのことなのだろう。


 管理者世界で目を覚ました俺は、右も左も分からないまま、とある管理者の元に連れて行かれた。新人教育部門みたいなところかな。

 そこで説明をしてくれたやつには驚いた。なんと、やる気を感じられないどころか、俺以上にめんどくさそうにしている。


「はぁ。また仕事?メンド・・・」


 第一声がこれだった。



「タケダ・クウマね。地球出身・・・と。とりあえず、簡単に説明するわ」


 死んだばかりなんだからもう少し丁寧に教えてくれてもいいだろ、このお子様が。


「聞こえているわよ!」


 え?声は出していないんだが・・・。


「それも聞こえてる。じゃあ、それをまず教えてあげるわよ」


 ロリっ子は言った。どこからともなく、木桶が降ってきた。痛い。


「ロリっ子言うな!」


「ごめんなさい」


「ったく・・・。アタシのオヤツ・・・じゃなくて仕事の時間を割いてあげてるんだからね。それにアタシはアンタよりも二百億年くらいおねーさんなんだからね」


 オヤツ?オヤツって言ってなかったか?そして二百億歳以上。地球の存在する宇宙が確か138億年前にできたから、それよりも上じゃないか。ロリBBAってやt!!


 思考の途中でもう一度、木桶がぶつかった。いや、すいません。話を続けてください。


「まず!アタシはお子様でもロリっ子でもロリBBAでもなく!エヴァン!そして、あんたの考えていることは、自分で意識しなければ他の管理者に伝わるの。テレパスってやつね。アタシたちはそれが使える。そして他にも力がある」


 そう言って、さっき俺にぶつかった木桶を浮かせた。


「これはサイコキネシスってやつね。念力とも言うわ。あんたももう使えるから、ちょっとやってみなさい」


「やってみて、と言われても」


「とりあえず、それに向かって念じてみなさい」


 言われた通り、とりあえず念じてみる。集中し、木桶を持ち上げるイメージ・・・。


「あ」


 浮き上がった。が集中力が切れた瞬間、落ちる。


「そ。できたでしょ。そんな感じでなれればいいから」


 ざっくりしてますね。


「うるさいわね・・・。あんたの考えていることが全部わかるのもうっとおしいから、次はテレパスを自在にできる

ようにする。これも簡単だから」


 そう言うと、次は頭の中に直接エヴァンの声が聞こえてきた。


『これは聞こえているわよね』


 変な感じだが、うん、と心の声で答えた。


『じゃあ、あんたの心の声を遮断する方法を言うからやってみなさい』


 言われた通りにやってみる。


『まだ聞こえるわよ』


 やってみる。


『全然聞こえてるわ』


 くそ


『はいはい頑張って』


 ・・・

 何も頭の中に聞こえてこなくなった。


「アタシの声も聞こえなくなったわね」


 突然、エヴァンの声が耳から聞こえてきた。


「それが遮断。自分の思考だけ遮断して、相手の思考は聞き取れるようにもなるから。あと、距離も離れると届かなくなる。だいたい数キロくらいだから、使うときは気をつけて」


 説明、雑っ!


「じゃあ、アンタの余計な思念が聞こえなくなったところで」


 そう言うと、エヴァンは、世界のこと、管理者のことを説明してくれた。


 生命体として生を終えたもののごく一部が、管理者の資質を持ち、管理者世界で再構築されること・神術というマナを原動力とする能力や、さっき教えてもらったテレパスやサイコキネシスが使えるようになったこと・現世に赴き、世界の維持・繁栄を手助けすること、新たな世界を想像することもあるから、神様とほとんど同じようなものであること・・・。


 急にこんなことを説明されても理解が追いつかないが、とりあえずは、管理者=神・管理者は、管理する世界の数に対して人手が足りていないこと・管理者は強大な力を持っていることはわかった。


「そうそう、マナ属性は一人につき1系統しか使えないから。アンタのマナ属性を調べなきゃね」


 エヴァンが用意したのは・・・水晶のような宝石のような。


「これを両手で囲うようにして、自分自身をこれに移すようなイメージをしてみて。赤系統であれば火。薄い青なら水、とかなの」


 マナクリスタルの儀というものだそうだ。混乱している思考をなんとか正常に戻すようにしてから俺はイメージしてみた。自分の、物心がついてから死んでしまうまでを移しこむように・・・。


「・・・なんだこれ」


 エヴァンが不思議そうな感じで声を出す。


「初めてみるわ、こんなの。アンタ、本当に資質あるの?」


 いや、俺が聞きたいよ。


「これじゃ今すぐはわからないから・・・。それじゃ目の前に何かイメージしてみて」


「急に何かって言われても」


「なんでもいいの。甘いケーキとか美味しいジュースとか」


 エヴァンが欲しいものだな。でもそんなものはイメージしない。さて、何をイメージしたらいいか・・・。今自分が感じたいこと、したいこと。


 春のような気持ちのいい風、もう一度感じれないかな。


 一陣の風が吹いた。ほのかに桜の香りが立ち込める。


「どんなイメージをしたの?」


 エヴァンが聞いてきた。


「どんな、と言われても。気持ちいい風をまた浴びたいなって感じかな。これが俺の神術?」


 エヴァンに尋ねるが


「もう一度。風ではなく別なイメージで。例えば火や水で」


 なるほど、わからないということか


 次は・・・そういえば、何か飲みたい気分だ。末期の水も飲んでないしな。

 突如、地面から滔々と湧き水が溢れる。清流のとても透明な水。そしてその水はさらに勢いを増して小さい噴水のようにどんどん湧き上がってくる。

 ・・・この水は飲めるのだろうか。ええい、ままよ。俺は思わず手酌で飲んでみた。

 ・・・美味い。


「今度は水・・・。ますますわからなく待ってくるわ。創造の力を持つ管理者はもうすでに存在しているし、この力はただ一人のみにしか使えないはずだし・・・今まではいなかっただけということもあるけど・・・まさか複数の属性・・・?」


 悩んでいる姿は思いの外、可愛かった。


「まぁ今答えは出ないから、アンタから定期的にアタシに報告してもらうことにする」


 そう言って彼女は考えることをやめた。


「説明は以上。この世界でのアンタの住む場所はアンタをここまで連れてきてくれた管理者から教えてもらってちょうだい。今日はこれで終わりで、少し休んだらまたアタシのところに来て。配属先と、そこへいく方法を教えるから」


 そう言うと、エヴァンとその周囲は消えたように見えなくなった。


 最初に俺をここまで連れてきてくれた管理者に、次は居住地に案内された。想定外に広い敷地と家だ。

 なんといっても、中国の水墨画に出てくるような山岳と空中に浮かぶ巨岩。広過ぎて迷子になりそうだ。

 自室につき、自分の時間ができたことを認識した俺は、ベッドに横になり案内してくれた管理人から聞いた情報を整理してみることにした。




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