4. 会社員生活とはなんだったのか
俺は、地球で生活していた、ただのヒラ会社員だった。
夢を抱いて都会へ行き、夢敗れ会社員となったが、それなりに楽しい生活をしていた。平凡で変わらない日々を過ごす。
そんな人生に対して、生きがいやモチベーションがなくなり、いつ死んでもいいと割り切っていた。そして年の暮れ、寒い日のことだった。同僚や友人と酒を飲んで遊び歩いていた。
酒豪が揃う仕事納めの飲み会も終わり、終電も逃したが自宅までたどり着いたその日。
その日に、俺は死んだ。
原因は
凍死だった。
なぜ、自宅までたどり着いたのに凍死したのかって思うだろう。それは、自宅の中に入れなかったからだ。
泥酔して、意識朦朧ふらふらになりながらも帰宅したが、自宅の鍵をカバンから見つけられなくなりそのまま力つき玄関ドアの前で眠ってしまったのだ。
都会でも夜中や朝方は氷点下になっていた日だ。運悪く、死んでしまった。それもゲ●まみれで・・・。
俺が意識体となって(実体の脳や目・耳もないのに、なぜ「考えれて」「見たり」「聞ける」のかは謎だが)自分の情けない姿を見下ろしていた。
周りの家の住人や大家さん、救急車の隊員が俺の死因について話しているのが聞こえた。
その時点で俺は「死んだ」ことを自覚し、納得し、受け入れ、次の瞬間には「管理者世界」にいたことをヒノヤに話した。
「ぶっひゃっひゃっっひゃくひゃーkkkuuuuwwwaaaahaaaarraaaaaaはははiteeeeeeeee」
こんな風に言葉にならない笑いをするやつ、初めて見た。
ヒノヤはのたうちまわっている。俺も他人がそんな死因だったら、申し訳ないがバカだと思うし笑うだろう。
「まあ、予想通りだよ。笑うなともいえないし、自分でも笑えてしまう。そんな死因で、酒はトラウマになったんだ」
俺はこういうリアクションをされることを想定していたから、特に不快でもなかった。もう、ネタで使ってやる。
ひとしきり大笑いした後、ヒノヤは
「いや、すまん。聞いた後で言うのもアレだが、言いたくなかったら言わなくてよかったんだぞ」
と、まだ残り笑いがある声で言ってきた。
「どうせ、これから長い付き合いになっていくんだろうから、さ。それに酒好きのヒノヤには知っておいてもらわないと、酒地獄を味わうことになりそうだし」
「言われてみりゃ、そうだな。チェスターに着いたら酒場巡りでお前の配属祝いをしようと思っていたからな。次の日の昼くらいまで」
俺は思った。こいつに話しておいてよかったと。
「そいや、お前、この世界のことは閉域のネーちゃんから事前情報は聞いてきてるかい?」
「・・・ん。まぁ、ざっくりとは」
本当にざっくりとしか聞いていない。「いきゃぁわかるでしょ」みたいな状態だった。ちなみに『閉域』と言うのは、俺やヒノヤのような「管理者」と呼ばれる存在が住まう世界のことだ。
この辺りで、俺が『閉域のネーちゃん』から聞いている事前情報を再確認しておこう。ちなみにエディアカランにくる前の出来事だ。