プロローグ
プロローグ
そこには、一人の少年がいた。目の前に横たわるのは、血を流して横たわる、肉塊。元は、この少年の両親だ。
少年の二つの瞳から流れる水滴は、天より落ちる濁流に飲まれて消えていく。
「おい、あの子!」
遠くで声が聞こえる。誰かがこの惨状を発見したらしい。
駆け寄ってきたのは、4人の男女だった。全員が武器を持っている風貌で、冒険者だとわかる。
「君、大丈夫?」
黒髪ロングの綺麗な女の人が、腰を屈めて話しかけてきた。が、少年は瞳を少しだけ動かしただけで、言葉を発することはない。
「これはひでーな」
「家の中がグチャグチャだ。おそらく、金品目当ての強盗だろうね」
背中に大剣を担いだ背の高い男と、それに比べ、ヒョロッとした容姿の青年が意見を交わす。
「その子、大丈夫?」
「ううん。目の焦点が合ってない。それに、長く雨に当たってたのか、身体が冷え切ってる」
「遺体を見る限り、昨日今日の事件じゃないな。その間、この子はずっとここに立ってたのか?」
「多分」
「どうする? 一時的になら、私の家で預かることもできるだろうけど」
「それがいいんじゃねーか? アリスの家なら、その子も悪くはされないはずだろ」
「うん、僕もそう思う」
「わかった。フィルもそれでいい?」
アリス、と呼ばれた女性が屈んで話しかけている女性、フィルに声をかける。
「……」
「フィル? どうしたの?」
「ねぇ、ちょっと相談があるんだけど」
「ん? どうした?」
「この子、私が面倒を見たらダメかな?」
「「「は?」」」
その一言に、他の仲間3人の、間の抜けた声が重なった。
「いやいや、フィル? あなた、何言ってるかわかってる? 犬や猫を飼うのとは訳が違うのよ?」
「そうだよ。それに、冒険はどうするのさ?」
「うん、辞める」
「はぁッ⁉ いや、その子がかわいそうなのは俺も同じだ。けどよ、フィルがそこまで面倒見てやる義理も……」
「ある! この子は、この子は、私が面倒を見てあげなくちゃ! じゃなきゃ、この子はきっと、人を憎む」
「それはッ……」
男の声に被せて放った一言で、その場の誰もが、口を開けなくなる。
この世界において、孤児というのは一定数存在する。
そして、その子供たちがまともな職に就けることは、残念ながら少ない。特に、こうして両親が殺害された孤児は、殺人などを犯す例も多いのが実情である。
「みんなに無茶言ってるのは、私もわかってる。だけど、お願い! 私は、この子を助けてあげたい」
そして、それは。
何を言おう、フィル自身が孤児であり、それを理解している仲間だからこそ。
「はぁ。わかったよ。ただ、パーティを抜けるのは許可できねぇ」
「えッ?」
「またいつか。一緒に冒険しましょう。僕たちは、待ってますから」
「そうね。それに、その子を育てるお金も必要でしょう? パーティの仲間への支援金、ということで、私たちも援助するわ。それが仲間。そうでしょう?」
「みんな……」
こうして、この少年は保護された。
「とうとう、今日か」
あれから数年。
小さかった少年も、随分と身長が伸び。
先日、無事に15歳となり、成人を果たした。
そして、今日。彼は念願の、冒険者試験に臨む。
「フィル姉にお世話になった恩を、これから返すんだ」
決意を新たに、彼は身支度を整える。
腰には一本の剣を提げて。
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