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 『――自刃しろ』

 

 私が命じた通り、男たちは刀を首に突き立て自刃する。今回は少し手こずった。

 私が口で命じ支配下に置く能力だと分かっていて、事前に自身に対する強い暗示をかけていたのだろう。

 

 「芽衣奈ちゃん大丈夫!?」


 物陰に隠れていた春くんが、心配そうに私に駆け寄る。

春くんは私の隣に基本居るから、巻き込まれることが多い。


 その度に、なんとか隠れてもらってるけど今までが上手くやれてるだけで。この先、戦闘に巻き込まれる可能性もある。

 

 「あ、うん。なんとかね」


 悪魔と契約してから、執拗に警察から狙われるようになった。警察といっても私を狙ってるのは、――警視庁公安部外事課の特殊部隊SSS(エスエスエス)


 私のような、悪魔との契約者や人間に害をなすと判断された人外を秘密裏に処理する組織だ。案外、私のような存在は多いらしく、目立つ行動さえしなければ大抵は黙認されるらしい。そう、問題さえ起こさなければ良い。


 「……血が凄いかかっちゃってる。」


 「……汚いから」


 「芽衣奈ちゃんが汚いわけないよ、いつだって可愛い」


 春くんは、ハンカチを出すと(いたわ)るように、私の頬を拭う。血塗れの私を……人を殺している私を、嫌悪するどころか怪我をしてないか心配する春くん。


 あの日以来、すっかり春くんは過保護になってしまった。私の能力が効いているのかと思ったけど、自分の意思らしい。うーん、1番効いて欲しい相手だったんだけどな。まぁ、いいや。



 退院して、私が真っ先にしたのは、春くんに関わる女の抹殺。頭の悪い女どもを殺すのは意図も簡単だった。


 例にならって命令するだけ。


 自殺やら事故死するように携帯越しに命じる。直接じゃないと効かないと思ったけど割と万能だ。


 学校や世間からは元々素行の悪い生徒ということや、集団心理やらで上手いこと収束した。色々議論はされたけれど。


 人間なんてそんなものだ。案外、他人になんて興味ない。

 

 これで春くんと幸せになれる。


 そう思ってたのに。


 流石に日も空けず殺すのは軽率だった。


 ――SSS。あんなわけのわからない連中に目をつけられることになるなんて。


 やっと能力を使いこなせてきた段階だ。今は、雑魚相手だけどあれ以上のが相手だと分が悪い。


 「芽衣奈ちゃん、今日何か食べたいものある?」


 「今日も泊まりにくるの?」


 「約束したでしょ。離れないって。ご両親には話してあるし大丈夫だよ」


 「別に両親のことを心配してるわけじゃないんだけど」


 もともと、共働きの両親だ。私のことを育ててくれてる感謝はあっても、それ以上思うことはない。


 「ハンバーグが食べたい」

 

 「良いね。チーズ入れようか」


 「トロトロのにして」


 「うん、とびっきり美味しいの作るから」


 春くんはそう言うと嬉しそうな顔をする。かいがいしく世話を焼きすぎではないだろうか。出来すぎる嫁を貰った気分だ。


 悪魔の力を使ったあと、殺伐とした気分の私に()えて明るく接してくれる春くん。


 あれほど私のことを避けていたのに、今じゃ春くんの方が嫌というほど側にいる。


 もう、目的は達したようなものじゃないか。


 これ以上私は――人を殺したくない。





 ***




 「春くん!逃げて!!」


 「芽衣奈ちゃん!!」


 まずい、まずいまずい!逃げなければ!せめて春くんだけでも!


 今回の相手はまさに分が悪いだった。というかなんだあの男たちは…!


 1人は白髪で少し長めの髪をハーフアップにしてる男。一見、優しげな顔をしているが目がちっとも笑っていない。


 もう1人は黒髪マッシュの男。爽やかそうな印象だが、耳にピアスがジャラジャラと付いている。


 2人ともスーツ姿で、背中に……。


 「羽……?」


 春くんがあり得ない物を見るかのように、その光景を疑っている。男たちには何度見ても白い大きな翼が生えているのだ。


 「あぁ、初めて見たのかな」

 

 白髪の男は優しく、笑うとその翼を大きく羽ばたかせる。彼らは人間じゃない。咄嗟に理解した。


 悪魔がいるなら天使もいるか。それもそうか。


 甚だ馬鹿馬鹿しい。


 「いやぁね、俺たちもお前らには興味なかったわけ。だからな、皇帝の悪魔だがなんだが知らんけど、どーでも良かったんだわ。仕事する時間があれば 流雨(るう)に構いたいし」


 黒髪の男はめんどくさそうに左耳についてるピアスをいじる。


 「かなり仕事サボってたからね」


 白髪の男は腕を振り上げると上に大剣が浮かび上がる。男に似合うような美しい剣だ。


 ――大剣は枝分かれし複数の小さい剣が並ぶ。


 「流雨がさ、君のこと凄い気にかけててね。その男のせいで君が悲しんでるとか言って」


 男とは春くんのことだろうか。私が調べた限りでは春くんの周りに流雨という名前の女は居なかったはず。


 「毎日毎日、芽衣奈ちゃんがねって馬鹿みたいに話すんだわ」


 黒髪の男は耳に付いてるピアスを取ると上に高く投げると投げたピアスは形を変え漆黒の大鎌(おおがま)に変わった。


 「「流雨がさ、俺ら(僕ら)以外の奴に構う必要ってなくない?」」


 白髪の男が腕を振り下げたと同時に複数の剣が襲ってくる。

 

 『(からす)!!』


 呼び掛けると同時に鴉の大群が来る。鳥を操るのは初めてだったけど格下だから命令を効いてくれたか。


 「カァ!ガァ!カァ!」


 鴉が剣の犠牲になってくれたおかげでなんとか、かわすことができた。今のうちに…


 「め、芽衣奈ちゃん!」


 「春くん、巻き込んでごめん。狙われてるのは私だから逃げて、もう今しか逃げる隙が…」


 「おいおい。俺は大鎌だからその場凌ぎで逃げられねぇよ」


 「クソッ!」


 いつの間に眼前まで来た!?黒髪の男はニヤッと笑うと私ではなく春くんに向かって大鎌を振り上げた。


 

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