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《短編》ディル&兄(国王)



それはある日の昼下がり。国王()から「仕事が入っていないのならば昼食でも食べに来い」と、要約してしまえばそんな感じの伝言を受けたので別段断る理由も無く。


「時にナスタチウムよ」


「?」


「もう、手は出したのか?」


「?!」


ングッ……!


だからと言ってこれは無い。本当に無い。いくら自分(相手)が血の繋がった弟だとは言え、国のトップとしてその発言は如何なんだと思わずには居られない。2人きりという状況も相まりディルはそれはもう盛大にコーヒーを噴き出した。そして咽せた。


「っな……ちょ、なん………!」


昼食を済ませ、食後の紅茶を用意させた後わざわざ人払いをしたと思ったらこれ(・・)だ。


ーーこんのクソ兄………!


ゴホゴホと気管に入ったコーヒーを何とか胃へと送り出し、漸く息が調った所で実兄である国王を睨み付ける。


「ん?聞こえなかったのか。もう手は出……」


「言わなくていい!聞こえてる!!!」


余りにも大きな羞恥によって真っ赤な顔をしたディル(ナスタチウム)は真顔でギギギ…と首を動かしこの馬鹿兄を留めてくれる心強い兄専属の執事の姿を探したが


ーー人払いっ……!!


ニコニコ、否、ニヤニヤとこちらを見つめ続ける現在唯一の肉親を止めてくれる者は居なかった。ポタポタと口元から滴るコーヒーをハンカチで拭いつつ何故か痛み出した気がする胃を見やる。そしてそんなディル(ナスタチウム)を観察していた国王は残念そうな表情を隠そうともせず眉を下げと肩を落とす。


「なんだつまらん。未だなのか」


ーーいや、ほっとけ


本当にこの一言に尽きる。そしてその後は何故か当然のように入室し、これまた当然の様に質問攻めに参加し出す兄の筆頭執事。部屋に入ってきた時に抱いた希望が儚く崩れ散った瞬間であった。


ーー早く帰りたい…………


死んだ魚の様に虚無を曝けるディルの目に光は暫く戻らなかった。



✳︎✳︎✳︎



時は遡りモロノートン内部調査中間報告の為現地に部下を残しディル(ナスタチウム)のみ本国に帰国、国王へ内密な報告している時の事。



「……成る程。其方らの働きは理解した。引き続き調査を続けよ」


「はっ」


「呉々も用心せよ。いくら脆弱な人族とて多勢に無勢では何が起こるか分からぬ」


「承知致しました。御心遣い感謝致します」


「うむ。して、此処からは個人的な話になるのだがな」


ディルは嫌な予感がした。


「お前、あのモロノートンで好いた相手が出来たのだろう?連れてくるのか?」


ディルの顳顬にたらりと嫌な汗が一筋流れた。何故それ(・・)を知っているのか。


「………誰から……お聞きになられましたか?」


国王はふむ、と勿体ぶるかの様に顎に掌を当て斜め上に視界を移動させると口を開く。


「流石の公爵(お前)でもその様に重要な事は話せぬな。話の流れからしても、情報を流した者がただでは済むまい?」


ニンマリと、まるでこの戯れが楽しくて楽しくて仕方がないとでも言う様に、否、実際楽しいのだろうがクッと口角を上げる国王に一つ溜息をついたディルはスッと様相を変化させにっっっこりと微笑んだ。


「分かった。誰に聞いたんだ兄貴」


「ネトル」


「あんのハイエナァァァァ!」


次回ハイエナことネトル、終了のお知らせの瞬間である。

叫ぶ可愛いディル()をニヤニヤと見つめつつ王が思い浮かべるのは彼らが彼の国へと旅立つ直前の事。


『………すみません俺も命が惜しいのでディル様のプライベートな報告は……え?!あの絶版の書籍を頂けるんですか?!いやーそうですよね。大切な弟君ですもんね分かりました任せてください。何かあれば詳細を漏らす事なくお伝えする事をお約束します。なので書籍の件は宜しくお願い致します。』


弟の部下であり、腹心であり、そして幼い頃からの友でもある目の前の男は自らの欲の為に清々しい程の笑顔で弟を売った。強かだなと笑うと『幼馴染唯一の平民上がりですからね。強くなければやってられませんよ』と王としてでは無くディルと同じく1人の友に対しての言葉を返す男にいや、お前のそれは確実に生まれ持った物だろうと心の中で思ったものだ。


「ああ、ちなみにバジルからも1人女性を連れて帰りたいという申請が来ていた。そしてその特徴がどうもお前の狙っている女性と似通っていてな」


王の言葉に騒いでいたディルの動きがピタリと止まる。


「は?こちらには通っておりませんが?」


「お前を飛ばして申請された様だな」


あのクソ女………!


思い浮かぶのは此方を見下すように見遣りながら指差し高笑いをする虎女(バジル)


「まあ、今回のあの国の調査に関しては一応お前が主導という形にはしておるが実際個別での行動も報告も許可しておるからな。そう目くじらを立てるな」


「違う、そうじゃない………」


「ははは」


きっと全て分かっている上で話している我が兄上は本当に人が悪いと思うが、まあ『王』という肩書きのせいで容易に国から出る事も叶わないのでこういった身内を揶揄って遊ぶのを楽しみにしているのも分かる。ので。


ーーとりあえずネトルとバジルは一発ずつ殴ろう




次回、怪獣大戦争改めディルVSバジル大戦争勃発のお知らせである。


あけましておめでとうございます。そしてお久しぶりです。更新が遅くなり申し訳ありません。たまーに編集ページを開いては筆が進まずズルズルと気づけば新年……!こんな作者ですが今年もよろしくお願い致します。見に来て下さった全ての方に感謝を!!

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