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ひなた  作者: zaku
4/25

 「寒っ…」

 冷たい風が頬を撫でた。

 思わず毛布に包まる。

 いつの間にか部屋の床で寝ていたようだ。

 日向は手探りでテーブルの上のエアコンのリモコンを掴む。

 冷房?

 日向は慌ててエアコンのスイッチを切った。

 どおりで寒い訳だ。

 昼間はだいぶ暖かくなってきたとはいえ、まだ4月だ。

 冷房を入れるには早すぎる。

 ケータイを開いて時計を見る。

 7時過ぎ。

 それにしては外は暗い。

 日向はケータイを閉じて起き上がった。

 日向はこの年代にしては珍しく、いわゆるガラケーを使っている。

 特にこだわりがあるわけではない。

 こだわりがないからこそ、電話とメールができればそれでいい、という感じなのかもしれない。

 日向はケータイをテーブルの上に置くと、大きく伸びをした。

 「頭痛ぇ…」

 完全に二日酔いだ。

 昨夜は、会社の同期、田中と秋吉と三人で遅くまで飲んだ。

 昨日は土曜日で、本来ならば休みのはずなのだが、新年度に入ってからの仕事が溜まっていたこともあって、休日返上で出勤しなければならなかった。

 それで、仕事終わりに軽く飲みに行こうということになったのだが、気がつけば日付が変わっていた。

 いつもの居酒屋、いつものバー、そして最後はいつものラーメン屋。

 毎回同じコースを辿るのだが、なぜか飽きることはない。

 せっかくの日曜日だ。もう少し寝るか。

 そう思ってベッドに目を移した瞬間、日向は自分の目を疑った。

 「なっ…」

 見知らぬ女性が寝ている。

 背中を向けているため顔は見えない。

 少しだけ茶色がかったクセのある髪の隙間から、細い肩が見える。

 赤いTシャツには見覚えのあるバックプリント。

 どういうことだ?

 落ち着け。

 日向は音を立てないように、そっと部屋を出た。

 1DKの狭いキッチンで小さく息を吐くと、静かに冷蔵庫の扉を開けた。

 ペットボトルの水を少し口に含んで、ゆっくりと飲んだ。

 昨夜のことを思い出してみる。

 ラーメン屋までは確実に記憶がある。

 それからタクシーに乗って…

 ダメだ。

 そこからの記憶がない。

 日向はもう一口水を飲むと、おそるおそる部屋に戻った。

 ベッドを見る。

 いない?

 部屋の中を見回す。

 やはり誰もいない。

 今のはいったい何だったんだ。

 夢でも見ていたのか。

 日向はカーテンを開けて、ぼんやりと窓の外を眺めた。

 いつの間にか雨が降っていた。


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