同じ夢
また保育園の給食の夢を見た。
隣で泣いているのは葵だ。
昨日と同じ夢。
ただ、一つ思い出したことがある。
葵の喋り方だ。
幼かったので特に何とも思わなかったのだが、葵のそれは、甘えたような舌足らずな感じだった。
考えれば考えるほどわからない。
ひなたは葵なのか。
そんなことを考えていると、呼び鈴が鳴った。
まだ朝の10時だ。
誰だ?
ドアを開けると、宅配便の配達員が立っていた。
伝票にサインをして荷物を受け取る。
米だ。
実家は農家ではないが、こうしてたまに母が米を送ってくれる。
日向は早速実家の母に電話をした。
「米、届いたよ」
「そう」
「うん」
いつもは大した会話もなく電話を切るのだが、今日は違った。
「お父さんがね…」
父さんがどうかしたのか?
日向はドキッとした。
「最近、チーズ食べるようになってね」
チーズ?
「何だか知らないけど、若い人にでも影響されたのかしらねぇ」
何だ、そんなことか。
日向は安心した。
「昔は『こんな石鹸みたいなもの食えるか』なんて言ってたのにね」
母が呆れたように言った。
「あんたはまだ乳製品苦手なの?」
「うん…」
「子供の頃から変わらないわね」
「まぁね…」
日向はハッとした。
母なら保育園の給食の話を覚えているかもしれない。
「保育園の給食は苦労したよ」
「そうねぇ」
「あのとき、隣で一緒に残されてたのって…」
日向がそこまで言うと、母は少し間をおいて言った。
「もう18年にもなるわね…」
やはり給食のとき、いつも隣にいたのは葵だったんだ。
「葵ちゃんのお母さん、あんたに会いたがってたわよ」
えっ?
日向は驚いた。
「今度帰ってきたら、顔を見せてあげなさい」
「うん。わかった…」
葵の母が会いたがっている…
日向は何だか胸が締めつけられるような思いがした。
「じゃあ、また」
日向は電話を切ると、テーブルにケータイを置いた。
日向は葵のことを思い出していた。
煙草に火をつけようとしたところで、ケータイが鳴った。
母だ。
「どうした?」
「ごめん、間違えて押しちゃったみたい」
電話の向こうで母は笑っている。
もう、何なんだよ。
「じゃあ、切るよ」
日向はそう言ってケータイを閉じた。
そういえば…
日向はもう一度ケータイを開いた。
着信履歴だ。
あのいたずらと思われる電話。
声や喋り方がひなたに似ているのは間違いない。
履歴を遡る。
確か、あの日は…
ない…?
その日の履歴が消えている。
消した覚えはない。
どういうことだ…




