表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひなた  作者: zaku
PR
13/25

大丈夫

 二人は近くのハンバーガーショップに入った。

 やはりこの時間は結構混んでいる。

 「俺が並ぶから、先に空いてる席を探しといてください」

 桜井ひなたの希望を聞くと、日向は注文カウンターの列に並んだ。

 日向は、4月に起こった二つの不可解な出来事を思い出していた。

 日向の部屋にいた赤いTシャツの女性、そしていたずらと思われる電話。

 赤いTシャツの女性は、夢か日向が寝ぼけていたと思うしかない。

 でも、あの電話は事実だ。

 それに、あの声は…


 「店内でお召し上がりですか?」

 店員の声にハッとする。

 「あ、はい…」

 「ご注文をどうぞ」

 「えっと…」

 二人分のお金を払うと、トレイにハンバーガーとポテトを二つずつ、コーラとオレンジジュースを乗せて桜井ひなたを探す。

 どこだ?

 日向は立ち止って店内を見渡す。

 いた。

 赤いTシャツが手を振っている。

 ゆっくり歩いてそこまで行くと、そっとトレイをテーブルに置いた。

 「えっと…」

 桜井ひなたがバッグから財布を取り出す。

 「ここは大丈夫ですよ」

 日向は手で制するように言った。

 「あ、でも…」

 「大丈夫」

 日向は二度頷いた。

 「それより、お腹空いたでしょ?」

 日向はハンバーガーを差し出した。

 「ありがとうございます」

 桜井ひなたは嬉しそうに笑った。


 「神崎さんは何にしたんですか?」

 「ハンバーガー」

 「一緒だ」

 昨日はまったく上手く喋れなかったのに、今日は不思議と自然に会話ができる。

 昨日は意識しすぎていたのか。

 それとも桜井ひなたが喋りやすい雰囲気を作ってくれているのか。

 「そのTシャツって…」

 「あ、これですか?」

 桜井ひなたは、Tシャツの両肩の部分をつまんで少し持ち上げて見せた。

 「これ、今年の春にライブがあったんですけど、行けなくて。でも、どうしてもTシャツが欲しくてネットで買っちゃいました」

 そうだったのか。

 「それ、俺も同じの持ってますよ」

 「え?ライブ行ったんですか?」

 「えぇ、まぁ…」

 「えー?いいなぁ」

 桜井ひなたは少し頬を膨らませると、「お揃いですね」と笑顔を見せた。


 店を出ると、桜井ひなたは駅前の商店街の中を駅とは反対の方向へ歩きだした。

 ところで、行きたいところとはどこなんだろう。

 日向は桜井ひなたの後ろ姿を見ながら何度か聞こうと思ったが、なんだか悪いような気がして、なかなか聞けずにいた。

 商店街を抜けると、桜井ひなたは立ち止まって振り返った。

 「行きたかったのはここです」

 それは、駅の近くにある公園だった。

 中央付近に小さな噴水があって、ベンチがいくつかある程度の、丸い形をした小さな公園だ。

 ちょっとした休憩や、のんびりと時間を過ごすにはちょうどいい。

 冬になるとイルミネーションが綺麗なところだが、今の季節は、特に見どころはないように思えた。

 公園の入り口近くまで歩いたところで、再び立ち止まる。

 どうした?

 日向が近づくと、桜井ひなたは前方を指さした。

 「あれ…」

 指の先には…

 カラス?

 餌になるようなものでもあるのだろうか。

 地面をつついている。

 「こわい…」

 桜井ひなたは、日向の背中に隠れるように言った。

 日向はカラスに少し近づくと、足で地面を鳴らした。

 バサバサと音を立ててカラスは飛び立った。

 「もう大丈夫ですよ」

 桜井ひなたは駆け寄ってきて、日向の腕にしがみついた。

 日向は驚いて桜井ひなたを見た。

 「あ、ごめんなさい…」

 桜井ひなたは、慌てて手を離した。

 そして、恥ずかしそうに下を向いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ