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ひなた  作者: zaku
11/25

人見知り

 どうしよう。

 こんなとき、どんな話をしたらいいのかわからない。

 おまけに日向が店に着いたときには、他のみんなは多少アルコールも入っていたため、結果的に日向一人が大幅に出遅れた形となっていた。

 普段からコミュ力が高く、誰とでもすぐに打ち解けられる田中と秋吉が羨ましい。

 ビールを一口飲む。

 間が持てない。

 チラッと隣に目をやった。

 淡いブルーのワンピースを着た桜井ひなたは、みんなと楽しそうに喋っている。

 日向はなんだか一人ぼっちになったような気がした。

 料理が運ばれてきた。

 チーズがたっぷりかかった鉄板焼きだ。

 「食べますか?」

 隣から声がした。

 「すいません。チーズ、苦手なんで…」

 「えー?一緒だ」

 一緒?

 「ひなたもチーズ苦手なんです」

 「そうなんですか?」

 意外だ。

 日向は、今どきの女の子は大抵チーズ好きなんだと思っていた。

 「チーズというか、子供の頃から乳製品が苦手で…牛乳とかヨーグルトとか…」

 「あ、俺もです。給食のときとか、いつも最後まで残されて…」

 「そうそう。懐かしいなぁ」

 桜井ひなたはそう言うと、「よし。あっちにあげよう」と鉄板焼きを向かいの席の方に追いやった。

 「ビールでいいですか?」

 桜井ひなたがビール瓶を構える。

 「あ、すいません…」

 空になっていた日向のグラスにビールが注がれた。

 「えっと…」

 何か話さなきゃ…

 「ねぇ、ひなた」

 「何?」

 向かいの席の声にタイミングが奪われた。

 日向はビールを一気に飲んだ。


 そういえば、日向と桜井ひなたは同じ地元だったはずだ。

 何か共通の話題でもあれば…

 高校は違ったが、中学はどこだろう。

 部活は何かやっていたのだろうか。

 しかし、あれこれ質問するのも変に思われるかもしれない。

 何を話せば…

 そんなことを考えていると、誰かがポンと日向の肩を叩いた。

 見ると、今田が席を移ってきていた。

 「飲んでるか?」

 「はい」

 「何か元気ないように見えたけど、大丈夫か?」

 「あ、大丈夫です」

 「そっか。お前、人見知りだからな」

 どうやら今田にはお見通しだったようだ。

 いつの間にか、桜井ひなたは今田の奥さんの隣の席に移動していた。

 日向の心はホッとした気持ちと、ちょっと残念な思いが複雑に入り混じっていた。


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