表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひなた  作者: zaku
10/25

再開

 桜井ひなた―

 今田の奥さんの同級生。

 先週の土曜日、今田の結婚パーティーに来ていた。

 なぜ一瞬、葵と思ったんだろう。

 日向は喫煙コーナーから見える空巣山をぼんやりと眺めていた。

 喫煙コーナーのドアが開いた。

 日向はビクッとして振り返る。

 「今田さん…」

 「何だ?そんなに驚かなくてもいいだろ」

 「あ、いえ…」

 日向はなぜか慌てて煙草の火を消した。

 「お前、今度の土曜日ヒマか?」

 「あ、大丈夫ですけど…」

 「そっか。よかった」

 「何かあるんですか?」

 「お前らに、ちゃんと嫁さん紹介しようと思ってな。あいつらにも声はかけた」

 確かに今田の奥さんのことは何も知らないが、そうやって紹介してくれるという今田の気持ちが、日向は嬉しく思った。

 「はい。ぜひ」

 「じゃあ、6時に浜太郎な」

 今田は煙草の火を消すと、右手を軽く上げて喫煙コーナーを出て行った。


 土曜日、午後6時。

 日向はバスの中にいた。

 ヤバい、遅刻だ。

 こんな日に限って渋滞に巻き込まれた。

 もう一本早いバスに乗ればよかった。

 事故でもあったのだろうか。

 バスは一向に進まない。

 このままバスに乗っていては、何時になるかわからない。

 日向は一つ前のバス停で降りた。

 人込みを縫うように駅前の通りを走る。

 こんなに走ったのは久しぶりだ。

 額に汗がにじむ。

 ようやく浜太郎の前に着く。

 肩で息をしながら、額の汗をシャツの袖で拭った。

 深呼吸をして息を整える。

 ドアを開けて店に入ると、奥の座敷に案内された。

 「すいません、遅くなりました…」

 みんなの視線が日向に集まる。

 えっ…?

 今田夫婦と田中、秋吉の他に女性が三人。

 あのときの三人だ。

 「おう、お疲れ。いいから早く座れ」

 今田が手招きした。

 「すいません…」

 えっと、席は…

 桜井ひなたの左隣だ。

 マジか…

 日向は人見知りだ。

 しかも女性の隣では煙草も吸いにくい。

 やっぱりもっと早く来ればよかった。

 日向は心から後悔した。


 「どうぞ」

 桜井ひなたがビール瓶を両手に持った。

 「あ、すいません…」

 慌ててグラスを持つ。

 瓶とグラスが小さな音を立てた。

 ビールがグラスにゆっくりと流れていく。

 「どうも…」

 「えっと…」

 「あ、神崎といいます」

 「日向さん…」

 えっ?

 「桜井ひなたです」

 そう言って、桜井ひなたは人懐っこい笑顔を見せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ