人のぬくもり、チケットについて
読んでいただきありがとうございます。やる気いただいております。
全身に走る痛み、これは俗にいう『筋肉痛』というやつだ。潜在能力のオーバーワークに起きる筋肉の痙攣。
それが俺だけじゃなく、ベータに起きていた。ベータはわかる。今までその速度や、力で動いたことはないのだから。
だが、俺はベータに潜在能力を貸した? だけなのにこの状態は少し納得は出来なった。
日が落ち、倒れたままの俺たちを看病してくれるマム。声だけはかろうじて出せるのが幸いで、
そのお陰で今は苦痛ともいえるマッサージをマムはベータと俺を交互にしてくれた。俺の知らない暖かさだ。
家族が単身赴任でいない家庭過ごしてきたから人のぬくもりを知らない。もしこれが本来、人が味わうであろう愛情だとするのなら、少し照れくさく、こっぱずかしい。
「なあ、外神」
ベータは俺がいる距離を認識できていないのだろう声の大きさで俺を呼んだ。ん> おい! ベータ呼びすてかよ!
「なんだ?」
「俺たちすげえな!」
「俺たち? 違うよ。ベータがすごいんだ。俺は少し手を貸しただけ」
「なら俺だけの手柄じゃねえじゃん」
これが友達とか、親友というやつなのか? なんだか嬉しいぞ。でも年上として敬ってほしい部分はあるのだが。
「.....明日、一番のゴブリン倒せるかな?」
「どうだろうな? この筋肉痛次第じゃねえか」
「俺、動けなくなるまで筋肉痛になったことないのに」
「俺もだ」
まぁ、俺の場合は運動をすることがなく、筋肉を使ってこなかったからそうならなかっただけなのだが。
月が真上に上がる頃、マムのマッサージの甲斐もあり、ロボットくらいに動きは出来るようになると、ずっと他人事のように木に凭れかかっているリリに近づく。
「おい、そろそろ人形のフリはいいんじゃねえか?」
「君、大活躍だったね」
「見てたのなら、アドバイスでもしろよ」
「しゃべってもいいよ。僕を守れるなら」
リリ、痛いところを突くな。そう、今回だって1対1でも勝てた保証がない。しゃべる動物なんていたら、そりゃあ誰もが欲しがる。こいつ自分の危機管理能力に長けてやがるな。
「で、どうだった。もう一つのチケット」
俺はポケットから友情チケットを取り出す。
「どうって、変な奴からもらった時は怪しいと思ったけど、まあこれがなければ俺たちは大怪我していたわけだし」
「まあ、あの人はそれを持っていても使えないんだから当然だよね」
「意味はないってどういうことだよ!」
「チャンプの一回チケットは人工的に作られたものだから、また別として、君の持っている二枚のチケットは君にしか使うことが許されなくなってしまったんだよ」
「いつ? そんなタイミングあったか?」
「ガラガラで君が白玉を引いてしまったからね」
あれか! ってかあのガラガラにそこまでの効力があるとは思えないのだが。
「まあ俺にしか使えないのは分かるが回数制限が、後無理な使い方をした時の対処法とか教えてもらえると嬉しいんだが」
「あれ? 君ゴブリン狩りにやけに前向きになんだね」
リリのニヤリと疑ってみる表情に俺はイラッとした。そりゃあマムにあれだけ優しくされたり、ベータに期待されれば嫌でも感情移入してしまう。こいつはこういう感情がないのかと疑って見てしまった。
「なくはないよ。回数を上げる方法は」
「あるのか! なら教えて......」
「簡単に言えば、そのチケットでは無理ということかな?」
このチケットでは無理? まだチケットが存在するのか? じゃあ何枚存在するんだ?
リリは口の中からチケット入れを取り出し、俺に渡してきた。確かに普段はリュックだからなんとも思わないが、動物のままだと考えるものがある。
「とにかく、今は持っているチケットを大事にすること。そして少しでも動ける身体になること。僕からのアドバイスは以上」
と言うとリリは眠りについた。さっきまで寝てなかったか? こいつ? まあこのチケット達が俺の生命線のことは間違いはない。今はこれをどう活用すればうまくことが進むのか? それを考えなが俺は明日のゴブリン狩りに向けて英気を養うことにした。




