Chapter7 アルナイル
「チャージブラスト!」
ふと後ろから聞こえる詠唱の声。声の高さは高く、可愛らしい声だ。ユウは後ろを振り向く。それと同時に黄色い閃光がユウのすぐとなりを通りすぎた。激しい轟音と共に爆発が広がる。
「な、何だ!?」
「何!?何が……起きたの?」
「わ、私はなにもしてないですよ」
「今は敵に集中だ!」
「「わ、わかった!」」
辺りを見回す。しかし、敵の姿は見えない。まさか、さっきので!とユウは感じた。もしかしたらと後ろを振り向く。そこには神社の巫女のような容姿のユウとどう年齢っぽい少女がいた。
「あなたが助けてくれたんですか?」
「ええ。私が助けました」
「あなたは?」
「私はミー。ジョブは魔道士の最上位職の内の1つ、巫女です」
「え、もう最上位職までいったんですか!?」
「ま、まあね」
ミーと名乗る少女は少し照れながらもそう答えた。
「そう言えばユウ、ここは双魚宮じゃないってどう言うこと?」
「さっき言ったろ?ここは双魚宮の中にあるトラップだと思われる」
「これは本当だよ」
ミーが答える。
「ここは双魚宮の内部に入った者の中で確率で発生するイベントだよ。ほんとにごく少数のはずなんだけど……」
「フラグだね」
「フラグですね」
「え、フラグってなんですか?」
「ここにいるリンってやつがフラグをたてまくってるんだよ。」
「どおりで。これはフラグですね」
「だから立てるなって言ったろ?」
「フラグじゃないわよ!」
「じゃあ1回一人で行ってみろよ」
「良いわよ!私の力でこんなの楽勝よー!」
「フラグ立てたな」
「じゃあ行ってくるわよ!」
数分後……。
「うぎゃあああ!た、た、助けてぇ!」
中から声が聞こえる。明らかにリンの声だ。
「私が行きます」
「ミーさん、お願いします!」
ゴゴゴと音を立てて門を開け、なかに入っていった。その数秒後、激しい轟音と共に中から二人が出てくる。
「これで懲りたろ?」
「はい、すみませんでしたすみませんでした。これはアタシのせいです。フラグを立てすぎたアタシのせいです。ほんとにすいません」
超高速で謝罪の声が聞こえる。どうやら本当に反省しているようだ。
「ミーさん、ありがとうございました。もしよろしければ双魚宮を一緒に攻略しませんか?」
「ええ。私もちょうど攻略をしに行こうと考えていたので。」
「じゃあお願いします。リン!フラグ立てんじゃねえぞ!」
「わかってる」
ボソッとそう言う。
「じゃあ中に入るぞ」
「「「はい!」」」
前と同じように轟音を立てて門が開く。そして、今度こそちゃんとした部屋が現れる。そこにモンスターがPOPし、ユウ達を襲わんとばかりに、こちらに向かってきた。
「一気に行くぞ!」
それぞれが、魔法攻撃などを発動させ、次々とモンスターを倒していく。そのうちにジョブレベルも上がり、ユウは剣士から騎士へとジョブチェンジが可能になり、ジョブチェンジをすることにした。そして、ついに奥地へとたどり着いた。
大きなドアを開く。双魚宮の門と同じように轟音を立てて開き、中へと入る。中には大きな体が1つ見えるが、暗くてよくわからない。大きな棍棒みたいなものを持っているようにも見えるが、武器種すら判別ができない。
「我が眠りを覚ますのは貴様らか」
すると、メニューが現れる。そこには、ピスケスと表記され、本当に挑戦しますか?と書かれている。パーティーのため、リーダーである自分だけにそのメニューが出ている。手になにかを握っている感触が現れる。
「WARPACを前にかざしてください。」と出ている。試しに前にかざすと……。
「貴様らが我の挑戦者か。ならば裁きのときだ!」
とピスケスは叫ぶ。どうやらこれはイベントのようだ。
「よし、行くぞ!」
「我が炎の魔法を受けよ!」
「こんなの効くわけないさ。我が属性は水。炎など得意分野だ!」
炎は瞬く間に消える。
「ならば!ブースト、ライトニング!」
ユウは剣に「ブースト」という武器に属性を付与し強化するアビリティを使った。ライトニングというのは雷を纏うという意味だ。
ユウは雷を纏った剣でピスケスを斬る。
「ウググ。しかしまだまだ!」
「それも効かないのかよ!」
「ミーさん。さっきので倒せますか?」
「時間があれば問題ないわ!」
「リン、レイ!時間を稼ぐぞ!」
「「おう!」」
「みんな、一気に狙って!」
「あ、待って!」
「ん、どうした、リン」
「ドナイヤネン村の人が言ってたこと覚えてないの?」
ユウはすっかり忘れていた。ピスケスには召喚する使い魔がいることを。
「ミーさん、ピスケスは使い魔を召喚してきます。それをどうにかしないことには……」
「わかった。先に使い魔を倒しましょう」
そのとき、ピスケスがなにかを言い始めた。
「我が僕よ挑戦者に裁きの攻撃を与えよ!」
うお座……つまり、召喚してくるのは魚であろう。魔方陣が無数に現れ、シャチだろうか、海のギャングと言わんばかりのような姿が擬人化しているようなものが現れてきた。
「我が主を倒そうとするものは私が許さぬ。このサーティアス、参る!」
使い魔を倒さないことには近づくこともできない……。