Chapter5 関西弁の村へ
「ここが……双魚宮」
壮大な神殿がそこには広がっていた。
「まさか、乗り込む気じゃないでしょうね」
「まさか、そんなことはないさ。一回戻ってギルドに報告及び支度後また行くぞ」
「それでも問題だわ!いきなり準ボスなのよ。勝てるとでも思ってるわけ!?」
「そりゃね。勝てるさ。あんたら強いしな」
「どの口が言ってるのよ!ったく、いいわよ。まずは戻りましょ」
「そうですね。戻ってからまた出直しということで」
ユウ達は町に戻ることにしようとした。しかし、相当時間がかかると思われる。
「しっかし、近くに別の町はないのかね」
「あるでぇ、この先に」
突如関西弁口調の男性が現れた。
「あるのか?」
「ワイが嘘つくわけあらへんで。もちろんや。案内したろか?」
「どうする?リン、レイ」
「アタシはいいわよ。早く町にいきたいし」
「私も賛成です。リンさんと同じ理由で」
「じゃあお願いします」
「ほなついてきてな」
双魚宮があるところをさらに上る道を行くことになる。その道は険しくもしっかり道になっている。
「あんたらはここに来るのは始めてかいな?」
「はい。さっき双魚宮を見つけたばかりなので」
「なるほどな。あんたらはアレ狙っとるんかいな?」
「アレってまさか、準ボスを倒したあとに貰える証ですか?」
「せやで。おっと、自己紹介がまだやったな。ワイの名前は……なんやったっけ」
「「「え!?名前を知らないんですか?」」」
3人は確信した。もしかして、イベント専用NPCなのではと。しかし、このゲームはWPMMOだ。つまり、NPCなどいないのだ。この世界にいるキャラクターは全員ファンタジー系のアニメとかに登場する「異世界の住人」というやつだ。
「ついたで。ようこそ、ワイらの村『ドナイヤネン』へ」
「ドナイヤネン」へと着いたユウ達はギルドの場所を聞こうとする。
「あの、ギルドってどこにありますか?」
「ギルドやな。ギルドだったらこの先やで。ほなきいつけてな」
「ありがとう」
ユウ達はギルドへと向かう。
この村のギルドに着くも、ユウ達は愕然とするしかない。
「どう見てもここって大阪……だよね?」
「そうだね。あの看板あるし」
「ドナイヤネン村のギルドへようこそ!自分らここに来るのは始めてかいな?」
ここも関西弁で話している。どうやらこの村の方言が日本の関西弁に酷似しているらしい。
「はい。別の町で受けたクエストの報告と、双魚宮について聞きたいんです」
「わかりました。では、まず報告をお願いしますね」
ユウ達は川の調査の報告と、天帝との勝負をしたこと、双魚宮を見つけたことを報告した。
「こちらが報酬です。では、次に双魚宮について説明しますね」
いきなり関西弁を話すのをやめ、真剣な口調で話始めた。
「『双魚宮』、それはこの世界に12ある黄道神殿の第1宮です。そこにはピスケス様がおられます」
「そのピスケス様を倒すと証が貰えるということですか?」
「その通りですが、ピスケス様はとてつもなく強いです。また、ピスケス様が召喚される使い魔も協力ですよ」
「使い魔といいますと?」
「それは私達でもわからないのです。ピスケス様がいらしたことはあるのですが、召喚は滅多にお目にかかることが、できないので」
「なるほど、やっぱり一筋縄ではいかないか。そうだ、武器を新調したいのですが……」
「この先に鍛冶屋がありますよ」
「ありがとうございます」
あの町と同じであれば鍛冶屋はとてつもないだろう。そう思いつつ鍛冶屋へと向かった。
「鍛冶屋ナンデヤネン」とかかれた看板を見る。
「ほんとに大丈夫なのか……これ」
「大丈夫でしょ!」
「ちょっと怖いですけども入ってみるしかないですね」
恐る恐る鍛冶屋の中へと入る。
「らっしゃい!自分ら何を探してるんや?」
「やっぱり関西弁だな」
「関西弁?なんやそれは。この言葉はナンジャって言うんや」
「ナンジャですか。あ、えっとこの素材で一番良い武器を作ってください」
と、差し出したのは川の調査でドロップした蛙型のモンスターの皮である。
「ほなちょいと待ちい」
鍛冶屋は奥の部屋へと入り、鉄を打つ音が聞こえてくる。
「リン、レイ、ピスケスを倒す方法だけど、使い魔がいるから正面突破は難しそうだ。どうすれば良いと思う?」
「あたしの魔法で使い魔を一掃させてもらうわ!」
「私が途中でテイムしたこの子と槍で相手の攻撃は防げます」
新たにテイムしたらしくそこには炎をまとった鳥がいた。
「なるほど、じゃあ、リンは使い魔をお願い。レイは俺と一緒にヒットアンドアウェイで戦ってくれるか?」
「はい、もちろんです!」
「アタシもいいわよ。せいぜい足を引っ張らないことね」
「正直じゃないなあリンは」
「できたでえ。剣と槍とロッドや。大事に使いよ。お代は2000ツィーや」
「ありがとう!」
ユウは2000ツィーを支払い、双魚宮へと向かうことにした。
「ほな元気でな」