Chapter10 パギダ
「このボタンって……」
「ミーさん、なにか知ってるんだすか?」
「これがピスケスの攻略法じゃないのかな……」
「だけど、罠かもしれない」
ユウは慎重にと促すようにそう言う。
「あーもう!押した方が早いわよ!」
リンがそう言う。
「ちょっ!リン!やめてくれ!」
だが時すでに遅し……リンはそのボタンを押してしまった。「カチッ!」という音と共に、轟音が鳴り響く。ユウ達は反射的にピスケスの方を向いていた。そこに広がる景色は誰もが想像しなかったものだった。
そこにはロープによって拘束されているピスケスがいた。四方八方から飛び交った鎖つきのロープが地面に食い込み、身動きがとれないようになっていたのだ。
「なんでこんなところにボスが不利になるようなものがあるんだ……」
ユウは今までやってきたゲームにもないような仕様に驚きを隠せない。
「まあいいじゃない!今のうちに畳み掛けましょ!」
「それもそうだな。みんなやれるか?」
「ええ」
「もちろんです」
「私の魔法でどうにかしますわ!」
「頼んだぞ!」
「一撃で倒してきますわ!」
※フラグです。
「炎魔法が効かないのはわかっていますわ!この雷属性攻撃でもくらいなさい!」
「不意打ちするつもりか!だがこの鎖を出したのは間違いだったようだな!」
「なっ!?どうゆう意味だ!」
「この鎖、避雷針になるのだよ!」
「ま……まさか!?」
「ユウさん、そのまさかです」
ミーが答える。説明を続ける。
「この鎖によって副属性で雷属性を付与し、さらに雷属性攻撃を無効化するスキルまで使えるようになったみたいだ」
「ならさっきのサーティアスと同じやり方でいけばいいんだな?」
「恐らくは……」
「ですが、あの鎖さえなければその効果は消える!」
レイもそういい、鎖を外すことを考えている。
「リン、下がれ!」
ユウはなにかに気づき、リンに命令をする。
「え?」
「早くしろ!思いっきり後ろに下がれ!それが無理なら伏せろ!」
「わ、わかった!」
そう答えるのと同時に鎖がリンを襲う。
「うぐっ!なんなのよ……あれ!動きを止めるだけじゃないの?」
「そのはずだが……こんな使い方があったなんて……」
「ユウ、どうにかしないと……」
「ミーさん、何か策はないんですか?」
「ない……です」
さすがのミーにも打開策はないらしく、このまま「死に戻り」をするしかないとこの場の全員が思った。
「死に戻りなんてしたくない!」
レイが心の叫びを放つ。
「誰が死に戻りなんぞさせるものか!」
「ユウ!」
リンも今回だけは無理だと言わんばかりにユウの名前を叫ぶ。
「無理よ!絶対!こんなの罠に決まってたわよ!」
「ならなぜ押した!」
「気に……なったから」
「気になった……。あっ!」
「ユウ、何か思い付いたのか?」
「リン!ここら辺をうろうろして気になるものがあったら触れてみてくれ!」
「……は?」
「リンの勘だったらピスケスの動きを封じるボタンを見つけられるはずだ!」
「なんか納得いかないけどまあいいわ!やってやる!」
「その意気だ、リン!」
「任せて!」
「レイ!その間バクと一緒に相手をしていてくれ!」
「わ、わかりました!」
「ミーさん、カウントと同時にチャージブラストをピスケスの足元を狙って撃ってください!」
「わかった!」
「俺もやれる限りのことはやる!」
4人がそれぞれの動きをし始める。
「バク、鎖を噛んでください!」
「ガウゥ!」
バクの身体能力は計り知れない。そして、仲間のなかで唯一この世界の住人だ。動きも俊敏で動体視力も良さそうだ。そして、今回も鎖をピンポイントで噛んだ。
「ナイスです、バク!」
「レイ!鎖を1回噛むのをやめさせてくれ!」
「わかりました!バク!」
そして、主人の言うこともちゃんと聞いている。バクはちゃんと鎖を離した。
「ミーさん!闇属性をブーストしてください!」
「わかりました!ブースト、闇属性!」
「3・2・1・発射!」
「チャージブラスト!」
チャージブラストの軌道は真っ直ぐピスケスの左足へと向かっている。しかし、ピスケスはそれに気づいたかのように鎖をチャージブラストの弾道へと放り投げる。それと同時に激しい閃光が視界を覆う。
「やった……の?」
リンが喜びかけようとしている。
数秒後、閃光が消え、視界が回復する。そこには衝突時のまま形を残したピスケスがいた。手には先ほど放り投げた鎖がある。
「そんな……ダメだったの?」
ミーがユウに聞く。
「いや、これが正解だ」
「ど、どうゆうことですか?」
「鎖を見てみな?」
リンを除く3人がピスケスが持っている鎖を凝視する。
「我が鎖の力に破れたようだな」
その言葉と同時に鎖にある現象が発生した。
「そ、そんなバカな……」
「これが俺が狙ったことだ!」
鎖はチャージブラストによってボロボロと崩れ、1本の鎖が崩壊した。
「これが狙いだったの?」
「そうだ。鎖をあのようにやれば武器破壊と同じ現象が起こる。そう仮定したんだ。」
「す、すごい。……けど」
ミーは残りの鎖を見る。
「まだ見た限りだと4、5本くらいあるよ。」
そう声を発したとき、遠くからリンの声が聞こえた。
「あった!!」